
クラウドやレンタルサーバーなどのITインフラを提供する、京都発のカゴヤ・ジャパン株式会社。2万を超える顧客を支えながら、中小企業のIT化を後押ししてきた同社は、2025年4月に営業体制を大きく見直した。
その背景には、「お客様のお客様のお客様のために」という企業理念がある。セールス統括 荒内智弘氏に、これまでの取り組みと営業変革の裏側、そして見据える未来について聞いた。
カゴ作りからIT企業へ。技術と変化に向き合ってきた歴史
「弊社はもともと、お茶摘み用のカゴを作る会社でした」。そう話すのは、カゴヤ・ジャパン株式会社セールス統括の荒内智弘氏。同社の社名「カゴヤ」は、その創業ルーツに由来する。
現在では、インターネット関連のクラウド事業やレンタルサーバー事業を展開し、約25年にわたり民間企業や個人事業主向けにITインフラサービスを提供してきた。
自社データセンターを構え、2万以上の顧客にサービスを届ける同社は、価格と品質の両立を追求し続けている。
「安価で使いやすく、それでいてしっかり動く環境を整えたい。そのために、エンジニアやサポート体制をすべて自社で抱えています」
顧客の多くは、IT専任担当者を持たない中小企業だ。だからこそ、技術に詳しくなくても導入できるシステム設計や、困ったときにすぐに相談できる体制が評価されている。
問い合わせに応じて、実際に操作画面を一緒に見ながら案内する「伴走型」のサポート体制も、信頼を得ている理由のひとつだという。
企業のDXを「わかりやすく」支える存在に
「当社はインフラ屋ですから、何をやっているかわかりにくい部分もあります」と荒内氏は語る。しかし、同社の本質は「わかりやすくする技術」にあるという。
たとえば、3日かかっていたWeb環境の構築を、カゴヤに依頼することで1時間に短縮できた顧客もいる。
サーバーの不具合で受注サイトが停止し、機会損失を出していた企業が、同社の提案で安定稼働に切り替えたことで、トラブルを未然に防げるようになった事例もある。
「設定の仕方が分からない、専門用語が多すぎる、といった声が本当に多いのです。私たちは、専門知識がなくてもきちんと機能することに価値があると考えています」
提供しているのは単なるサーバーではなく、「使える環境」そのもの。だからこそ、顧客のITリテラシーや組織体制に応じた提案力が求められる。
「お客様からは、『相談できるITのパートナーがいなかった』と声をいただくことも多々あります。私たちはその最初の相談相手として、IT活用のハードルを下げたいと考えています」
「ザ・モデル」で営業の役割を再定義する
2025年4月、カゴヤ・ジャパンは営業体制の刷新に踏み切った。「ザ・モデル」と呼ばれる分業型の営業スタイルを導入し、従来の属人的な営業体制からの脱却を図ったのだ。
従来は営業担当が商談からアフターフォローまでを一貫して担っていたが、より高度な要望に応え、サービス品質を保つためには分業体制が必要だと判断したからだ。

「商談の発掘からアフターフォローまですべてを一人でこなすのは、もはや非現実的になっていました。お客様の要望は高度化しており、スピードと専門性の両立が不可欠でした」
現在は、営業が最前線を担い、技術、サポート、サービスオペレーションなどの部門が連携して顧客と向き合う体制が整いつつある。
「以前は、自分の担当業務をこなすことが優先されがちでしたが、今は、チームで顧客にどう貢献するかという視点で動けるようになりました」
この変化により、営業現場で拾った課題が社内の他部門に共有され、解決策が議論されるような動きも自然と生まれてきたという。
顧客の先を想像する「お客様のお客様のお客様のために」という理念
同社が掲げる企業理念「お客様のお客様のお客様のために」は、全社の意思決定やサービス設計の根底にある価値観だ。営業変革の取り組みも、その理念に根ざしている。
たとえば、クラウド基盤を必要とする顧客の事業が、さらにその先のユーザーにどのような価値を届けようとしているのか。
カゴヤ・ジャパンでは、その最終的な提供価値に想像力を働かせ、単なる仕様提供にとどまらず、目的に即した構成や提案を心がけている。
「技術の提供自体がゴールではありません。技術はあくまで手段であり、それを使って誰かが恩恵を受けることに意味があるのです。だからこそ、目の前のお客様の奥にいる利用者の存在を意識しています」
このような視点が、単なるコストや性能だけでない価値起点の提案につながっている。システムが安定することで、現場の業務効率が上がる。
UIが分かりやすくなることで、社員のストレスが減る。そうした二次的・三次的な成果まで意識を広げることで、提供する技術が実際に「役立っている」と実感できる機会も増えてきた。
また、社内の評価制度や振り返りの場でも、「お客様のお客様のお客様」を起点にした思考や行動が推奨されているという。
数字だけでは見えない、地道で丁寧な貢献がきちんと称賛される土壌が、組織のなかに育ちつつある。
「売上や契約件数も大事ですが、それだけでは測れない価値があります。チームで共有し、継続的に改善していく。その積み重ねが、お客様と、その先にいる方々への信頼につながると考えています」
全社一丸で「豊かさ」を届ける会社へ
社内では、顧客対応を一部門だけで完結させず、他部門と協力して対応する意識が芽生えてきている。
営業現場から上がってきた顧客の要望が、開発や技術部門に共有されることで、サービス改善のヒントになるケースもあるという。
部門間での情報共有の場が増えており、サポート部門が気づいたUIの使い勝手の課題が、開発チームにフィードバックされることもあるそうだ。
営業が拾った声が提案の幅を広げるきっかけになる場面もあり、それぞれの立場からの気づきが社内に循環しはじめている。
さらに、カゴヤ・ジャパンの変革は、営業体制だけにとどまらない。営業、開発、サポートといった各部門が連携しながら、「ITを使いたい人が、すぐに使える」世界の実現を目指している。
「中小企業でも大企業と同じようなIT体験を、と考えています。難しい設定をしなくても、専門家がいなくても、十分に力を発揮できる環境を整えたい。それがインフラ企業としての使命だと思っているからです」
営業現場で得られたフィードバックは、商品開発やサポートの改善につながっていく。それを循環させるには、社内の全員が「お客様の声」に耳を傾け、業務の枠を超えて動く姿勢が欠かせない。
「5年後には、営業チームも、開発チームも、同じ目線で『社会に役立っている』という実感を持てる組織にしたいと考えています。そして、働いていて楽しいと思える会社にしていきたいですね」
カゴヤ・ジャパンが描く未来は、単にITインフラを支えるだけでなく、見えない価値を届け続けることで、誰もがテクノロジーの恩恵を受けられる社会を実現することである。
◎会社概要
社名 カゴヤ・ジャパン株式会社
設立 1983年9月22日
事業内容
・インターネットデータセンターの運営事業
・レンタルサーバー事業
・クラウドサービス事業
・その他、インターネット関連サービス事業
URL https://www.kagoya.jp/