
郵便物の配達員が業務中に飲酒し、酩酊状態で車を運転していた。横浜市戸塚区の郵便局で昨年5月に発生したこの事件は、利用者の安全に直結する問題であり、日本郵便の管理体制の甘さが露呈した。さらに、全国の郵便局で点呼未実施が相次いで見つかり、再発防止策の重要性が浮き彫りになっている。
事件の概要
昨年5月、横浜市戸塚区にある戸塚郵便局で、配達員が飲酒した状態で車を運転し、郵便物の配達業務を行っていたことが判明した。日本郵便によると、当該配達員は前夜から午前2時頃まで飲酒し、翌朝9時20分頃に出勤。点呼は行われないまま、午前9時50分頃に軽四輪で配達に出発した。
この配達員が午後7時半頃に局へ戻った際、アルコールのにおいに気づいた担当者が検査を行ったところ、3回の測定で呼気1リットルあたり0.40〜0.63ミリグラムのアルコールが検出された。道路交通法では0.15ミリグラム以上が「酒気帯び」とされ、同社は「酩酊状態」だったと判断した。幸い事故やけが人はなかったが、安全管理のずさんさが問題視されている。
日本郵便の点呼不備
この事件が発覚した後、日本郵便は昨年5月末に全国の郵便局に対し、点呼の徹底を求める通知を出した。点呼業務は貨物自動車運送事業法で義務付けられており、出勤時に乗務員の健康状態や酒気帯びの有無を確認する重要な安全管理の一環である。
しかし、その後の調査で、近畿地方の郵便局140局において点呼未実施が常態化していたことが判明した。特に土日や祝日に点呼が行われていない事例が多く、日本郵便は「出勤者が限られるため、管理が手薄になっていた」と説明している。
飲酒運転と安全管理の問題点
日本郵便は、横浜の事案を発表せずに内部対応に留めていた。だが、その後も点呼未実施の問題が相次ぎ、国土交通省が同社への監査と、貨物自動車運送事業法違反に基づく行政処分の検討に入った。
飲酒運転は道路交通法で厳しく罰せられており、悪質な事例では免許取消や刑事罰が科される可能性がある。業務中の飲酒運転は、一般ドライバーだけでなく、配達物を待つ顧客や歩行者にも危険を及ぼす行為であり、社会的な非難が集まっている。
今後の対応と影響
国土交通省は日本郵便に対し、点呼業務の不備に関する詳細な報告を求める方針を示している。監査結果次第では、日本郵便への行政処分が下される可能性もある。
安全運転の徹底は、企業としての信頼回復に不可欠である。特に、公共性の高い郵便事業を担う同社にとって、安全意識の徹底と組織体制の見直しは避けられない課題となっている。
まとめ
今回の事件は、郵便物を届けるという社会的責任を負う企業において、重大な管理体制の不備が浮き彫りになった事例だ。再発防止に向けた具体的な対策の実行が求められるとともに、日本郵便には利用者の信頼を取り戻すための真摯な姿勢が不可欠である。