「わーいで満たされる世界に」をキャッチフレーズに、企業・地方・学生の可能性を広げるハンズオン型のコンサルティング事業を行う株式会社Ymix。さまざまな業種や職種のネットワークを活かし、ブランディングやマーケティングをはじめ、デザインや開発まで多岐にわたり、クライアントと併走してプロジェクトを推進しています。今回はステークホルダーとの向き合い方を通じて、その代表である石塚裕介さんの人間像に迫ります。
企業・地方・学生の可能性を最大限に引き出すハンズオン支援
─まずは、株式会社Ymixの紹介をお願いします。
弊社の事業は大きく分けて4つあります。
まず1つ目が顧問業です。日本自動ドア株式会社さんなど、何社かの企業に顧問として関わっています。
たとえば株式会社コスモス食品さんは、兵庫県三田市に本社を置く創業52年目の食品メーカーです。主たる事業はフリーズドライ食品の製造で、元々は大手食品会社の製品のOEMがメインでしたが、現在は自社ブランドの販売も始めておられます。その自社ブランドの販売促進のための顧問をさせていただいております。
2つ目は、システム開発です。エンジニアとしてだけでなく、戦略やマーケティングを考慮しながら開発を受託できます。新規事業やビジネスの立ち上げもセットで受託して、一気通貫で開発できることが強みです。
3つ目は学生支援です。こちらは準備段階ですが、学生さんの支援を行っていく中で、関わりが生まれた方と一緒に教育関係や地方自治体の支援ビジネスを立ち上げています。
4つ目はメディアの運営です。こちらは「失恋オンライン」(https://shitsuren.online/)というサイトを立ち上げています。世の中の「失恋情報」を集めて、コンテンツ化するというものです。テクロ株式会社の天野央登さんと共同で運営しており、天野さんには記事の制作やライターさんの募集を担当いただいています。
Ymixのステークホルダーとの向き合い方
─それら4つの事業を通じて、ステークホルダーとはどのように関わっておられるのでしょうか?
弊社は、まさにステークホルダーなくしては成り立たない会社です。ステークホルダーの方々と関係を深めながら、一緒に事業を進めていくというのがYmixのこだわりです。
お客様への思い
株式会社コスモス食品 圓井大輔さん
コスモス食品さんは、現在社長のご子息である圓井大輔さんと一緒に仕事をさせていただいております。大輔さんはアクティブなアイデアマンで、面白いと思ったことにはどんどんチャレンジしていく行動力のある方です。私自身も、見たことのない、やったことのないことへのチャレンジが大好きですので、彼の活動に巻き込んでいただけるのはうれしいですね。
テクロ株式会社 天野央登さん
「失恋オンライン」を一緒に運営しているテクロの天野さんは非常に仕事のクオリティが高く、アイデアだけでなく実行に移せるパワーがある方です。初対面は「CEOクラブ」という勉強会で、私がブランディングに関して講演した際に天野さんが参加されていました。「SEOと組み合わせて何か面白いことができないか?」と声をかけていただき、「失恋オンライン」をご一緒することになったのです。人柄も良く、誰とでも仲良くなれる魅力的な方で、いつも刺激や良い影響を与えて下さるので尊敬しています。
取引先への思い
株式会社Alfree
システム等の受託開発業務を請け負う際に、共同開発のパートナーである株式会社Alfreeさんは、弊社にとってのサプライヤーにあたります。さまざまなご提案をいただけるので大変ありがたいです。また、Alfreeさんはオフショアで開発されているので、費用面でもかなり助かっております。この部分に関しては私だけでなく、他のステークホルダーの皆さまにも喜んでいただけるので、私としても感謝しております。
世界一の街をつくりたい
─学生たちとの地方支援ビジネスは、どういったことを考えているのですか?
楽し樹(たのしき)
コロナ後を見据えて、自治体向けの地域活性化の支援ができるメンバーの育成に重点を置いています。具体的には、将来の街づくりプロジェクトに参画してもらえるメンバーを養成する、学生支援のコミュニティ「楽し樹(たのしき)」を2020年4月に発足しました。
「楽し樹」は「世界一の街づくり」を一緒に実現するメンバーを集めるコミュニティです。ここでの「世界一」とは規模ではなく、「医療・福祉・経済」の3つがバランス良く循環できる街であることを指しています。
現在コロナ禍にあって「医療」と「福祉」が優先されがちですが、「医療・福祉・経済」の中のどれか1つが打撃を受けると、必ず他の2つに影響を与えます。3つのバランスをうまく取ることが大切ですが、それが出来ている自治体はそう多くはないのではないでしょうか。
また、「楽し樹」は、世界一の街を創るための学びを得る場所でもあります。学びといっても、知識の学習にとどまらず、また、受け取るだけでなく与えること、心を育むことを大切にしています。
─「楽し樹」が目指す「医療・福祉・経済」とはどのようなものなのでしょうか?
