
大阪・関西万博の目玉のひとつとして注目されていた「空飛ぶクルマ」が、開幕翌日の4月14日午前11時ごろ、会場内で初めて飛行を披露した。前日の13日は悪天候のため、予定されていたデモフライトが見送られており、万博開幕後としては今回が初めての飛行となった。
ミャクミャクカラーの機体が上昇
今回飛行したのは、アメリカで商用運航を開始しているLift Aircraft(リフト社)の「Hexa(ヘクサ)」と呼ばれる機体で、機体は大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のカラーリングが施されている。万博のコンセプトである「未来社会の実験場」を象徴する存在として、特別な注目を集めている。
ただし、当初の構想では、来場者を実際に乗せ、会場内外のポートを結ぶ日本初の商用運航が目指されていたものの、現時点では安全面や運航体制の課題から、デモ飛行の実施にとどまっている。リフト社は今後も日本国内での実用化に向けた取り組みを続ける方針で、万博期間中は週末を中心にデモフライトが実施される予定だ。
SNSには冷静な受け止め「社会への約束は守ったが…」
今回のデモフライトについては、SNS上でもさまざまな声が寄せられている。自動車ジャーナリストの桃田健史氏は、自身のX(旧Twitter)で「すでに日本各地で飛行実績がある機体であり、万博として社会に対しての約束は(一応)守ったということだけ」と冷静に分析。大阪万博の公式サイトに記載されている「会場内外をつなぐ飛行」などの大きな構想が、実際には浮遊して見せる程度のデモにとどまっている現状を指摘した。
さらに桃田氏は、「運航予定機体は4機種あるが、うち2つは完全にデモ参加を断念。残る2機種も限定的なデモ実施にとどまっており、事業計画としては大幅に後退している」と厳しい見方を示した。
一方で根強い違和感の声も
SNS上では、「空飛ぶクルマ」という表現に対する違和感を示す声も目立った。「あれはただのドローンに人が乗っているだけ」「山奥や特殊な場所での活用は有効だが、市街地の上空を多数飛ぶ未来は想像しにくい」といった実用性への疑問や、「昔のアニメに出てきたタイヤのない宙に浮くエアカーとはイメージが違いすぎる」との感想も見られた。
一方で、「それでも実際に飛ぶところを見てみたい」という好奇心の声もあり、技術進化への期待と現実とのギャップが、改めて浮き彫りとなった。
万博の未来実験は道半ば
大阪・関西万博では、未来の移動手段として注目された「空飛ぶクルマ」だが、実現への道のりはまだ遠い。商用運航には、安全性の確保や社会受容性、運航インフラの整備といった多くの課題が残されている。今後、週末のデモフライトを重ねるなかで、来場者がその可能性をどう評価するのかが注目される。