
2024年、11年ぶりに倒産件数が1万件を超えた。人手不足、物価高、後継者不足…様々な課題に直面している中、立ち行かなくなる企業が増えている。
そんな中、「倒産をなくしたい」という思いで企業の財務をサポートするのが、福岡県を拠点とするWill Forward Consulting株式会社だ。財務のコンサルティングのほか、資金繰り支援ツール「グリらく」、保険代理店事業などによって、多角的に企業をサポート。資金繰りの悩みを解決し、会社をより良く変えるところまで伴走するパートナーとなっている。
そんな同社が描く、「倒産をなくす」までの青写真とは。代表の山本要輔氏に伺った。
いろいろな角度から財務改善をサポート。倒産をなくすための伴走支援
「ご縁がある企業は絶対に倒産させない」
そんな強い覚悟を持って、全国の中小企業と向き合っているのがWill Forward Consulting株式会社だ。「中小企業の不安を安心へ」という理念を掲げ、コンサルティングによる財務改善にとどまらず、経営者の不安を取り除くことに注力している。
同社が目指す世界観を表すのは「倒産を博物館へ」という言葉。これは、山本氏が前職の代表から聞いて指標としてきたものだという。
「この言葉には深く共感しました。『昔は倒産っていう悲しい出来事があったんだよ。今はもうないけど、博物館に行けば見られるんだよ』と語り継がれるような、そんな世界をつくりたいと思っています」(山本氏)
しかし、そのためには現実にある「倒産」という大きな課題を乗り越えなければならない。山本氏は「経験上、多くの経営者が自社の財務を本当の意味で理解できていません」と現状を話す。多くの中小企業が資金繰りの管理に課題を抱えており、「銀行は貸したいのに貸せず、企業は借りたいのに借りられない」というミスマッチが起きているというのだ。
さらに、資金繰りへの不安は経営者の判断能力にも影響する可能性も指摘される。アメリカの心理学者らがインドのサトウキビ農家を対象に行った研究によれば、収穫前の経済的に厳しい時期と、収穫後の豊かな時期では、同じ人でもIQテストの結果に差が見られた。豊かな時期に比べて厳しい時期はIQが約14ポイント低下し、これは一晩睡眠を取らなかった場合やアルコール依存症の影響に匹敵するという。
資金繰りにおける課題を解決することは、倒産を防ぐだけでなく、経営者の心の安定や、それによる健全な判断も守ることにつながるのだ。「健全な財務状況で、成長・発展のための前向きな判断ができるようになる。そうなるためのサポートをするのが私たちの役目です」と山本氏は話す。

そこで、これまで同社はコンサルティングを通じてそのサポートを行ってきた。しかし、そこには「属人化」という壁も立ちはだかった。
「一定のレベルを超えると、どのコンサルタントも言うことはほとんど同じになります。違いは『誰に言ってもらいたいか』という人間力や信頼関係。だから、お付き合いをすると決まれば、お互いに腹割って話せる関係性を築くことに全力を尽くします。ただ、そうするとどうしても属人的になってしまうのです。中には『山本さんが担当を離れるなら辞めます』という人もいらっしゃいます。嬉しいことですが、このままでは裾野を広げるのは難しい。より多くの企業を救うためには、属人化を超えられる仕組みが必要でした」(山本氏)
そんな課題を解決し、より多くの人をサポートするために2025年にリリースしたのが資金繰り支援ツール「グリらく」だ。その名の通り、「資金“繰り”を“楽”にする」という意味が込められている。

「売上はあるけど、手元にお金が残らない」
「税理士から試算表はもらうけど、どう経営判断に活かせばいいか分からない」
そんな悩みに対して、会計を見える化することで、経常収支と財務収支のバランスから、いつ資金が尽きるか、そしてそのリスクにどう備えるかを視覚的に伝えるツールだ。
このツールの特徴は、会計データと100%連動し、月別・日別の資金繰り表を簡単に自動生成できる点にある。資金繰りに特化している同様のツールは他にほとんどないという。また、中でも特筆すべきは「いつ資金が枯渇するか」という、改善の必要性を知らせてくれる「資金余命」のアラート機能だ。
