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Dodaiと武蔵精密工業が協業|Eモビリティ化が進むアフリカ。フロントランナーへの挑戦

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
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DODAI Representative Sasaki and Mr. Isaku from Musashi Precision Industries

アフリカ・エチオピアで電動モビリティ事業を進めるDodai社が自動車・二輪車のパワートレーン製造の大手、武蔵精密工業株式会社とニッセイ・キャピタル、ICJから300万ドルの資金調達を締結との報道が2024年3月13日にされた。

カーボンニュートラルに世界が大きく舵を切っている今、アフリカに商機を見出したDodai Group, Inc佐々木裕馬 代表取締役兼CEOと同社と手を組むことを決めた武蔵精密工業伊作猛 常務執行役員 CIOに、アフリカに注目する意義について伺った。

アフリカの北東部に位置する内陸国のエチオピアは109.7万平方キロメートルの国土とアフリカ第2位の人口約1億1787万人(2021年)を持つ国。

人口の中央年齢値は(※)19.47歳と極めて若い。国民1人当たりGDPも1000ドル超、実質経済成長率も6.4%(21/22年度、JETRO)とアフリカ諸国の中でも安定した成長率を示している。

※アメリカのデータテクノロジー企業 Knoema Corporation調べ

このエチオピアが直面している問題がガソリン価格の高騰だ。
内陸国エチオピアでは輸送コストが大きくかかるため、ガソリン燃料の価格が高い。

石油輸入にコストが嵩み、貿易赤字の約半分がガソリン代とも。その結果、外貨流出が大きな貿易赤字を生み、通貨価値が下がりインフレが進む悪循環にいる。国全体で喫緊の課題となっている。

そこで今年2月に興味深いニュースが飛んできた。エチオピアが、早ければ2024年にも内燃機関車を世界に先駆けて禁止するというのだ。

EVへの移行はエチオピアにとって経済的に持続可能な長期的な解決策となる期待がかかる。
現下、国民の自動車所有率は1000人中僅か8人(JICA、22年)と極めて低い。

通勤通学にはバスを使うのが主流だが、それでも「慢性的な大渋滞で90分から120分かかるのが当たり前」とDodaiの佐々木さんは語る。劣悪な交通状況が経済のブレーキになっている面もあるようだ。

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イメージ写真 交通渋滞により、通勤・通学の待ち時間が90~120分とも。

問題の原因はエチオピア政府の外貨準備高不足にある。エチオピアの外貨準備高はアフリカ諸国内最低レベルで、23年4月段階で輸入0.6カ月分しかない。

政府はこれを是正すべく22年より乗用車・アルコール類などの新規L/C発行を停止する実質的な輸入禁止措置をとり、国民には国産品の利用を奨めている。

しかし佐々木さんはこうした状況を好機と見る。

「首都アジスアベバの人口は統計では約368万人(20年)と出ていますが、実際はおそらく700万人ほどいると言われています。しかも都市の成長速度が速い。街並みは3カ月あれば大きく様変わりします。

この国はトップダウンで物事が決まる。国がゴーをかけたらそちらに突き進んでいくスピードを持つ、可能性のある市場です」(佐々木さん)

DODAI Representative Sasaki

佐々木さんはUberJapan営業本部長、Luup副社長として電動マイクロモビリティ事業を立ち上げた経歴を持ち、16年からガーナ、コートジボアールなどアフリカを拠点に活動している。
その経験を活かし21年に同社を設立した。

Ethiopian dignitaries and DODAI representative Sasaki
佐々木代表たちDodaiメンバーとエチオピア要人たちとの写真 (提供:Dodai)

「アフリカには貧困から脱却し、経済発展に向かっている国もあります。しかもどの国も旧態然としたモータリゼーションではなくグリーンテック、カーボンニュートラルを積極的に導入している。

なかでもエチオピアはナイル川の水利を利用した発電力があり、電力は豊富。さらに世界に先駆けて内部燃料車の使用禁止の決定した国です。

この際、私はエチオピア国交大臣と直接交渉し、電動モビリティを輸入禁止品から除外してもらいました。

内部燃料車は現在エチオピア国内で保有されているものも禁止になるので、弊社が販売する電動モビリティの存在意義は否応なく増していきます」(佐々木さん)

佐々木さんに注目し、手を組むことにしたのが武蔵精密工業だ。世界のほぼ全てのモビリティメーカーにギアやサスペンション部品、パワートレーンを供給しており2輪車向けのトランスミッションアッセンブリーでは世界約30%のトップシェアを持つ会社だ。

