
東京・赤坂。喧騒を離れた一等地に佇む会員制サウナ「SAUNA TIGER(サウナタイガー)」で、あまりに痛ましい事故が起きた。
12月15日正午過ぎ、3階の個室サウナから出火。室内で倒れていた30代の男女2人が死亡した。現場は、成功者たちが束の間の休息と──時には親密な時間を過ごすための、知る人ぞ知る“聖域”だった。
ビジター1回1万9000円…「成功者の遊び場」
「ここは単なるサウナではありません。完全にプライベートが守られた空間で、男女での利用もできる。まさに『大人の隠れ家』です」
そう語るのは、都内のサウナ事情に詳しい業界関係者だ。同店の料金設定は強気だ。ビジター料金は120分で1万9000円から。定員4名のペントハウスに至っては1回5万9000円にもなる。さらに月額39万円の「ダイヤモンド会員」になれば、1階の専用個室が利用可能で、アパレル割引やラウンジ利用などの特典もつく。
高額な対価を支払ってでも得られる「完全個室」という空間。そこは、周囲の目を気にせず男女が親密な時間を過ごす(いちゃいちゃする)には、これ以上ない最高のロケーションだったはずだ。しかし、その“閉ざされた空間”という特性が、今回は最悪の形で牙を剥いた可能性がある。
常連のベンチャー社長が語る「戦慄」
実際に同店を愛用していたという、30代のITベンチャー企業経営者・A氏は、ニュースを聞いて血の気が引いたと語る。
「いや、本当に洒落にならないですよ。僕もついこの前、女の子と一緒に行ってきたばかりですから……。ラウンジでお酒も飲めるし、部屋の雰囲気も最高で、デートには鉄板の場所なんです。でも、ドアノブが外れたって聞いて震えました」
報道によれば、現場のサウナ室のドアノブは、内側からも外側からも外れ、床に落ちていたという。
「サウナ室って、ただでさえ熱くて息苦しいじゃないですか。もしあの中で、出ようとした瞬間にノブがポロッと取れて、ドアが開かなくなったら……想像するだけでパニックになりますよ。あの重厚なドアが、まさか開かなくなるなんて誰が思いますか?」(前出・A氏)
「スマホ持ち込み」という“時限爆弾”
なぜ、火は出たのか。捜査関係者が注目しているのは、座席に残された「こぶし大の焼け跡」だ。そこから浮かび上がるのは、現代人特有の“依存”と、高温環境というミスマッチ。
「報道では、個室へのスマホ持ち込みが可能だったとされています。リチウムイオンバッテリーは熱に弱く、サウナのような80度~100度を超える環境では『熱暴走』を起こすリスクが極めて高い。座席の焼け跡は、スマホやモバイルバッテリーが発火し、木材を焦がした痕跡と一致する可能性があります」
音楽を流したり、記念写真を撮ったり……。ふたりの時間を演出するためのツールが、高熱に晒され、突然火を噴く。慌てて逃げ出そうとドアに手をかけたその時、熱の影響か、あるいは別の要因か、ドアノブが機能を失っていたとしたら──。
運営会社は「言葉では尽くせぬほどの深い悲しみ」を表明し、当面の営業停止を決めた。都会の真ん中で起きたこの悲劇は、密室サウナのリスク管理と、何気なく持ち込まれる電子機器の危険性を、あまりに重い代償とともに突きつけている。



