資材の調達から商品が顧客へ届くまでを一貫して自社で行うニトリホールディングス(以下、「ニトリ」と記載)。この記事では、すべてを自社で行うニトリだからこそできるSDGsへの取り組みをご紹介します。
35期連続で増収増益(2022年度)のニトリ。好調の秘訣が、SDGsの取り組みにも現れています。ニトリホールディングスへの理解を深めたい、SDGsの取り組みを参考にしたいという人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
2022年まで35期連続で増収増益を果たすニトリとは?
ニトリの増収増益の秘訣は、低価格・高品質の商品やサービスの提供にあると言えます。それを支えているのが、ニトリの一気通貫のビジネスモデルです。資材調達から製品が顧客の手元に届くまでのすべてを自社で行うニトリだからこそできる、輸送の効率化やコスト削減が顧客に喜ばれる商品やサービスを生み出しています。
そこで、ここではニトリの特徴的な事柄を3点にまとめてご紹介します。ニトリがどのようなことを行っているのか、ぜひチェックしてみてください。
「お、ねだん以上。ニトリ」を実現するニトリのビジネスモデル
「お、ねだん以上。ニトリ」。この言葉を聞き覚えのあるという人は多いのではないでしょうか。実は、このCMもニトリが自社で撮影を行っています。
ニトリは、自社のビジネスを『製造物流IT小売業』と位置付け
- 原材料調達
- 製造
- 品質管理
- 貿易
- 物流
- eコマース(通販)
- 店舗販売
- システム開発
- 商品企画
- 商品開発/コーディネート
など、商品供給のすべてのフェーズをニトリグループで完結させています。このビジネスモデルの大きなメリットは、他社や他のサービスを仲介する必要がないことです。
その結果、コスト削減につながり高品質なものをより安い価格で提供することが可能となります。またそれだけでなく、あらゆる面から顧客のニーズを汲み取ることができ、商品やサービスに反映することも可能にしています。
商品の90%以上を海外から調達
ニトリの低価格・高品質の秘密は、原材料の調達にもあります。ニトリでは、ニトリの基準に合った品質かつ低価格な原材料を求め、バイヤーが世界各地の市場の調査を行っています。実際に、海外の展示会に赴き素材をチェックしているとのこと。
そこで購入された原材料を輸入するのではなく、自社の海外製造拠点へ直送し製造まで行われます。それにより、商品の安定供給を実現するだけでなく、高品質の商品を安い価格で提供することにも繋がっています。
感謝を忘れないニトリの恩返し「似鳥国際奨学財団」
ニトリは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンを原点にしています。2005年3月に設立された似鳥国際奨学財団では、このロマンに貢献してくれたアジア諸国の人たちに対して奨学金支援という形で恩返しを実施。
この奨学金は、世界各国の友好親善と人材育成に寄与するとして返済不要となっています。これまでに、43の国と地域で7,040名の学生支援に貢献しました。自社の成長を喜ぶだけでなく、支えてくれた人たちへの恩返しを忘れない姿勢が、ニトリの業績好調の追い風を生み出す要因の一つとなっているのかもしれません。
店舗運営だじゃない
店舗運営のイメージが強いニトリですが、製造物流IT小売業というビジネスモデルを確率し社内には、以下のように多数の部門が存在しています。
- SDGs推進室
- 情報システム改革室
- 店舗開発部
- 品質業務改革室
- 営業企画室
- 広告宣伝部
- 購買コントロール室
- 貿易改革室
- 店舗運営部
- グローバル商品本部
- デコホーム事業部
- 通販事業部
- 法人&リフォーム事業部
などなど、上記も含め37部署100種類以上の仕事を自社で実施しています。製造物流IT小売業という一気通貫のビジネスモデルを展開するニトリでは、資材の調達から商品が顧客の手元へ届くまでのすべての工程が自社の事業領域です。
ニトリのSDGsへの取り組み
ここでは、ニトリのSDGsへの取り組みについてご紹介します。ニトリへの理解を深めたいという人は、ぜひ参考にしてください。
ペットボトルをリサイクルしてカーペット・ラグを製造
