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「置き配標準化」で宅配に激変 ヤマト運輸が抱える人手不足と盗難リスクの現実

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置き配標準化のリスク
DALL-Eで作成

国土交通省は、宅配便の「置き配」を標準的な受け取り方法とする方向で制度の見直しに着手した。年間約5億個にも上る再配達の削減と、深刻化するドライバー不足への対策として注目を集めるが、現場からは「盗難リスク」や「一律導入による負担の増加」など、懸念の声も漏れる。ヤマト運輸をはじめとする宅配業者の対応とともに、置き配をめぐる課題と可能性を検証する。

再配達5億個超の現実、政府が制度改革に本腰

国土交通省は、宅配便の受け取り方法に「置き配」を標準サービスとして位置づける方向で制度の見直しに着手した。再配達の削減と人手不足の緩和が目的とされるが、物流業界の現場では賛否両論が交錯している。

背景にあるのは、依然として高止まりする再配達率と、慢性的な宅配ドライバー不足である。2024年4月時点の再配達率は8.4%。国が掲げる目標の6%を大きく上回り、年間で約5億個が再配達されているという。この数は、業界全体の疲弊を端的に物語っている。

 

ヤマト運輸も「置き配」拡充、EC対応と選択肢の多様化へ

こうした課題に対応するため、宅配最大手のヤマト運輸では既に多様な受け取り手段の整備を進めている。会員制サービス「クロネコメンバーズ」では、営業所・コンビニ・宅配ロッカー「PUDOステーション」など、全国5万カ所以上の自宅外受け取り拠点を展開しており、EC事業者向けの「EAZY」や、2024年6月に追加された個人向けの「宅急便」置き配サービスなどもその一環である。

同社によれば、「置き配」により一度で荷物を受け取れる確率が上がり、再配達率の削減にもつながっているという。実際、2024年7〜9月期の不在率は9.1%で、コロナ禍の同時期(10.1%)を下回った。

とはいえ、ヤマト運輸は国の“置き配標準化”方針についての見解を問われると、「現時点での回答は差し控える」としており、制度改正の行方を慎重に見守っている様子がうかがえる。

 

「スイッチ2」置き配NG報道も リスクに配慮した対応が必要

一方、置き配には盗難リスクという新たな問題も浮上している。近時、人気ゲーム機「Nintendo Switch2」の配送に関して、一部メディアが「置き配禁止」と報じた件が注目を集めた。

ヤマト運輸は個別の案件への言及を避けつつも、「荷物の安全が確保できない場合」「建物の管理規則に反する場合」など、置き配を行わないケースの判断基準を明示している。つまり、置き配はあくまで受取方法の“選択肢の一つ”であり、すべての荷物が自動的に玄関前に置かれるわけではない。

現場の過重労働という“見えないリスク”

物流現場では、物理的な荷物量と比例して人手が必要となるが、その確保はますます困難となっている。2024年の宅配便取扱個数は年間約50億個に達した。ドライバーの平均年齢は年々上昇し、若年層の新規参入も限定的だ。

とくに都市部では再配達や時間指定によるスケジュールの過密化が深刻で、1日あたりの訪問件数が150件を超えるケースもある。「一度で荷物を届けられない」という事実が、ドライバーの精神的・肉体的負担をさらに増幅させている。

 

改善策と、希望をつなぐ物流の未来

こうした状況の改善には、以下のような施策が求められる。

  • テクノロジーの活用:AIによる配送ルート最適化や、スマートロック・宅配ボックスの普及促進。
  • 労働環境の改善:ドライバーの業務負担の平準化や、荷物の軽量化・集約化などによる効率化。
  • 受け取り側の意識改革:消費者に対して「再配達ゼロ運動」などの啓発を進め、配送業者との“協働関係”を築く。

置き配の標準化は、決して一律の強制ではなく、選択肢の拡大に過ぎない。だがそれは、物流が持続可能な社会インフラとして生まれ変わるための第一歩でもある。

宅配が「当たり前のサービス」であるために――その裏側で誰かが過剰な負担を強いられることのない未来を目指し、消費者・事業者・行政がそれぞれの立場で向き合う時がきている。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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