
かつて若者のファッションシーンを席巻した「フォーエバー21」が再び経営の危機に直面している。米国事業を対象とした2度目の破産申請の背景には、競争激化や消費者の購買行動の変化がある。人気ブランドの行く末とファストファッション業界の現状について詳しく解説する。
フォーエバー21、米国事業で2度目の破産申請
米ファストファッション大手「フォーエバー21」の運営会社は、2025年3月16日に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。これは、2019年の破産申請に続く2度目の経営破綻である。
破産申請の対象は米国事業に限定されており、米国内にある約350店舗やオンライン販売が今後の再建に向けた整理プロセスに入る。一方、日本を含む海外事業は申請の対象外で、営業を継続する方針だと同社は発表した。
かつては世界的な人気ブランド
フォーエバー21は1984年に米ロサンゼルスで創業。トレンドを意識した低価格のファッションアイテムが若者を中心に人気を集め、最盛期には世界800店舗を展開。約4万3000人の従業員を抱え、年間売上高は40億ドル(約6000億円)を超えていた。
日本でも若者を中心に人気を博し、2019年の経営破綻を機に日本市場から撤退したが、2023年には再上陸を果たし、ブランド復活の兆しが見られていた。
破産申請の背景 TemuやSHEINとの競争激化
今回の破産申請に至った背景には、近年急成長している中国発の格安通販サイト「Temu」や「SHEIN」の影響が大きい。これらのプラットフォームは、最新トレンドのファッションアイテムを低価格かつ迅速に提供し、特にZ世代を中心に人気を集めている。
フォーエバー21のCFO(最高財務責任者)であるブラッド・セル氏は「小口輸入品に対する関税免除措置(デミニミス・ルール)を利用した中国系ファストファッションの台頭により、持続可能な道筋を見つけることができなかった」と述べ、競争環境の厳しさを強調している。
コスト増加と消費行動の変化
フォーエバー21の業績悪化には、競争の激化だけでなく、経済環境の変化も影響している。米国ではインフレの影響で生産コストが上昇し、消費者の購買意欲が低下。さらに、Z世代を中心とする消費者の購買行動はオンラインシフトが進み、実店舗中心のビジネスモデルは苦境に立たされていた。
2023年に米国小売業界の売上高が前年比2.4%減となったこともあり(米国商務省調べ)、消費動向の変化がファッション業界全体に打撃を与えている。
今後の展望 米国事業終了の可能性も
フォーエバー21は破産申請後も米国での事業を継続しながら、一部または全事業の売却を模索していくと発表している。裁判所の監督下で資産売却や事業整理を行い、事業縮小が避けられない見通しだ。
一方、海外事業は引き続き営業を続ける方針だ。日本では2023年の再上陸以来、徐々に顧客を取り戻しつつある。
消費者への影響と注意点
米国事業の破産申請を受け、フォーエバー21の米国店舗では在庫一掃セールが行われる可能性が高い。米国内では、フォーエバー21の商品が格安で手に入る機会が増えるかもしれない。
一方、日本を含む海外事業は引き続き営業を続けるため、国内消費者が影響を受ける心配は少ないと見られる。
ファストファッション業界の今後
フォーエバー21の2度目の破産申請は、ファストファッション業界全体の課題を浮き彫りにしている。急速なトレンドの移り変わり、環境負荷への批判、サステナブルなファッションの台頭など、消費者の意識や市場環境の変化に対応できなければ、生き残るのは難しい時代になっている。
競争激化が進む中、ファストファッションブランドが持続可能なビジネスモデルを確立できるかどうかが今後の焦点となりそうだ。
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