ニトリでは、回収したペットボトルをリサイクルし、カーペットやラグへ再製品化しています。同業他社である良品計画とは異なり、自社で出た廃棄物以外のゴミの削減に貢献しているサステナブルな取り組みです。
その本数は、年間で最大約1億本のペットボトルがリサイクルされています。カーペットに換算すると約375㎡(東京ドーム約80個分)の面積になるとのこと。
リサイクル素材を使用すると通常なら追加コストがかかり商品原価が高くなりがちですが、一気通貫のビジネスモデルによって追加コストがかからず、低価格・高品質を実現しています。
羽毛布団の回収・リサイクル
ニトリでは、家庭で不要になった羽毛布団を販売元にかかわらず無料で回収し、リサイクルを行い再製品化しています。この取り組みは、2021年11月1日〜11月28日の期間で首都圏15店舗で「羽毛布団リサイクルキャンペーン」として実施され、750枚(ダック約7.5万羽分相当)の回収に成功しました。
このようなリサイクル事業の結果、廃棄物排出量は2018年度から徐々に減少傾向にあり、2021年度には2018年度から20.7%の削減を実現しています。(以下の表参照)
年度 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
廃棄物排出量(t/億円) | 7.60 | 7.62 | 6.81 | 6.03 |
(参照元:統合報告書 – 2022年2月期 )
このような再資源化が進めば、人間に利用される動物の数の削減にもつながり、アニマルウェルフェアや動物のウェルネスへの貢献につながります。
リサイクル事業を行っている企業は多くありますが、ニトリの独自の強みは、資材の調達からお客様の手元に商品が届くまでの流れを一貫して担っているところにあります。
店舗運営・物流・製造部門を自社で運営しているからこそ、追加でコストがかかったり、環境負荷が増えるといったリスクを低減することが可能です。その結果、環境にやさしく低価格な商品を安定的に提供することができています。
スワップボディコンテナ導入により、CO2排出量削減
スワップボディコンテナの導入も、資源の調達からお客様へ商品をお届けするまでを自社で一貫して行うニトリだからこその取り組みです。
スワップボディコンテナは、車体とコンテナを分離できるコンテナのこと。荷台の脱着が可能になることで、中間拠点で別トラックと荷台交換を行うことが可能となり、ドライバーの輸送走行距離が大幅に短くなりました。
また、荷下ろし先ですでに積載済みのコンテナを受け取ることもできるようになり、空コンテナ状態での輸送が削減され輸送効率が大幅にアップしました。
ニトリでは、このような温室効果ガスの排出を抑える取り組みの結果、ニトリグループ全体におけるCO2の排出量は減少傾向にあり、2018年度と比較すると2021年は10.8%の削減に成功しています。
年度 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
CO2排出量 (t-CO2/億円) |
32.56 | 31.41 | 30.26 | 29.98 |
(参照元:統合報告書 – 2022年2月期 )
インテリア業界の動向とニトリのこれから
インテリア業界は、住宅業界の動向に大きく影響を受けます。新型コロナの流行によって住宅の新設着工数は2020年度に大きく落ち込みました。しかし、2021年度は新設住宅着工数が回復しインテリア業界の追い風となりました。(以下の表参照)
その結果、ニトリは2021年度に35期連続の増収増益を果たし、同時に競合他社である良品計画やIKEAなども業績を伸ばしています。
しかし一方で、大型家具・高級家具を取り扱う大塚家具は赤字へ転落しています。消費者のライフスタイルの変化により、大型家具への需要が減ったことが原因の一つとされています。
今後は、顧客自身が求める生活空間を実現するために、低価格・高品質な生活雑貨や小物商品のニーズが高まるとし、すでに各企業が動き始めています。
一気通貫のビジネスモデルを展開するニトリは、低価格・高品質な生活雑貨に強みがあり、今後の動向にマッチした取り組みを行っていると言っても過言ではありません。
まとめ
この記事では、ニトリの特徴やSDGsへの取り組みについてご紹介しました。ニトリについて知識を深めたい、SDGsの取り組みを参考にしたいという人にとって少しでもお役に立てれば幸いです。