オーストラリアでは,上場企業が資金調達をする際に気候変動リスクを考慮することが必須になる見込みだ。
IGCCに代表されるオーストラリアの機関投資家は,英国や香港などの他の市場に比べて自国の市場が時代から遅れていると考え,オーストラリアの大企業に対して気候変動に関する取り組みを事業計画に取り込むよう求める考えを明らかにしている。機関投資家は,オーストラリア証券取引所に上場している大企業のほとんどが,気候変動の脅威に対処する計画について透明性を持って説明しておらず,企業自身の資金や投資家の資金が危険にさらされていると考えている。
2021年11月に発表された新しい計画では,オーストラリア証券取引所に上場する300社は,今後3年以内に気候変動対策の計画と実行の進捗状況について一定のフレームワークに沿って報告することが義務づけられることになった。
こうした動きの背景として,これまで気候変動対策への取り組み状況に対する外部への説明内容は,各企業の選択に任されてきたが,それでは気候変動における各国の担う目標を達成するだけの効果をあげることが困難だと認識され始めており,自主的な報告制度の限界が見えてきたことがある。
例えば,責任ある投資のための世界的な原則を定めている組織であるPRIは、非営利団体であるCDPやIGCCとともに、世界の資本のうち数百兆円をコントロールするグローバルな投資家と協力しており,IGCCのメンバーには、8兆ドル規模のファンドマネージャーであるブラックロックやオーストラリア最大の退職基金であるAustralianSuperなど、100社以上の投資家が名を連ねている。これらの非常に有力な三社は、プロジェクトに資金を提供するかどうかを決めるためには、市場が企業の立場を完全に監視する必要があると考えている。
こうした有力な投資家達の行動からは,今後は気候変動対策などに関する取り組みが遅れている企業からは投資家が資金を引き揚げ、実際に気候変動対策を実施した上で透明性高く公表している企業にその資金を再投資する流れができると推測される。
なお、APRAやASICなどの金融規制機関、財務省、オーストラリア証券取引所は、企業が「気候変動の影響で避けられないリスクや上昇するリスク」を管理していることを確認する義務を負っており,IDP社のCEOであるポール・シンプソンは、「金融システムの継続的な安定性を確保し、国際的な競争力を維持するために、オーストラリアは優先的に独自の義務的体制を構築すべきである」と述べた。企業は対策を怠れば、数ドル以上の損害を被ることになりうる。