
佐賀県多久市に本社を置く山口産業株式会社(代表取締役・山口篤樹)は、テント倉庫やスポーツ施設といった膜構造建築物の設計・製造・施工を一貫して行う国内有数の専門メーカーだ。
1972年の創業以来、炭鉱資材メーカーから脱皮し、膜という素材を通じて社会課題の解決に挑み続けてきた。
「できない」と言わない信念 膜の力で社会課題を解く
山口産業の強みは、設計から施工までの一貫体制と異業種の知見を融合した高い技術力にある。
テント倉庫や遊具、都市空間シェルターなど、膜構造物を用いた多様な空間づくりを手がけ、近年では大型陸上養殖施設など海洋分野にも進出している。
世界的なタンパク質不足に対応する持続可能な養殖用建屋の開発も進めており、「膜で未来を包む(WRAP THE FUTURE)」というビジョンのもと、建築と環境負荷低減の両立を目指している。
代表の山口篤樹は、「できないという言葉を言わない」という信念を掲げる人物だ。かつて無人搬送車(AGV)用伸縮テントの開発に挑戦した際、専門外の技術分野に踏み込み赤字を出した経験がある。
それでも諦めずにやり遂げたことが、今の挑戦的な社風を形づくった。「困難を前にしても、社員が自分で考え、行動する。その空気が会社を成長させて いる」と山口は語る。
DXとGXの両輪で進化 DXセレクション準グランプリも受賞
近年はデジタル化と脱炭素化の両面で企業変革を進めている。経済産業省の「DXセレクション2024」では準グランプリを受賞。
メタバース空間を活用した営業・設計支援を導入し、顧客が仮想空間上で製品の構造を体感できるようにした。営業効率の向上だけでなく、地方拠点からでも全国の顧客と高精度な商談が可能となった。
一方でGX(グリーントランスフォーメーション)では「膜でZEROを目指す」をスローガンに掲げる。
中小企業版SBT認証を取得し、2030年度までに温室効果ガス排出量を42%削減する目標を設定。膜屋根はアルミ屋根に比べてCO2排出量を66%削減できるという定量的データも示している。
さらに、テント膜の廃棄物をファッションアイテムなどに再生する「廃棄ZEROプロジェクト」も推進。産学連携や異業種との協業で、サーキュラーエコ ノミーへの貢献を強めている。
原点は佐賀、そして仲間と喜ぶ文化

創業の地・佐賀県多久市は、同社にとって原点そのものだ。本社工場は国土交通大臣のMグレード認定を受ける高品質拠点であり、地域の人材育成と技術伝承の中心となっている。
山口は「昔の1,000万円の受注でも、みんなで喜び、社員旅行に行った。規模が大きくなっても、あの時の『みんなでいかないと意味がない』という感覚を忘れたくない」と語る。
社長自身が会社に寝泊まりしながら全業務に関わった時代もあった。不景気のさなかでも前向きさを失わず、社員の結束を生んだ経験が、現在の社風の基礎となった。
山口の座右の銘は「明・元・素」。高校時代の応援団で培った「和・忍・誠」の精神が、今も経営の根底に流れている。
万博から世界へ 「最前線に膜を張る」100億円企業へ

創業50周年で売上50億円を達成した山口産業は、次の目標として2028年までに売上75億円、ROA13%を掲げる。
2025年の大阪・関西万博への参画を「成長の起爆剤」と位置づけ、パビリオンで得た技術と発想を新事業の創出へつなげる構えだ。その先には海外展開も視野に入れる。
「最前線に膜を張る」というパーパスには、常に時代の先端で社会課題に挑み、解決を導 くという決意が込められている。山口は言う。
「膜という素材は、軽く、しなやかで、制約を超える力を持つ。私たちもまた、そうありたい。佐賀から世界へ。膜の力で未来を包みたい」。



