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医療法人ONE きくち総合診療クリニック

https://kikuchi-geclinic.jp/index.html

神奈川県綾瀬市深谷中7-18-2 ライズモール綾瀬1F

終わりのない患者の列を“人気の証”で済ませて良いのか?きくち総合診療クリニックが鳴らす警鐘と、20年後の地域医療

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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きくち総合診療クリニック 菊池大和院長
きくち総合診療クリニック 菊池大和院長(撮影:寺尾公郊、以下同)

診察の終わりが終わらない。神奈川県綾瀬市にある「きくち総合診療クリニック」では、午後7時まで診療を続けてもなお、待合室から人が消えることはない。これを単なる「人気の証」で済ませてよいのだろうか。

 

「終わりが終わらない」。途切れない患者の列が浮き彫りにする、地域医療の空白地帯

2017年4月の開院から間もなく9年。きくち総合診療クリニックのカルテ番号は、すでに7万2000番台を超えている。綾瀬市の人口の半数以上が一度は受診し、周辺市町村からも多くの患者が押し寄せる。この異常とも言える集客力の理由は、決して真新しい画期的な治療法にあるわけではない。同院が提供しているのは、「いつでも、なんでも、だれでも、まず診る」という、かつての町医者が当たり前に行っていた医療だ。

菊池
「毎日のように『他のクリニックからこちらに移りたい』とおっしゃる患者様がいらっしゃいます。患者様の取り合いになってしまう側面もあるかもしれませんが、それだけ地域の方々が『何かあった時に頼れる場所』を求めて迷子になっているということなのです」

菊池院長は現状をそう分析する。現在の日本の医療体制は、専門性が高度に細分化されている。心臓が痛ければ循環器内科、膝が痛ければ整形外科、風邪を引けば内科と、患者は自らの症状に合わせて病院を選ぶことを強いられる。若い世代であればそれも可能かもしれないが、複数の疾患を抱え、足腰も弱った高齢者にとって、いくつもの病院を掛け持ちして通院することは物理的な限界がある。

きくち総合診療クリニック 菊池大和院長

「例えば家の前にクリニックが10軒あったとしても、糖尿病の専門、心臓の専門、整形の専門ばかりで、自分がハチに刺されたり、転んで頭を打ったりした時にどこも診てくれなければ、隣の町までタクシーで行くしかありません。専門性の高いクリニックがいくつあっても、なんでも診てくれる『かかりつけ医』が一人いなければ、地域の高齢者は救われないのです」

 

「とりあえず薬を出すだけ」の医療が招く、高齢者の孤立とリスク

患者たちが同院に押し寄せるもう一つの理由は、既存の医療システムが陥りがちな効率化の罠に対する不満だ。限られた診療時間の中で多くの患者を捌くため、ともすれば現代の医療は「薬を出して終わり」になりがちだ。しかし、菊池院長は「薬だけ出すなんて、別に誰でもできることです」と一刀両断にする。

「救急医療の現場にいた頃、いろんな病院にかかってお薬手帳はパンパンなのに、結局誰もその人の根本的な苦痛を解決してくれず、手遅れになって救急車で運ばれてくる高齢者をたくさん見てきました。『いつもの先生に相談したけど大丈夫って言われた』と。彼らはSOSを出していたのに、すくい上げられていなかったのです」

高齢者の訴えは、医学書のセオリー通りにはいかない。「教科書には高齢者の本当の訴え方は書いていない」と菊池院長は語る。例えば、「お腹が痛い」と訴えて近所の胃腸科を受診し、胃薬を出されたが一向に良くならず同院に駆け込んでくる患者がいる。

「お腹が痛い原因は、決して胃だけではありません。実は心筋梗塞を起こしている人も『お腹が痛い』と訴えることがあるのです。そこを拾い上げられず、単なる腹痛として帰してしまえば、その夜に命を落とすかもしれない。だからこそ、どんな曖昧な訴えでも気軽に来てもらい、対話を重ね、時にはCTやMRIなどの高度な検査機器を使って即座に診断をつける。その手立てと覚悟が、かかりつけ医には絶対に必要なのです」

患者の話を深く聞き出し、隠れた重篤な疾患を見逃さない。一見すると非効率でアナログな対話を重視するこの姿勢こそが、手遅れを防ぎ、結果的に医療資源の無駄遣いを抑えるというサステナブルなサイクルを生み出している。

きくち総合診療クリニック 待合
待合の様子
 

専門医偏重の医学教育と、開業リスクが阻む「かかりつけ医」の普及

これほどまでに社会から求められている「総合診療かかりつけ医」だが、一向に増える気配がない。国も総合診療医の育成を掲げてはいるものの、現実は厳しい。その根本的な原因はどこにあるのか。菊池院長は、長年にわたる医学教育の構造にメスを入れる。

「大学の医学部では、どうしても難しい病気を治す専門医になることが王道とされ、評価されがちです。最近でこそ大学病院にも総合診療科ができましたが、そこに所属する若い医師たちの多くは、大学病院という組織の中で研究や院内診療に携わることを望んでいます。地域に出て、泥臭く患者の生活に寄り添う『総合診療かかりつけ医』としての開業医にはなかなかなろうとしないのです」