「常にテクノロジーとイノベーションで地球社会に貢献できる会社を目指している」と語る武蔵精密工業伊作さんは、「電動モビリティ化はチャンス」とも言う。

モビリティ関連部品の数は電動化によって大きく減少する。たとえば約1万点の部品からなるエンジンが電気モーターに置き換わることで燃料タンク・点火プラグ・オイルポンプ・マフラーなどが不要になる。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)ではエンジン車からEVへのシフトによって、ヨーロッパだけで約27万5000人の雇用が危険にさらされると警告している(21年12月)。自動車部品世界最大手のボッシュも既に、エンジン関連部品の生産減少に伴う人員削減を進めている。

musashi isaku

「EV化によって厳しい状況に陥るサプライヤーは多い。生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていく企業もある」と伊作さんは話すが、ではなぜそれがチャンスなのか。

「もちろん変化による受注増もありますが、それは変化に伴う一時的なものでしかない。弊社ではさらに先、10年20年後を見据えて二輪用・三輪用のEV駆動ユニットやバッテリーマネジメントシステムを開発し、アフリカやインド、東南アジア各国で電動モビリティ事業を展開しています。

こういった事業展開を通じて社会課題を解決していくことがサステナブルな成長に繋がると考えるからです。その中で佐々木さんと巡り合った」(伊作さん)

佐々木さんが武蔵精密工業を訪れたのは22年10月。まだエチオピアで事業を開始する以前だったが、彼の話す未来像と熱意に圧倒されたという。

「言葉から想いが溢れていた。その後23年10月にエチオピアを訪れた時にはもうショールームもファクトリーもできていて、製品組立も進んでいた。そのスピード感に驚きました。

佐々木さんがやろうとしていることは弊社が目指す先と合致しています。

それでまず出資について合意した。こういう話は普通、どこの領域で何をすると話を詰めてから出資を、となるのですがDodaiのビジョンとスピードに魅了されてしまい、まず出資を決めてそれから具体的な話をしています(笑)」(伊作さん)

DODAI Representative Sasaki and Mr. Isaku from Musashi Precision Industries 2
Dodaiのメンバーは現地の方が中心。現地の方の収入が増え、社会的に活躍できる舞台を作りたいと佐々木さんは語る。

すでにエチオピアではDodai製品が町を走り出している。

「現地ではバイクはただの乗り物ではなく、資産。ですからアフターセールスを充実させ、安心して購入・長く愛用してもらえるようにしている」と話す佐々木さん。

「これまでの現地業者は売りっぱなしで壊れたら乗り捨てられていた。それを修理して使い続けることができるようにします。

日本では当たり前のサービスだが、それだけでブランド評価が高まっている」(佐々木さん)

In front of actual electric mobility equipment at a conference attended by DODAI held in Ethiopia
製品を前に(提供:Dodai)

「今後はまずデリバリー業者やUber配達員などのギグワーカーに普及させ、それから通勤通学での利用へと進めていきたいと考えています。

それもさほど遠くない。ギグワーカーに普及するのもあと半年や一年というスパンで考えています。それだけこの国の成長は早い」(佐々木さん)

今後の展開について伺った。

「進めているのはバッテリースワッピング。販売するのは車体だけで、バッテリーは利用者が町中のステーションで借りて乗る方式です。そうすることでイニシャルコストを大幅に下げることができる。

実は電動モビリティの価格の半分近くがバッテリーです。それを無くせば多くの人が手の届く価格に、例えば0円ケータイのような感覚で分割購入して乗れるようになる。

またバッテリーを共通化することで今後の三輪車などへの波及展開も可能になります」(佐々木さん)

「弊社はパワートレーンのメーカーなので、ホールプロダクトを生み出すためのパートナーが必要です。それで各国でスタートアップと協力してやってきました。

まずは早急にDodai製品と弊社技術を融合させエチオピアにおけるSmall E-Monility展開を先導していきたい」(伊作さん)

更にその先については?との質問に「さらに大きくて難しいマーケットに乗り込んでいく。簡単な国は猛者が集まっているので勝ち残っていくには厳しい。
だから攻略するのが難しい国を選んで向かっていき、トップになる」と答えてくれた佐々木さん。

彼の眼にアフリカの大地は可能性に満ち溢れて見えている。

A conference attended by DODAI held in Ethiopia
Dodaiメンバーとエチオピア要人たち(提供:Dodai)

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ライター:

1980年千葉県生まれ 筑波大学大学院博士課程中退(台湾留学経験有り)。専門は中国近代政治外交史。その他、F1、アイドル、プロレス、ガンダムなどのジャンルに幅広く執筆。特にガンダムに関しては『機動戦士Vガンダム』blu-ray Box封入ブックレットのキャラクター・メカニック設定解説を執筆(藤津亮太氏と共著)。

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