「通帳を見て一喜一憂するのではなく、資金繰り表を見て未来を変えるための行動ができるようにしたいと考え、このツールを作りました。アラートが出れば、お客様自身で気づき、判断するきっかけになります。追加融資を相談する、入金を増やすための施策を打つ、経費を削減する…。コンサルタントが言わなくとも自社の財務状況を知り、お金を守るための行動を取れるようになるのです」(山本氏)
グリらくは数字を整理するだけでなく、お金を守るための行動を取るところまでを見据えたツールなのだ。山本氏は「グリらくによって、倒産がなくなるきっかけに絶対になると思っています」と確信を持っている。
さらに「グリらく」は、銀行や税理士との関係性も変える力を持っている。銀行が求める資金繰り表をワンクリックで出力できるため、銀行とのやり取りや日々の資料作成工数も劇的に削減される。また、中小企業の一番の相談相手である税理士にとっても、強力な武器となる。
「税理士が試算表や資金繰り表を使いながら、経営改善をするところまでできたらいいなと思っていて。税理士の先生方は税務のプロですが、未来の経営判断への伴走には悩まれていることも多いです。そこで、グリらくを使うことで『資金余命がこうだから、今のうちに手を打ちましょう』と具体的な提案を可能にしたいと考えました」(山本氏)
加えて、現在は保険代理店の事業も開始した。万が一何かがあった時に負債が遺族に行かないよう、お客様の保険を見直している。税理士や会計士、銀行、保険代理店や保険会社と周りを巻き込みながら企業の財務改善に伴走する。それが同社のやり方なのだ。
経営者の気持ちに寄り添うパートナーへ。起業の決意
山本氏がこれほどまでに「倒産しないこと」にこだわる背景には、過去の経験がある。母子家庭で育った山本氏は大学生のある日、疎遠だった父方の祖父母から突然の連絡を受けた。
父の事業が破綻したため、数億円の借金を背負う可能性がある——。
父が営んでいた事業が一時の急成長の反動で立ち行かなくなり、最終的には自ら命を絶ったというのだ。その結果、子どもである山本氏に負債が残ってしまった。「人生が終わったと思いました」と、山本氏は当時を振り返る。
その後、弁護士を通じて相続放棄ができたため、事なきを得た。しかし、事業とは直接関係のない山本氏がこれだけ大変な思いをしたなら、仕事で直接付き合っていた取引先などはどれほどの影響があっただろうか。この出来事を機に、会社の倒産の大変さを痛感し、現在の仕事の原動力になっているという。

その後、大学を卒業してからは会計コンサルティング会社に就職。当時から漠然と「独立したい」という思いは持っており、当時の会社で推奨されていた分社化というイメージを抱きながら仕事をしていた。その後、たくさんの経営者をサポートし、取締役にも就任。順調にキャリアを積んでいった山本氏だが、40歳の時に起業を決意したという。
「このまま組織人として働いていくのもいいと思っていました。でも、独立しなかったことを後悔したくないという思いも大きくて。組織に守られている環境から独り立ちして通用するのかも含めてチャレンジする方が、自分自身で納得できると思いました」(山本氏)
それなら今が最後のチャンス。そう思った山本氏は41歳で退職し、42歳で同社を立ち上げた。組織を飛び出し、経営者としてプレイヤー側に回った山本氏。起業を経て、改めて経営者の苦労を実感したという。
「自分で事業計画を作りながら、『お金はあるか?』『明日の売り上げは立つのか?』という不安に押しつぶされそうになりました。こういうことか、と思いましたね。みんな大なり小なりこの不安を抱えているんだと。だからこそ、今はお客様の気持ちが痛いほど分かります」(山本氏)
経営者の気持ちがより鮮明に分かるようになったからこそ、お客様の背景や気持ちも理解して寄り添える。信頼でき、心強いコンサルタントとして、たくさんの経営者の財務と心を支えている。
「変化のきっかけ作り」が自分の役割
—— 仕事において大事にしていることは何ですか?
