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コクミンで発覚した「管理薬剤師」の違法兼務とは?背景に深刻な人員不足と売上優先の姿勢か

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コクミン 不適切な薬事業務

ドラッグストア大手「コクミン」で、薬局の責任者である「管理薬剤師」を複数店舗で使い回す違法な運用が発覚した。背景には深刻な薬剤師不足と、法令よりも営業継続を優先する企業の姿勢があった。他人の印鑑を用いた隠蔽工作の実態と今後の影響を解説する。

 

12店舗で「管理薬剤師」の違法兼務が発覚。隠蔽工作も行われた不適切な実態

2026年3月2日、ドラッグストアチェーンを展開する株式会社コクミン(本社:大阪市住之江区、代表取締役社長:絹巻秀展)は、運営する調剤薬局において不適切な薬事業務が行われていたと発表した。

今回の問題の核心は、法律で「一店舗への専従」が義務付けられている「管理薬剤師」を、複数の店舗で兼務させていたという点にある。

同社および報道各社の取材によると、この違法な運用は大阪府、兵庫県、福岡県の3府県、計12店舗で行われていたようだ。昨年末に寄せられた内部通報をきっかけに事態が判明し、同社は現在、関係自治体や保健所などの当局へ報告を行い、指導を受けている。

驚くべきは、その隠蔽の手口だ。派遣された管理薬剤師が、本来その店舗にいるはずの別の管理薬剤師の印鑑を使い、調剤書類などを作成していた事例が確認されている。外部からのチェックを逃れるために、意図的に「他人の名前」を借りて業務を継続していた実態が浮き彫りになった。

なぜ「兼務」はダメなのか?消費者が知っておくべき管理薬剤師の役割

 

一般の消費者にとって、「薬剤師が別の店を手伝いに行くこと」がなぜこれほど大きなニュースになるのか、ピンとこないかもしれない。しかし、これには日本の薬局運営を支える安全上の重要なルールが関わっている。

管理薬剤師とは薬局の「安全の要」

調剤薬局には、医薬品医療機器法(薬機法)に基づき、各店舗に1名の管理薬剤師を置くことが義務付けられている。管理薬剤師は、単に薬を出すだけでなく、以下の重大な責任を負っている。

  1. 医薬品の適切な管理: 毒薬や麻薬、向精神薬などの厳格な管理。
  2. 従業員の監督: 処方ミスがないよう、他の薬剤師やスタッフを指導・監督する。
  3. 患者の健康被害防止: 薬の飲み合わせや副作用のチェックなど、その薬局全体の安全責任。

「一店舗専従」が義務付けられている理由

管理薬剤師が常にその店舗にいて、現場の状況を把握していなければ、万が一の事態に対応できない。そのため法律では、原則として「他の場所で働いてはならない(専従義務)」と定めている。

今回のコクミンのケースでは、体調不良などで管理薬剤師が欠員し、本来であれば閉局(休業)すべき状況であったにもかかわらず、近隣店舗の責任者を「使い回す」ことで無理やり営業を続けていた。これは、患者の安全を担保するための法的ルールを根底から覆す行為である。

「法令違反は認識していた」エリアマネジャーが下した売上優先の指示

 

今回の不祥事は、現場の独断ではなく、組織的な指示があったことも判明している。

報道によると、複数の店舗を統括するエリアマネジャー2人が、直接現場へ派遣の指示を出していたとのこと。この2人は社内の調査に対し、法令違反であることを認識していたと認めた上で、「通常通りに開店させることを優先した」という趣旨の説明をしているようだ。

欠員が出た際、代わりの薬剤師が見つからなければ、その店舗は法律上、調剤業務を行うことができない。しかし、店舗を閉めればその日の売上は消滅し、近隣の病院から処方箋を持ってくる患者を逃すことになる。エリアマネジャーは、医療機関としての安全性よりも、店舗の「稼働率」や「利益」を優先した形だ。

背景にあるのは「薬局バブル」と深刻な薬剤師不足

 

今回の事件は、コクミン一社の問題に留まらず、ドラッグストア業界全体が抱える構造的な問題を浮き彫りにしている。

爆発的に増え続ける薬局数

厚生労働省の統計によると、2023年度の全国の薬局数は約6万3千施設に達しており、これはコンビニエンスストアの店舗数を上回る規模だ。過去20年間で約2割も増加している。

調剤医療費の急増

高齢化社会の進展に伴い、調剤にかかる医療費も膨れ上がっている。厚労省のデータによれば、2005年度に4.6兆円だった調剤医療費は、2024年度には8.4兆円に達する見通しだ。

年度調剤医療費の推移薬局数の推移
2005年度約4.6兆円約5.0万施設
2023年度約8.2兆円約6.3万施設
2024年度(推計)約8.4兆円
厚生労働省「調剤医療費動向調査」等をもとに作成

ドラッグストア各社は、この巨大な市場を狙って「調剤併設型」の店舗を積極的に出店してきた。しかし、店舗の急増に対して薬剤師の供給が追いつかず、現場は常に人手不足の状態にある。

調剤報酬の返還へ。今後の消費者への影響と再発防止策

 

コクミンは、不適切な体制で業務を行っていた期間の「調剤報酬」について、返還を含めて適切に対応するとしている。

調剤報酬とは、薬局が提供した技術料や管理料に対して、国や健康保険組合、そして患者自身が支払うお金のことだ。管理体制が法律に抵触している場合、その報酬を受け取る権利はない。同社は現在、内部通報から過去1年間にさかのぼって兼務の事実を確認済みだが、今後は過去3年間をめどに対象を広げて調査を継続する方針だ。

コクミンが発表した再発防止策

同社は3月2日の公式発表で、以下の対策を徹底すると表明した。

  • 社内教育の徹底:全社員に対し、薬事関連法規の遵守を再教育する。
  • 指針・手順書の改定:職務権限を見直し、不正が起こらない仕組みを制定する。
  • 閉局基準の明確化:薬剤師が不在の場合、無理に営業を続けず「閉局」する判断基準を現場に徹底させる。

一般消費者が気をつけるべきことは?

今回、薬が間違って処方されたといった直接的な健康被害の報告は現時点ではない。しかし、責任者が不在の状態で調剤が行われていた事実は、処方監査の質が低下していた可能性を否定できない。

もし、過去1〜3年以内に大阪・兵庫・福岡のコクミン調剤薬局を利用し、薬の内容や説明に不安を感じたことがある場合は、同社の問い合わせ窓口や、お薬手帳を持参して他の信頼できる「かかりつけ薬局」の薬剤師に相談することも検討すべきだろう。

結びにかえて:医療機関としての自覚が問われている

 

街のドラッグストアは、深夜まで営業していたり、ポイントがついたりと、消費者にとって非常に便利な存在だ。しかし、調剤薬局という看板を掲げる以上、そこは単なる小売店ではなく「医療提供施設」でなければならない。

今回の「管理薬剤師の使い回し」は、人手不足を言い訳にした、医療の安全に対する「甘え」が生んだ不祥事といえる。売上を優先して法律を軽視する企業体質が、本当に患者の命を預かる資格があるのか。コクミンには、徹底した膿出しと、透明性の高い再発防止が求められている。

【参照】当社における不適切な薬事業務に関わるお知らせとお詫び(コクミン)

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ライター:

金融機関と不動産会社での勤務経験を経て2014年より金融関係や不動産関係を中心としたフリーライターとして活動。金融関係をはじめ不動産やビジネスのジャンルを中心に執筆しています。

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