
料理レシピサイト「クラシル」や「オレンジページnet」で、性的な内容を含む不適切な広告が表示され、利用者の間で大きな波紋を呼んでいる。これを受け、運営各社は緊急対応に追われる事態となった。
突然の騒動、不適切な広告が表示
ある日、料理レシピを検索していたユーザーが、思わず目を疑った。「クラシル」のレシピページに、明らかに場違いな広告が表示されていたのだ。料理の手順を確認しようと画面をスクロールすると、そこには性的な内容を含む広告があった。ユーザーはすぐにスクリーンショットを撮り、X(旧Twitter)に投稿した。
この投稿が拡散されると、同じような経験をした利用者が次々と声を上げた。「オレンジページnet」でも同様の広告が表示されていたことが発覚し、事態は一気に拡大した。SNSでは「料理サイトでこんな広告が出るなんて」「子どもと一緒に見ていたのに」といった批判の声が殺到し、企業の広告管理に疑問の声が上がった。
広告審査の盲点、運営元が対応策を発表
事態を受け、「クラシル」を運営するdelyは3月11日、公式に「不適切な広告の掲載停止措置を講じた」と発表した。「オレンジページnet」を運営するオレンジページも10日に謝罪し、該当広告の即時停止を報告した。
両社によれば、広告は広告ネットワークを通じて配信されており、通常はフィルタリングシステムによって不適切な内容が排除される。しかし今回、その審査をすり抜けた広告が表示される事態となった。「ユーザーの皆様にはご迷惑をおかけしました。現在、各広告ネットワークに対し、より厳格な審査と再発防止策の徹底を求めています」と、オレンジページの広報担当者はコメントした。
広告業界の専門家が語る「審査の盲点」
デジタル広告業界に詳しい専門家によると、今回のような不適切な広告が審査をすり抜ける背景には、広告審査の自動化が影響しているという。通常、広告は機械学習を活用したフィルタリングシステムを通じて審査されるが、悪意のある広告主は、審査通過後に広告の内容を変更する手法を使うことがある。また、一部の広告ネットワークでは審査基準が緩く、意図せず不適切な広告が配信されるケースもある。
「広告主は複数のネットワークを活用し、規制の緩いところを狙って広告を出稿することがある。特に料理やライフスタイル系のサイトは広い層にリーチできるため、不適切な広告が混入するリスクが高まる」と専門家は指摘する。
過去の類似事例と比較、何が違うのか?
今回の問題と似た事例は過去にもあった。例えば、2023年には大手ニュースサイトで成人向けの広告が表示され、利用者の間で大きな波紋を呼んだことがある。当時の対応では、広告ネットワーク側が規制を強化し、一部の広告主を排除したが、根本的な解決には至らなかった。
また、動画共有プラットフォームのYouTubeでは、未成年向けコンテンツの動画内に不適切な広告が挿入される問題が浮上し、広告主の審査強化とともにクリエイター側の広告管理機能の充実が求められた。
今回のクラシルとオレンジページnetのケースでは、広告の種類が料理レシピサイトという場にそぐわないものだったことが特に問題視された。これにより、ファミリー層や主婦層などの利用者が大きな不快感を示した点が、過去の事例と比べても特徴的だ。
広告フィルタリング技術の限界とは
広告配信の自動化が進む中で、フィルタリング技術には限界がある。現在、多くの広告ネットワークではAIによる画像認識やキーワードフィルタリングを活用しているが、広告主が審査を通過するために巧妙な手法を用いるため、完全に防ぐことは難しい。例えば、広告の初期デザインでは健全な内容を掲載し、配信後にサーバー側で画像を差し替える手口などが使われている。
また、一部の広告ネットワークでは「カテゴリ別フィルタリング」が実装されているが、機械学習の精度には限界があり、完全に不適切な広告を排除するのは難しい。今回のケースでは、広告審査の見直しだけでなく、広告主の選別やネットワーク全体の管理強化が求められる。
今後の課題と再発防止策
今回の問題を受け、delyとオレンジページは広告の管理強化に向けた対策を進めるとしている。広告ネットワークとの連携を強化し、審査基準を厳格化する方針だ。さらに、ユーザーが不適切な広告を報告しやすい仕組みの周知を徹底し、広告ブロックリストの更新頻度を増やしてリスクの軽減を図るという。
一方で、広告ネットワーク全体の透明性向上や、悪質広告の排除に向けた業界全体の取り組みも求められる。ユーザー側としては、広告ブロックツールを活用する、問題のある広告を積極的に報告するなどの対策が考えられる。企業と利用者がともに意識を高めることが、より安全なネット環境を作る第一歩となるだろう。