「相手に軸足を置くこと」を一番大事にしています。私たちの仕事は、お客様の土俵に入って自分の専門性を活かし、変化するきっかけをつくることだと思っています。そのためには、どれだけ相手のことを理解できるかがポイントなんです。数字を並べてペラペラと話しても、相手には届きませんから。
数字まわりやビジネスモデルはもちろんのこと、社長や幹部の方々の考え方、性格なども理解した上で、これからどう変えていくべきか、それにどんな意味があるかを伝えなければなりません。そのために、相手に軸足を置いて関心を持って話すこと。これができなければ、相手を変えるきっかけはつくれないと思っています。
—— 数字だけでなく、人とも向き合う仕事なのだと感じます。仕事を通じてどのような働きがいを感じていますか。
結果が出た時に、「付き合っていてよかった」「あなたのおかげです」といった言葉をかけていただけた時はとても嬉しいですね。
あと、相手に変化を与えるきっかけができて、その結果伸びていくことを実感した時もやりがいを感じます。中小企業の場合、「自分はこのやり方でずっと支えてきたんだ」という自負心を持っている方がいることが多いのですが、その人が変わらなければ会社も変わりません。そういう人が私の言葉に耳を傾けて、今までのやり方を変えたことで会社も変わり出す瞬間を見られるのは、この仕事の大きな醍醐味ですね。

仲間とともに、より良い未来をつくりたい
—— これからの展望を教えてください。
「グリらく」を1万社導入することを目指しています。この数字は、2024年度の倒産件数とほぼ同じです。
もし、これだけの会社の倒産をなくすことができたら。中小企業実態基本調査(令和5年速報)によると、中小企業の平均売上は約2億円とされていて、1万件分の倒産がなくなれば2兆円もの経済規模になります。それだけでなく、数百億の納税も生まれます。そして、各社の社員が10名程度と言われているので、1万社だと10万人の雇用を守ることもできます。それだけやる意味の大きいことなのです。
ただ、正直なところ弊社の力だけではかなり難しいと思っています。だから、税理士や会計士などの専門家や同業のコンサルティング会社、金融機関など、いろいろな方の協力をいただかなければなりません。幸い仲間が増えてきているところで、これからもどんどん増やして進めていきたいと考えています。
—— 「1万社」という数字が与える影響は想像より大きいですね。
そうですね。でも、「1万社導入」って言うのは簡単なんですが、本当に大変なことだと思います。だから、自分や社内だけでなく、こうして周囲にも言うようにしていて。そうしたらもう後には引けないじゃないですか(笑)。
私は、今43歳なのですが、時代の流れの早さを見ていると、多分あと10年程度しか通用しないと思うんです。そう考えると、十数年で1万社導入しないといけない。悠長なことは言ってられないなと思います。最低でも5年で3,000社は導入したいので、スピード感を持って早く展開しなければならないので、逃げられない環境を作っています。
—— どんな人・企業と一緒に取り組みをしていきたいと考えていますか?
こういう世界を作りたいというビジョンを持った、「未来志向」の方です。もっと豊かな未来、ハッピーな未来などを見据えている方々と弊社はすごく相性がいいんですよね。私のように「倒産をなくしたい」という思い以外にも、事業承継や後継者不足など、それぞれが課題意識を持っていると思います。そうした課題を解決し、日本を良くしたいというマインドを持った人と一緒に、より良い未来を創っていきたいですね。
◎企業情報
会社名:Will Forward Consulting 株式会社
URL:https://willforwardconsulting.com/
代表者:山本 要輔
所在地:〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2丁目6-50 福岡大名ガーデンシティ8F
設立:2024年1月
◎インタビュイー
山本 要輔
長崎県出身。学業修了後、会計事務所系のコンサルティング会社に入社し、約18年間にわたって中小企業の財務支援に携わる。のちに独立し、資金繰りや融資支援を中心としたコンサルティング業務を開始。2024年にWill Forward Consulting(株)を設立した。現在では、グリらく というサポートシステムも提供し、企業の不安を安心に変える財務支援に力を注いでいる。



