丹波市とともに生きる 技術と雇用で地域貢献

兵庫県丹波市に本社を置くパナレーサー株式会社は、日本で唯一の自転車タイヤ専業メーカーとして知られる。創業から70年以上、職人の技術を受け継ぎながら、地域とともに歩んできた。
大和竜一社長は、「本社工場は未来永劫この地で存続し、R&D拠点として技術を磨き続ける」と語る。
地方に根を張る企業として、地域雇用の維持・拡大にも積極的に取り組んでいる。丹波の地で生まれた技術が、世界中のサイクリストを支えているのだ。
丹波から世界No.1へ 「グラベルキング」に託す挑戦
同社の代表作「グラベルキング」シリーズは、砂利道(グラベル)を走るサイクリング文化の広がりとともに、今や世界的ヒット商品となった。大和氏は「喜ばれる商品を通じて、世界文化の発展に寄与したい」と語る。
小さな地方企業がグローバルブランドへと成長できた背景には、早期の商品化と市場感度の高さがある。グラベルタイヤが注目される前から開発に着手し、いち早く世界市場を切り開いた。
またSNSで積極的に発信するプロモーション戦略も功を奏した。今後は海外生産を進め、欧米や中国市場での販売を強化していく
「丹波市から世界へ」という理念のもと、技術革新とブランド力を両輪に、さらなる飛躍を目指している。

地域創生への協力 「走ることでつながるまちづくり」
パナレーサーの挑戦は、単なる製品づくりにとどまらない。グラベルを通じて地域をつなぎ、地方の魅力を発信する活動にも力を入れている。
丹波市をはじめ、全国各地の地方自治体や地域団体と連携し、グラベルライドイベントを企画・後援。自然や食文化を楽しみながら走る体験を通じて、地域のPRと観光振興にも貢献している。
「全国各地で関わりを持たせていただいた地域が、すべて私たちの“地元”だと感じています」と大和氏は語る。単独のイベントがやがて複合化し、地域同士が連携することで、日本全体のサイクルツーリズムの発展にも寄与している。

現場で培った再建哲学を礎に
群馬県出身の大和氏は、足利銀行で企業再生に携わったのち、SBIグループや老舗酒造会社などで経営を担ってきた異色の経歴を持つ。
鬼怒川温泉のホテル再建や上場企業の再構築を通じて「現場から変える」経営を実践してきた。
大和社長経歴書
2020年にパナレーサー社長に就任して以降、ブランド刷新と新製品投入を進め、企業価値を飛躍的に高めた。
「丹波から世界へ」。その言葉は決して誇張ではない。地域を基盤に世界とつながる、地方発グローバル企業の理想を、パナレーサーは静かに体現している。



