― 適時開示と株主構成の変化が示す経営権争いの行方 ―

東証スタンダード上場のEC物流支援企業イー・ロジット<9327>は、2025年9月24日付で適時開示を行い、同社に対する訴訟提起を公表した。発表によれば、豊田Holdings株式会社(以下、豊田HD)が東京地方裁判所に株主権確認請求訴訟を起こし、同社がイー・ロジットの普通株式70万株を保有していることの確認を求めている。
適時開示の内容
イー・ロジットの開示によると、豊田HDは2025年8月14日、新株予約権7,000個(1個100株換算)の行使価額1億2,600万円を同社口座に振り込んだ。しかしイー・ロジットは同額を返金、その後、豊田HDは東京法務局に供託し、「払込みは有効」と主張している。これを根拠に、70万株の取得が完了したとする立場だ。
一方、イー・ロジット側は2025年7月8日付の適時開示で「新株予約権は豊田HDが行使する前に当社がすべて取得済み」としており、株主権の成立を全面的に否認。訴訟は両者の主張が正面から対立する形で進む見通しだ。
株主構成の現状
直近の株主状況では、有限会社フクジュコーポレーションが22.52%(168万株)を保有し筆頭株主となっている。次いでGFutureFund1号投資事業有限責任組合が15.02%、プログレス株式会社が9.89%、創業者の角井亮一氏が5.74%を握る。
株主は分散しており、創業者の角井氏が経営に対する影響力を限定的にしか持たない点も、経営権を巡る不安定要因となっている。
背景にある経営権争奪戦
今回の訴訟は、イー・ロジットが債務超過に転落した2024年3月期決算を発端にした資本変動の延長線上にある。同年9月、ジーエフホールディングス(GF)と豊田HDを引受先に第三者割当増資を実施し、豊田HDは当初筆頭株主に躍り出た。だがその後、株式をすべて手放し、フクジュコーポレーションが新たな筆頭株主となった。株主が短期間で入れ替わる中で、経営方針の一貫性が揺らぎ、創業者と新経営陣の対立も深まっている。
今後の見通し
豊田HDが株主としての権利を主張し続ける一方、イー・ロジットは正当性を否認。訴訟の帰趨は、同社の経営権をめぐる争いに大きな影響を与える可能性が高い。物流支援という成長市場に立つ同社にとって、ガバナンスの混乱をいかに収束させるかが再建のカギを握る。