3つのうち、「医療」は有資格者でないと医療行為自体ができないという点で独立しています。資格がないと行えない点は強みであり、弱みでもあると考えています。そこで、私は新たな医療のあり方を社会に問うという意味も込めて「世界一の医療機関」を創りたいと考えています。この「世界一」とは、「世界一、コミュニティに溶け込んだ医療機関」という意味です。
「3分医療」という言葉がありますが、体調不良で病院に行った際、初対面の医師に症状を伝えて3分ほど診察で終わりでは、医師を信頼することは難しい。そこで、私は日常的に医療者と非医療者が交流できる場を作って、あらかじめ医師との信頼関係を築いて病院に行けるような仕組みを作りたいと考えています。
こうした、コミュニティに溶け込める医療機関を作るためには、医療従事者が一方的に技術を提供するのではなく、医療従事者と非医療従事者が協力して医療というサービスを考えることが必要だと思います。私はこれを「真の多職種連携」と呼んでいます。
残りの2つ、「福祉」と「経済」については、私たちの直接的な力だけでは足りませんので、教育機関を作り、人材を育成したいと考えています。この教育機関は、「世界一、受講者に平等であること」を目指しています。
現在は経済状況、居住地、家庭環境などによって、良い教育を受けられるかどうかが左右されてしまいますが、これは間違っていると思います。
また、ここでいう教育というのは、知識の習得ではなく、より本質的な部分で「なぜ自分が教育を自ら進んで受ける必要があるのか?」といった動機づけや、「教育を受けることは楽しい」、と思えるきっかけづくりを重視しています。
完全無料、週7でギブ&テイクし心を育む
─「楽し樹」では具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
現在「楽し樹」は週7日活動しています。月曜と水曜は新規入会メンバーの自己紹介の場にしています。自己紹介といっても、「何をやってきたか」ではなく、「自分はどうありたいか」を話してもらうので、さまざまな質問が飛び交い、1人当たり1時間以上の時間をかけた自己紹介となります。
火曜と木曜は「与える場」の練習です。「楽し樹」には学生さんだけでなく若手の社会人の方も在籍していますが、そのメンバーの方たちに講師として授業をしてもらいます。takeだけでなく、giveすることを実際に感じてもらうのが狙いですが、皆さん意欲的で、3か月先まで講師が決まっています。
金曜は次の2つのことを行います。1つはパネルディスカッションです。専門的な知識をお持ちの方、社会的に実績がある方をお招きし、テーマを設定してパネルディスカッションをして、それに対して学生が質問する形です。
もう1つは懇親会です。Zoom飲みというライトな形でスタートしたのですが、19時から始まり、早くても深夜2時まで(笑)、毎週、熱い思いが語られます。出入り自由で都合のつく時間に参加できるのですが、私は毎回最初から最後まで参加しています。現在「楽し樹」には400人ほどメンバーがいますが、全員のキャリアと名前を把握していますよ。
土日はいわゆる専門家の方にお話をいただくのですが、どちらか一日は医療関係者の方、もう一日はそれ以外のさまざまな業界の方をお招きしています。医学部生が大学で学ぶのは「医学」であって「医療」ではありません。「医療」を学ぶ場はほとんどありませんし、医学部生でなくても「医療」については知っておくべきだと考えています。
「医療」とは、いかにお互いの健康状態を把握できるかであり、そのような「医療」の知識を身に着ける場は大切だと思います。医療以外の専門家として、多岐にわたる分野の教授や教員の方、官公庁に勤務されている方などにお越しいただきます。これは「医療・福祉・経済」の3つのバランスを取るということにも繋がっています。
─平時はもちろん、コロナ禍のような非常時、また災害時などへの備えとしても、大きな意義のあるコミュニティですね。「楽し樹」立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか。
地域社会への思い
「楽し樹」代表 山地翔太さん
「楽し樹」の代表である神戸大学医学部6年生(2020年度現在)の山地翔太さんと、私が主催する「プラスワンパーティ」という、もう1人誰かを連れてこないと参加できないというルールのホームパーティで知り合ったことがきっかけです。
私は以前から街づくりに携わりたくて、その中の要素として医療と福祉を勉強したかったのですが、どうしても1人で学ぶのは難しかったんです。そんなときに医大生の山地さんと出会って、一緒に学びながら成長していこうと「楽し樹」を立ち上げ、1年も経たずにこんなに大きなコミュニティにすることができました。
山地さんは今年が国家試験なので、医師としての活躍が始まるのは3~5年後ですが、そのときは一緒に地方に移住して街づくりをしようと話しています。私の人生は、山地さんと出会って本当に大きく前進しました。
未来への思い
─私たちGURULIは、企業の経営者にも未来をより良くしていく責任があると考えています。石塚さんのYmixは、未来をどう良くしていこうと考えていますか?
2つ考えています。1つは、自分の力だけでは未来は良くすることはできませんので、未来を良くしていこうとする人たちを集め、育てることです。「楽し樹」は現役で活動している社会人の考えを伝え、未来のために繋がる場所です。医学部生に限らず、誰でも入れるコミュニティですので、一緒に未来を良くしていく仲間をもっと大勢増やしたいですね。
もう1つは、私個人の覚悟です。未来を良くしていく上では、自分が犠牲になる覚悟のある人が必要になってきます。
たとえば「楽し樹」は完全無料で運営しています。会員から会費を一切頂いていませんし、講師の方に講師料もお支払いしてません。なぜなら、私たちのコミュニティは、学びが得られるという価値が報酬であって、それが共通の通貨のようなものなのです。
全員が自己犠牲を払える人である必要はないのですが、そういう人がコミュニティに増えていくことで世界は良くなっていくと思います。そのために、私自身が率先して犠牲になる、という覚悟で未来の街づくりに臨んでいます。
─石塚さんやYmixを取り巻くステークホルダーの皆さんが「世界一の街」を見せてくれる日を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
【プロフィール】
石塚 裕介(いしづか ゆうすけ)
株式会社Ymix代表取締役。2009年、大阪大学大学院システム創成専攻修了(ロボット工学、プログラミング)。同年、楽天株式会社入社(戦略・ブランディング・マーケティング)。2015年2月、株式会社Ymix設立、代表取締役就任。
株式会社Ymix
https://www.ymix.co/
〒160-0022東京都新宿区新宿4-3-15 レイフラット新宿B棟3F
2015年2月設立