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ネットミーム「美緒48歳」の『セルフ・ネグレクト』作者・榎本由美氏が逝去

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“美緒48歳”ネットミームで再評価 作者の生涯

漫画『セルフ・ネグレクト~ゴミ屋敷、ホームレス、ひきこもり』などの著作で知られる漫画家の榎本由美氏が、11月4日に永眠していたことが分かった。訃報は本人のXアカウントを息子が更新し、「母が永眠いたしました」と投稿したことで明らかになった。

榎本氏は1986年に漫画家デビューし、代表作に『児童養護施設の子どもたち』『愛のこどもたち』などがあるが、近年ではある作品が「ネットミーム」として話題になっていた。

2024年、ネットミーム「美緒48歳」が世代を超えて拡散

1990年代にレディースコミック界で有名になった榎本氏。その名が再び世に知られるきっかけとなったのは、2024年頃にネット界を席巻したネットミーム「美緒48歳」だ。

漫画『セルフ・ネグレクト~ゴミ屋敷、ホームレス、ひきこもり』の“ひきこもり編”に登場する主人公・美緒は、受験失敗をきっかけに引きこもりとなったのち過食症を患い、他責思考で家庭内暴力も働き、無気力のまま中年期に突入。生活能力を欠いたまま年を重ね、唯一寄り添っていた母も倒れ、さらに死去。
絶望の中で美緒が発する
「お母さあああん」「美緒生きていけないよおおおお」
という叫びと、
「美緒48歳 配偶者なし 子供なし 生活能力なし……」
というナレーションが、SNS上で“悲劇の滑稽さと社会の残酷さ”を象徴するフレーズとして爆発的に拡散した。

哀しみ、虚無、リアリティ。そして、ほんのわずかに漂うブラックユーモア。
この奇妙なバランス感覚こそ、榎本氏の作風が持つ核心だった。

 

現代社会の影を描き続けた作家

榎本由美氏は、これまで
・ゴミ屋敷
・ホームレス化
・引きこもり
・家族崩壊
・依存症
・女性の孤立
など、現代が抱える“静かな地獄”を題材にしたルポ漫画・実録系コミックを数多く手がけてきた。

一見すると“特殊な世界”に見える題材でありながら、
「小さなボタンの掛け違いで、誰でもそこに落ちてしまうかもしれない」
という普遍的な恐怖と共感を描く筆致は、多くの読者の心を捉えた。

『セルフ・ネグレクト』も、「自分は大丈夫」と言い切れないリアルな転落の描写から、発売当初よりコアな支持層を獲得。後年、ネットミームによって若い世代にも発掘され、同時に“社会の脆さを描いた問題提起作”として評価が高まっていた。

 

作品に宿る“現代の痛み”

榎本氏の作品の魅力は、悲惨な現実をセンセーショナルに煽るのではなく、淡々と、静かに、しかし逃げ場のない重さで描くところにある。
その表現は、時代が令和に移るほどにむしろ説得力を増し、ネット社会・孤立・貧困が複雑に絡む現代の縮図のようでもあった。

「美緒48歳」がミーム化したのは、単なる“ネタ化”ではなく、誰しもが持つ不安と影の部分が鮮烈に表現されていたからだろう。

 

息子からの報告、広がる哀悼の声

Xで訃報を伝えた投稿には、
「作品に救われた」
「あなたの描く孤独が自分を代弁してくれていた」
「美緒を笑ったことを悔いている。今はただ感謝したい」
など、世代を超えた読者からの追悼コメントが相次いでいる。

SNSミームを通じて笑いとして受け取られたページも、作者の死とともに改めて“作品そのものの重さ”が再認識されている。

榎本由美氏は、社会の片隅で声を上げられずにいる人々の“痛み”を拾い上げ、漫画という器に刻みつけた希有な表現者だった。
彼女が描いたのは他人事ではない、私たちのすぐ隣にある現実だった。

残された作品は、これからも多くの読者の胸を刺し、語り継がれていくだろう。
心よりご冥福をお祈りいたします。

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ムーンサルト もも

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広告代理店勤務を経て、Webメディア運営会社での編集・記事制作を経験。現在はフリーランスのWebライターとして活動。ネットミーム愛好家。

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