大学病院の中にどれほど優秀な総合診療医がいても、彼らが地域社会の最前線に出てこなければ、高齢者のセーフティネットは構築されない。さらに、開業のハードルも年々高まっている。同院が「いつでも、なんでも、だれでも、まず診る」を実践するためには、レントゲンだけでなく最初からCTを導入し、広大な駐車場と60坪のスペースを確保する必要があった。

きくち総合診療クリニック 院内の掲示板
院内の掲示板
 

個人の自己犠牲から、社会システムの変革へ。政治や行政を巻き込む新たな挑戦

菊池院長はこれまで、自らの信念を広めるために書籍を出版し、全国の医学部に寄贈するなど、草の根の啓蒙活動を続けてきた。しかし、毎日のように増え続ける患者の列を前に、一開業医の努力だけでは限界があることも痛感している。

「なぜ今、かかりつけ医の不在が大きな社会問題になっていないかというと、まだ入り口に過ぎないからです。あと10年、15年もすれば、今の地域を支えている開業医の先生方は高齢で一斉に引退します。一方で高齢者の数はピークを迎え、総合病院のベッド数は削減されていく。その時、行き場を失った高齢者たちが地域に溢れ返る。これは間違いなく顕在化する未来の危機なのです」

未来の医療崩壊を防ぐためには、個人の奮闘から、社会システムそのものの変革へとフェーズを移行させなければならない。医学部における教育カリキュラムの抜本的な見直しはもちろんのこと、地域で総合診療かかりつけ医として開業しようとする若手医師に対する公的な資金援助や、診療報酬上の強力なインセンティブの付与など、国や行政を巻き込んだ制度設計が不可欠だ。

インタビュー中、「地域医療の持続可能性を担保するために、医療政策に通じた政治家などへ直接陳情に行き、トップダウンでのルールメイクを働きかけるべきではないか」という提案が及ぶと、菊池院長は目を輝かせた。

「やってみたいですね。今までそういったアプローチは考えたことがありませんでしたが、具体的に国や行政を動かしていかないと間に合いません。YouTuberになって発信するといったことよりも、もっと本質的な仕組みづくりに取り組まなければならないと強く感じます」

きくち総合診療クリニック 外観
クリニック外観
 

「どこに行っても何でも診てもらえる」。そんな当たり前の未来を創るために

特定のクリニックに毎月500名以上の新規患者が押し寄せ、午後7時を過ぎても診察が終わらない。このきくち総合診療クリニックの現状は、日本の医療体制のバグを吸収し続けている結果である。彼らが担っているのは、本来であれば地域社会の網の目として機能すべき、社会包摂の役割そのものだ。

しかし、一人の傑出した医師の体力と精神力に依存する医療は、本来のサステナビリティとは対極にある。菊池院長が本当に目指しているのは、自らのクリニックを巨大化させることではない。全国のあらゆる町に、自分と同じように「なんでも診て、患者を迷わせない」総合診療かかりつけ医が分散して存在し、地域全体で強固なネットワークを形成することだ。

「困った時にすぐに行ける場所があり、自分の生活背景まで理解してくれている医師がいる。そんな環境が日本のどこに住んでいても当たり前にある社会インフラにしたいのです」

きくち総合診療クリニックの前にできる終わりのない患者の列。この列が綺麗に分散し、一人ひとりの患者が歩いて行ける距離で十分なケアを受けられるようになった時。それこそが、菊池院長が長年鳴らし続けてきた警鐘が社会に届き、日本の地域医療が真の意味で持続可能な形へとシフトした証となるはずだ。その未来を手繰り寄せるため、彼の戦いの舞台は今、診察室から社会のシステムづくりへと広がろうとしている。

Alt属性:ウィズマインドできくち総合診療クリニックの独占インタビューを公開!ウィズマインド(https://with-mind.jp/)は、あなたの悩みに寄り添った医療機関を発見するために、医師・スタッフの「想い」をお届けするメディアです。
▲クリックすると、菊池先生のインタビューの完全版を読むことができます▲

「いつでも、どこでも、だれでも、まず診る」の現場から、地域を支える「総合診療」の核心まで、きくち総合診療クリニックが描く持続可能な医療の未来図を徹底解剖。綾瀬市民の半数が頼る“街のインフラ”を築き上げ、2040年問題へ挑む菊池院長の軌跡は、医療系メディア『ウィズマインド』の特集記事をご覧ください。
特集記事:『「いつでも、なんでも、だれでも、まず診る」覚悟が生んだ7万人の信頼。きくち総合診療クリニックが証明する、地域医療のあるべき姿

ウィズマインドは、あなたの悩みに寄り添った美容クリニック・医療機関を発見するために、医師・スタッフの「想い」をお届けするメディアです。

【クリニック情報】
きくち総合診療クリニック
院長:菊池 大和(きくち やまと)
所在地:神奈川県綾瀬市深谷中7-18-2 ライズモール綾瀬1F
URL: https://kikuchi-geclinic.jp/
診療科目: 総合診療科、内科、外科、救急科、小児科他
「いつでも、どこでも、だれでも、まず診る」を掲げ、CTやMRI等の高度医療機器を用いた迅速な診断と、0歳から高齢者まであらゆる症状を受け入れる全人的医療を提供。カルテ登録患者数は7万人を超え、地域の総合診療かかりつけ医として、2040年問題を見据えた持続可能な医療インフラの構築に挑んでいる。

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ライター:

Webライターとして活動。主にエンタメ系、サステナビリティ関連の記事などを扱っています。

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