
無許可でリフォーム工事を行ったとして「スーパーサラリーマン清水」と名乗る清水謙行容疑者(49)らが逮捕された。捜査関係者によると、容疑者らは行政指導を受けるたびに新たな会社を設立し、事業を継続していたという。業務停止命令を巧妙に回避しながら、5年間で100億円を売り上げたその実態とは——。
派手なSNSの裏で拡大した違法リフォーム事業
東京・渋谷区の無職、清水謙行容疑者(49)と、さいたま市の自営業、石井匠容疑者(45)ら4人は、2023年、国や自治体の許可を受けずに500万円以上のリフォーム工事を行ったとして建設業法違反の疑いで逮捕された。12日には検察庁に送致され、警視庁はさらなる余罪を追及している。
清水容疑者はSNS上で「スーパーサラリーマン清水」として知られ、高級ブランド品や高級車、札束を誇示する写真を頻繁に投稿していた。フォロワーを増やし、自身のカリスマ性を打ち出すことで、多くの人を惹きつけていた。しかし、その裏では、違法リフォーム業者を束ねた「清水会」という組織が動いていた。
被害者の証言「最初は信頼していたが…」
違法リフォームの被害者のひとりである50代の男性は、「初めは信頼できる業者だと思った」と語る。営業担当者の説明は丁寧で、契約の際も書類がしっかりしているように見えた。しかし、工事が始まると、次々と追加料金が発生し、当初の見積もりよりもはるかに高額になったという。「途中でおかしいと思ったが、すでに支払った分を無駄にしたくないという心理が働き、断ることができなかった」と振り返る。
こうした手口は典型的なリフォーム詐欺の特徴のひとつだ。消費者に「途中でやめると損をする」と思わせることで、追加費用を支払わせる手法である。
繰り返される行政指導と巧妙な会社の乗り換え
捜査関係者によれば、清水容疑者らは「匠」や「関東住建」など複数の会社を経営し、行政指導を受けるたびに新たな会社を設立していた。過去には「建将リフォーム」「永住ホーム」などの名前でも活動しており、悪評が広まる前に企業名を変える手法を繰り返していたという。関係者の話によると、会社名を変えるだけでなく、法人代表を別の名義にすることで法的責任の所在を曖昧にするケースもあったとされる。
こうした手口は、違法行為が発覚しても事業自体を存続させるための巧妙な戦略だったとみられる。実際、過去に行政指導を受けた後も、清水容疑者はすぐに別の法人名義で営業を再開し、顧客に対しては「事業規模拡大のための社名変更」などと説明していたとされる。こうした説明を信じた消費者は、新会社であっても従来と同じ体制の業者と取引を続けることになり、結果として違法リフォームの被害が拡大していった。
さらに、業者側はインターネット上の口コミ対策にも力を入れており、悪評が出回ると迅速に新しい会社名を用いたウェブサイトを立ち上げ、過去の問題を隠蔽するような対策を取っていたという。こうした行為により、行政の監視をすり抜けながら違法な営業を続けてきた可能性が高い。
5年間で100億円を売り上げた違法ビジネスの実態
清水容疑者が率いる「清水会」は、約5年間で100億円の売り上げを記録。そのうち10億円以上が清水容疑者に渡っていたとされる。さらに、警視庁の調査では、違法リフォームの発覚を防ぐために契約金額を500万円以下に分割するよう従業員に指示していたことが判明した。
また、詐欺的手法も確認されている。今年2月には、清水容疑者の部下である庄子和馬容疑者(33)ら6人が、必要のない工事契約を締結しようとしたとして詐欺未遂の疑いで逮捕された。警視庁は、こうした手法が組織的に行われていた可能性を視野に捜査を進めている。
今後の展開と課題
警視庁は、清水容疑者の組織運営の全容解明を進めており、今後さらなる関係者の逮捕も視野に入れている。今回の事件を受け、無許可リフォーム業者に対する行政の監視強化や、法改正の必要性が指摘されている。
一方で、消費者自身がリフォーム業者を選ぶ際の意識を高めることも重要だ。許可証の有無を確認し、契約内容を慎重に精査することで、被害を防ぐことができる。