
「つくった人が自分の子どもに食べさせられるもののみをお届けします」
そんな清廉なスローガンを掲げる『オイシックス・ラ・大地』に激震が走っている。12月24日、週刊文春が報じたのは、髙島宏平社長(52)による部下へのセクハラ・パワハラ、そして妻子ある身での「二股不倫」疑惑だった。
だが、永田町や経済界の事情通たちが本当にざわついているのは、単なる下半身スキャンダルではない。この騒動があぶり出した、同社の「歪なガバナンス」と、有価証券報告書に記されていた「ある予言」の的中だ。
永田町で飛び交う推測「お相手の元AKBとは…」
文春報道では「元AKB48メンバー」との密会が報じられたが、ネット上では早くも特定合戦が過熱している。事情通の間では、ある“プロファイリング”がなされているという。
「AKB48の卒業生は数多いが、髙島氏との接点を考えればおのずと絞られる。彼は『食』や『地方創生』、そして『復興支援』に熱心な経営者として知られています。とすれば、派手なバラエティ班や女優班ではなく、地方自治体の観光大使を務めていたり、食育や農業関連のイベントに顔を出している“意識高い系”の元メンバーではないか」(芸能ジャーナリスト)
また、別の広告代理店関係者はこう推理する。
「髙島氏は人の心に入り込むのがうまい。ビジネスの相談に乗るふりをして距離を縮めるのは経営者の常套手段です。相手は、アイドルを卒業し、セカンドキャリアに悩む中で、起業やプロデュース業に関心を持っていたメンバーの可能性が高い。『君のビジネスを応援するよ』という甘い言葉が、52歳の既婚者と元国民的アイドルを繋ぐ“架け橋”になったのではないか」
だが、アイドルとの火遊び以上に深刻なのは、社内の“腐敗”だ。
止まった時計…「2021年度」から更新なきコンプライアンス
オイシックスの公式サイトにあるサステナビリティの「コンプライアンス」のページを見ると、奇妙なことに気づく。
そこには《2021年度は、差別事例などの人権侵害を含む報告はありませんでした》、《2021年度の重大な違反は0件でした》と記されているのだ。今は2025年の年末である。なぜ、3年も前のデータで止まっているのか。
「2021年といえばコロナ禍で宅配バブルが起きていた時期。業績好調の陰で、ガバナンスへの意識がそこで思考停止していた疑いがある。子会社となったシダックスの不正会計の不祥事が発覚したのは2024年末。そこからも時間が経っています。もし仮にその後も『違反ゼロ』だったとしたら、文春で報じられた『ハゲ』『バカ』といった暴言やセクハラが日常茶飯事だった現状と矛盾する。つまり、内部通報窓口(ホットライン)が機能不全に陥っていたか、社長への忖度で握りつぶされていたかのどちらかでしょう」(経済ジャーナリスト)
サイトには《コンプライアンスの本質は、社会からの期待に応えること》とあるが、現状は社会の期待を裏切るばかりか、自社の規定すら形骸化させていたと言わざるを得ない。
有価証券報告書が予言していた「リスクの顕在化」
そして何より皮肉なのが、同社が発行している最新の有価証券報告書(2025年3月期)の事業などのリスクを開示する項目での記述だ。「 人材に関するリスク」の項目には、恐ろしいほど正確に現在の危機が記されている。
《当社グループの設立の中心人物であり、事業の推進者である代表取締役社長髙島宏平は(中略)当社グループの依存度は高くなっております》
会社側は髙島氏への「過度な依存」を最大のリスクと認識していたのだ。その上で、《何らかの理由により同氏の業務遂行が困難となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります》 と結んでいる。
対応策として《他の取締役や従業員への権限委譲等を進めております》 と記載されているが、今回のハラスメント報道を見る限り、権限委譲どころか、社長が「裸の王様」として君臨し、誰も彼を止められない独裁体制が続いていたことは明白だ。まさにサクセッションにミスった形といえる。
「業務遂行が困難となった場合」。不倫やハラスメントという、まさかの形でそのリスクが現実のものとなった今、オイシックスは自ら記した「事業への影響」をどう食い止めるのか。
新鮮な野菜は届いても、経営トップの倫理観は賞味期限切れだった、では済まされない。



