
東京・歌舞伎町のホストクラブに対し、客の恋愛感情を悪用する「色恋営業」を理由とした全国初の行政処分が下された。マッチングアプリで身分を隠して近づき、巧妙な手口で高額な飲食代を支払わせていた実態とは。一般消費者も知っておくべき最新の規制と事件の全貌を解説する。
全国初!改正風営法に基づく「色恋営業」への行政処分
東京都公安委員会は2026年2月20日までに、東京・歌舞伎町のホストクラブ「AXEL by ACQUA」を含む系列2店舗に対し、風俗営業法(風営法)に基づく行政処分を出した。処分内容は営業の是正を求める「指示処分」であり、発令は2月18日付となっている。
今回の処分が大きな注目を集めている理由は、2025年6月に施行された「改正風営法」において、いわゆる「色恋営業」が明確に規制対象となって以降、全国で初めての適用事例となったためである。
警視庁保安課の発表によると、当該店舗では客の恋愛感情を不当に利用し、高額な料金を支払わせる不適切な営業が行われていた。長年、業界の「グレーゾーン」とされてきた手法に対し、公的機関が厳格な「NO」を突きつけた形だ。
巧妙な手口:マッチングアプリで「上場企業社員」を詐称
この事件に関連し、警視庁は2月20日までに、新宿区のホスト・竹岡拓人容疑者(27)を風営法違反(禁止区域での客引き等)の疑いで再逮捕した。
竹岡容疑者の手口は極めて計画的で、悪質なものだった。
報道各社の情報をまとめると、以下のような勧誘実態が浮かび上がる。
- 身分の偽装: マッチングアプリ上では「上場企業のマーケティング担当」と偽り、ホストであることを完全に隠して女性に接触。
- 信頼関係の構築: 何度もデートを重ね、相手に恋愛感情を抱かせる。
- 後出しの告白: 親密になった後で「実は将来の夢のために副業でホストをしている」と明かし、店へ誘い出す。
- 心理的揺さぶり: 女性が来店を渋ると「来られないなら別れる」といった趣旨の発言をし、関係解消を盾に動揺させて無理やり来店させる。
竹岡容疑者は、2025年11月にも同様の手口で20代の女性客を勧誘した疑いが持たれている。ある女性に対しては、わずか3回の来店で約250万円もの高額料金を使わせていたという。
スマホに残された「400人の資産リスト」と5900万円の被害
警視庁が竹岡容疑者のスマートフォンを解析したところ、驚くべき実態が判明した。端末内には、マッチングアプリなどで知り合った女性約400人分の詳細なデータが保存されていたのである。
このリストには、女性たちの氏名や勤務先だけでなく、「資産状況」や「年収」までもが詳細に記されていた。竹岡容疑者は、相手の支払い能力を事前に把握した上で、どの程度の金額を使わせるかという「攻略計画」をメモとして残していたという。
警視庁によると、竹岡容疑者に関する被害相談はすでに数十人に上っている。
- 推定総被害額: 約5,900万円
- 支払い手段: 貯金の引き出し、および消費者金融での借金強要
恋愛感情を逆手に取り、借金までさせて高額な飲食代をむしり取る手法は、改正風営法が厳しく禁じている「悪質ホスト」の典型例と言える。なお、調べに対し竹岡容疑者は現在、黙秘を続けている。
一般消費者が知っておくべき「改正風営法」のポイント
これまでホストクラブにおけるトラブルは、あくまで「個人間の恋愛のもつれ」として処理されるケースが少なくなかった。しかし、今回の全国初となる行政処分は、業界全体への強い警告となっている。
2025年6月に施行された改正風営法では、以下の行為が厳格に禁止されている。
- 恋愛感情の悪用: 相手が自分に好意を持っていることに乗じて、不当に高額な支払いを要求すること。
- 売春等の要求: 飲食代(売掛金)の返済のために、売春や違法な仕事を強要すること。
- 身分を隠した勧誘: ホストであることを隠してマッチングアプリ等で近づき、店に誘うこと。
警視庁保安課は、今回の店舗への処分を通じて、組織的な「色恋営業」の根絶を目指す方針だ。
今後の展望
マッチングアプリは今や一般的な出会いのツールだが、そこには職業を偽った悪質な勧誘が紛れ込んでいる可能性がある。「将来の夢のため」「ノルマが厳しいから助けてほしい」といった言葉で金銭的な負担を求められた場合、それは健全な恋愛ではなく、組織的な「色恋営業」である疑いが強い。
少しでも「おかしい」と感じたり、法外な請求を受けたりした場合は、一人で悩まずに以下の窓口へ相談することを強く勧める。
- 警察相談専用電話:#9110
- 消費者ホットライン:188
今回の全国初の行政処分は、歌舞伎町をはじめとする全国の歓楽街にとって大きな転換点となるかもしれない。警察当局は今後も、悪質な店舗やホストに対して厳格な取り締まりを継続していくものと見られる。



