
地方空港の駐車場で混刻が深刻化している。訪日外国人客の増加や公共交通の減便、民間駐車場の廃業が影響しており、利用者の利便性向上が急務となっている。コロナ禍から数年が経過したものの、依然としてその影響は大きく、空港運営に課題を残している。
地方空港で進む駐車場の混雑、背景にある複数の要因
各地の空港で駐車場の混雑が常態化している。鹿児島空港では週末の午後、駐車場の入り口に長蛇の列ができ、空きスペースを求めて場内をさまよう車両も見られた。同空港の駐車場収容台数は約1500台だが、2023年度の利用台数は約75万台に上り、コロナ禍前の2019年度の9割を超えた。満車となった日数も週末や年末年始を中心に約60日間に及び、2019年度とほぼ同じ水準に達している。
混雑の要因として、コロナ禍による空港周辺の民間駐車場の廃業や、運転手不足による連絡バスの減便が挙げられる。バスを運行する鹿児島交通によれば、コロナ禍で最大3割まで落ち込んだ乗客数は回復傾向にあるものの、運転手不足も相まって鹿屋や枕崎方面の路線は便数が半減したままだという。
那覇空港では、国際線の便数がコロナ禍前の約8割に減っているにもかかわらず、週末の駐車場は満車の状態が続く。タクシー料金の値上げや、外国人観光客によるモノレールの混雑が要因とみられる。同空港では駐車場の混雑緩和を目的に、金土日曜などの24時間利用料金を1600円から2200円に引き上げる対策を講じた。
コロナ禍がもたらした影響と抜本的対策の難しさ
コロナ禍が地方空港に残した爪痕は深い。空港周辺では、多くの民間駐車場がコロナ禍の影響で廃業し、現在もその多くが再開されていない。また、公共交通機関においても運転手不足が慢性化し、空港連絡バスの便数回復が進まない状況が続いている。これにより、自家用車でのアクセスが増え、駐車場の混雑が一層深刻化している。
国が管理する空港では、ターミナルビルや駐車場を運営する民間企業にとって、新たな駐車場の整備が困難なケースが多い。現在、国が管理する空港として、東京国際(羽田空港)、新千歳、稚内、釧路、函館、仙台、新潟、広島、高松、松山、高知、福岡、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇の19道県がある。国土交通省航空ネットワーク企画課は「コストの問題もあり、即効性のある取り組みは難しい。情報発信や誘導員の増加、公共交通機関や民間駐車場の利用促進を進めたい」としている。
一方で、福岡空港では国から委託を受けた民間企業の「福岡国際空港」が運営しており、柔軟な施設整備が可能となっている。2024年4月には国内線ターミナルに立体駐車場を新設し、収容台数を約2倍の1600台に増やした。国際線でも2023年2月に約1000台収容可能な立体駐車場が整備され、駐車場の収容力向上が進んでいる。
訪日観光需要の高まりと今後の影響
近年、訪日観光客の数は急増している。世界的に見た物価の安さや治安の良さから、日本は旅行先としてランキング上位に位置づけられている。訪日需要のピークは、2月の中国の春節(旧正月)に伴う旅行シーズン、4月前後の桜シーズン、7月・8月の夏休みやバカンス需要、10月頃の紅葉シーズン、そして12月の雪景色を求める旅行者の増加に伴い高まる傾向がある。特に春節シーズンには、中国や東アジア地域からの旅行者が増え、地方空港の混雑が激化することが予想される。これらの時期には、地方空港の駐車場混雑がより一層深刻化するとみられる。
さらに、訪日外国人の増加は、公共交通機関の混雑にもつながる。特に地方空港では、レンタカーの利用が増加することで、駐車場不足の問題がさらに深刻になる可能性がある。空港周辺の交通インフラの整備や、駐車場の拡張などの対策が急務となっている。
利便性向上に向けた今後の課題と展望
地方空港の駐車場混雑は、今後も利用客の増加とともに深刻化するとみられる。専門家は「国管理の空港は責任の所在が分かりにくく、利便性向上のための対策が進みにくい」と指摘する。長期的な視点に立ち、国と民間が協力しながら駐車場の整備や公共交通機関の拡充を進めることが求められる。また、利用者自身も混雑を回避するために公共交通機関の利用を検討することが望ましい。
なにより、高齢化する日本では、人手不足の解消が大きな課題となっている。特に公共交通機関の運転手不足は深刻であり、バスやタクシーの運行回数の減少が各地で問題視されている。地方空港においても、運転手不足の影響で空港連絡バスの減便が続き、自家用車でのアクセスが主流となりつつある。今後、持続可能な交通インフラを整備するためには、自動運転技術の導入や外国人労働者の受け入れ拡大といった新たな施策が求められるだろう。