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プルデンシャル生命31億円詐取の全貌 「プルゴリ」たちはなぜ顧客を食い物にしたか?

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プルデンシャル生命

「一生涯のパートナー」。そんな甘美な響きで顧客の懐に入り込み、信頼を築き上げてきた外資系生保の雄、プルデンシャル生命保険。だが、その青いロゴマークの裏側で進行していたのは、社員ら100人以上が関与する組織的な「カネの暴走」だった。

朝日新聞のスクープによって明るみに出た、被害総額31億円超という前代未聞の不祥事。最強の個人事業主集団と崇められた「プルゴリ」たちの仮面が剥がれ落ちたとき、そこに見えたのは欲望に塗れたクズの姿だった。

 

社長引責 名門を襲った「1月16日」の衝撃

金融業界に激震が走った。同時に「この会社ならいかにも起こしそうな事件」と感じた人も多いだろう。1月16日、朝日新聞が報じたニュースは、エリート集団としてのプルデンシャル生命のブランドを根底から覆すものだった。

同紙によれば、社内調査の結果、社員や元社員ら計106人が、顧客約500人に対して金銭を騙し取ったり、借金を返済しなかったりする不適切な行為に手を染めていたことが発覚。顧客から受け取った金銭の総額は、実に約31億4千万円に上るという。

事態を重く見た間原寛社長兼最高経営責任者(CEO)は、2月1日付での引責辞任を表明。記者会見で「多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げます」と頭を下げたが、失われた信用はあまりにも大きい。

 

その手口は、信頼を逆手に取った卑劣なものだ。熊本支社の20代元社員は、「プルデンシャルの社員しか買えない株があり、絶対利益が出る」と囁き、3人から約720万円を詐取。東京・汐留支社の30代元社員に至っては、架空の投資話に加え、同社の正規の申込書類まで悪用し、4人から約5300万円を吸い上げていた。

さらに、業務とは無関係な「個人的な投資話」や「借金」の名目で、498人の顧客から約30億8千万円を集め、そのうち約23億円が未だに返金されていないという泥沼の状況だ。

ライフプランナーと呼ばれる男たちの手練手管

 

なぜ、社会的地位もある富裕層や経営者たちが、コロリと騙されたのか。その背景には、プルデンシャル生命特有の「ライフプランナー(LP)」と呼ばれる営業マンたちの、巧みすぎる人心掌握術がある。

都内で建設会社を経営する50代男性は、自身もプルデンシャルのLPと長年の付き合いがある。今回の事件について、「騙される気持ちもわからなくはない」と複雑な表情で語った。

「彼らは単なる保険の営業マンではないなー。定期的に打ち合わせや会食をしますが、保険の話なんてほとんどしない。こちらの会社の経営課題や、個人的な悩みを巧みに聞き出し、『それなら良い税理士がいます』『販路拡大につなげるキーマンを紹介します』と、次々に解決策を持ってきてくれる。

さながらコンシェルジュであり、ビジネスパートナーでもある。そうやって恩を売られ、信頼関係ができたタイミングで『実はすごく良い話があるんですが、社長だけに……』と切り出されたら、まぁ、気持ちよく契約したくなるというか、この人が持ってくる話だったら信用しようと、疑う余地なんてありませんよ」

徹底した「御用聞き」と、圧倒的な「ギブ(与えること)」の精神。それが最強の営業手法であると同時に、詐欺への入り口を開く鍵となってしまった。

 

「2年目で辞めました」元社員が語るフルコミッションの地獄

だが、彼らがそこまでして顧客に食らいつく理由は、単なるホスピタリティではない。背後にあるのは、異常なまでの成果主義と、生存へのプレッシャーだ。かつて第二新卒時期に同社に入社し、わずか2年で退職した元ライフプランナー(20代男性)が、その過酷な実態を証言する。

「入社1年目こそ『初期補給金』という名の固定給が出ますが、それはあくまで助走期間。基本は完全歩合のフルコミッションです。会社は机と電話と名刺はくれますが、顧客リストなんてくれません。

最初にやるのは、親族、大学の友人、元同僚……自分のスマホに入っている知人に片っ端から電話をかけ、頭を下げて保険に入ってもらうこと。でも、そんな『イージーな層』は数ヶ月で枯渇します。

本当の地獄はそこからです。異業種交流会や経営者の集まりに顔を出し、名刺を配りまくって、自分という人間を売り込み、人脈を一から築いていく。契約が取れなければ給料はゼロどころか、活動費でマイナスになる。自分にはあまりに過酷な環境で、精神を病む前に2年目で辞めました」

今回不正に手を染めた中には、この競争に敗れかけ、生活費や遊興費のために顧客の金に手を出した者もいれば、逆にトップ層の生活水準を維持するために魔が差した者もいるだろう。

 

歪んだエリート意識と「プルゴリ」の正体

業界内では、彼らは畏怖と揶揄を込めて「プルゴリ」と呼ばれる。分厚い胸板を高級なオーダースーツで包み、日焼けした肌に白い歯を光らせる。彼らが目指すのは、業界最高峰の称号「MDRT(Million Dollar Round Table)」や、そのさらに上の「COT」「TOT」だ。

これらは単なる称号ではない。MDRT会員になることは、世界の生命保険・金融サービス専門職の上位数パーセントに入った証明であり、COTはその3倍、TOTに至っては実に6倍の成績が必要とされる超エリートの証だ。達成の暁には、

相応の「ご褒美」が待っている。年に一度、世界各地のリゾート地で開催されるアワード(年次総会)には、家族連れで招待されるのが通例だ。ハワイの高級ホテルで開かれるパーティーで、日焼けした肌にタキシードをまとい、妻子と共に成功の美酒に酔いしれる。それこそが彼らのステータスであり、ゴールなのだ。

TOTクラスになれば年収は億を超える。彼らは「個人事業主」であり、一国一城の主だ。会社への出社義務もなく、誰にいつ会おうが自由。その代わり、すべての責任は自分にある。この「自由」と「高収入」のシステムは、必然的にある種の人種を引き寄せる。「他人の人生を守りたい」という高潔な精神を持つ者も確かにいる。だが、それ以上に多いのが、「とにかく金が好き」「自分の欲望に忠実」「他人よりも良い暮らしがしたい」という、極めて動物的な嗅覚とエゴイズムを持った人間たちだ。プルデンシャルと言えば、都内の高級キャバクラ店や地方のコンパニオン遊びの常連たちとも言える。

 

年収数千万円の世界を知ってしまった彼らにとって、一般人の金銭感覚は通用しない。「俺たちは特別な存在だ」という選民意識と、「もっと稼がなければ」という渇望。その狭間でモラルが麻痺し、顧客の資産を「自分の財布」と錯覚した瞬間、エリートは詐欺師へと堕ちた。

31億円という巨額の被害は、会社というタガが外れた「個人商店」たちの暴走の結果である。社長の首一つで、この染み付いた「金への執着」という企業風土が浄化されるとは、到底思えない。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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