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PB黒字化、見通しは2025~26年度に後退 財政健全化と国民の不信感にどう向き合うか

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プライマリーバランス黒字化
DALL-Eで作成

政府は、財政健全化の象徴とされるプライマリーバランス(PB)黒字化の目標年度を、従来の「2025年度」から「2025~26年度」へと後ろ倒しする方向で最終調整に入った。与党との協議を経て、6月に取りまとめる経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に盛り込む見通しである。

プライマリーバランスとは何か

プライマリーバランス(基礎的財政収支)とは、国や地方自治体が税収や社会保険料などの「借金以外の収入」で、社会保障費や公共事業などの「政策経費」をどれだけ賄えているかを示す指標である。収支が黒字であれば、借金に依存せずに行政サービスが提供できていることを意味し、財政の持続可能性が高いと評価される。一方、赤字であれば、不足分を国債発行などの借入で補っている状態となり、将来世代への負担が増す。

 

現在のPBは「赤字」 政府見通しで約4.5兆円

内閣府が2025年1月に公表した中長期試算によれば、2025年度のPBは約4.5兆円の赤字となる見通しだ。これは、2024年度の補正予算の執行が翌年にずれ込むことや、経済対策に伴う追加歳出、さらには所得税の基礎控除引き上げなどの税制改正による税収減などが影響している。

この試算では、経済成長による税収増が確実に実現すれば、2026年度には約2.2兆円の黒字転換が見込まれている。ただし、これはあくまで前提条件に依存しており、不透明な世界経済や物価動向、今後の政策対応によっては下振れのリスクも否定できない。

 

黒字化の意義と国民への影響

プライマリーバランスの黒字化は、日本の財政運営における信頼の回復に直結する。主なメリットは以下の通りである。

  • 国債依存の抑制:将来世代への財政負担の軽減
  • 金利上昇リスクの回避:市場からの信用維持と財政運営の柔軟性確保
  • 社会保障制度の安定運営:年金や医療制度の持続可能性を高める
  • 国際的信用の向上:円の信認強化と外国投資の促進

こうした財政基盤の安定は、将来の税負担や制度改悪への不安を抑える効果がある。

政治不信と将来不安の背景

しかし、国の財政目標が繰り返し先送りされてきた経緯から、国民の間には「政府の本気度」に対する根強い不信感が残る。実際、増税や保険料負担は着実に重くなる一方で、財政の透明性や公平性に疑念を抱く声は少なくない。若年層を中心に「今の負担が将来報われるのか」という疑問が社会全体に広がっている。

 

国民の信頼を得るための説明と取り組み

こうした不信感を和らげ、PB黒字化に国民の理解を得るためには、以下のような説明と政策的対応が求められる。

① 可視化と透明性の徹底

  • 目標設定の前提条件を明示し、政策効果を可視化すること
  • 年度ごとのPB収支の進捗を定期的に報告し、国民と情報を共有すること
  • 歳出の内容を詳細に開示し、「何に使われているか」を説明すること

② 公平性の丁寧な説明

  • 世代間・所得層間の負担と受益のバランスを可視化し、特定の層への過度な負担を避ける設計
  • 社会保障制度の改革と財政目標が矛盾しないよう、連動した説明を行うこと

③ 「痛み」だけでなく「展望」の提示

  • 財政健全化の果実として、教育・子育て支援の充実や社会保障の安定を具体的に提示
  • 行政の無駄削減、デジタル化推進など生活の質向上と両立する改革を明示

④ 国民参加型の意思決定へ

  • 骨太の方針など重要政策に対するパブリックコメント制度の活用
  • 財政や税制度について学ぶ機会の拡充、学校教育での主権者教育の強化

政府がこれらを怠れば、「数字合わせの財政運営」という印象が拭えず、逆に信頼を損なう結果を招く。信頼の基礎は、数値ではなく説明と共感にある。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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