
バイオ燃料やヘルスケア事業を手掛ける株式会社ユーグレナは、2025年2月17日付で希望退職者の募集を締め切り、58名の応募を受け付けたと発表した。当初の募集人数50名を超えた形となり、経営陣は人員整理を通じて収益構造の改善を進める方針だ。今回の希望退職により、同社は約2億6,000万円の特別損失を計上する。
58名の社員という予定外の応募を受け、急遽募集を締め切ったことからも、社内の厳しい雰囲気がうかがえる。
黒字転換も、厳しい経営環境続く
ユーグレナは2024年12月期に7年ぶりの通期営業黒字を達成し、売上高や調整後EBITDA(利払い・税引き・減価償却費控除前利益)も過去最高を更新した。しかし、黒字体質の定着にはさらなる事業改革が不可欠と判断し、不採算事業の整理や固定費削減に踏み切った。2024年度は売上高476億円(前年比+2%)、調整後EBITDAは43.3億円(前年比+195%)と好調だったが、一方で当期純損益は6.5億円の赤字となり、財務的な不安定さが残る。
希望退職により、年間約3.5億円の固定費削減を見込むものの、組織のスリム化が業績にどう影響するかは未知数だ。2024年中には採用抑制や自然退職を含めて41名が減少し、今回の希望退職者を含めると総勢99名が離職することになる。最終的に、組織規模は約190名体制まで縮小する計画だ。
バイオ燃料事業の成長は追い風か
同社はバイオ燃料事業の拡大を成長戦略の柱と位置付けており、マレーシアでの商業プラントへの出資比率を2025年内に15%まで引き上げる計画を進めている。将来的には年間10万KLの取扱量を目指し、売上高300億円規模、税引前利益60億円の収益ポテンシャルを想定している。しかし、プラントの本格稼働は2028年下期と見込まれており、短期的な収益改善にはつながりにくい。
また、バイオ燃料分野では欧州連合(EU)や英国が2025年より航空燃料に2%の持続可能な航空燃料(SAF)導入を義務化するなど、追い風となる政策もある。しかし、SAFの普及が遅れれば、新規事業の収益化にも影響が出る可能性がある。
ヘルスケア事業も再編、収益性向上へ
一方、ヘルスケア事業では主力ブランド「からだにユーグレナ」「コラリッチ」の価格改定や、グループ会社であるサティス製薬の活用によるコスト削減を進めている。2024年の調整後EBITDAは前年比44%増と改善したが、事業再編に伴うコスト増や広告宣伝費の最適化が課題となる。
また、ユーグレナは次世代エイジングケアブランド『CONC』の姉妹ブランド『CONC LABO』を立ち上げ、新たに高濃度美容成分入りの革新的マイクロニードルを使用した美容液2種を発売する。
CONC トリプルC リッチショットは、3種の高濃度ビタミンCを配合し、頬や目元の毛穴やくすみにアプローチする。CONC PCリッチショットは、3種の高濃度コラーゲンと2種のペプチドを配合し、目元・口元・額のハリや弾力をサポートする。これらの製品は、全国のバラエティショップやオンラインストアで販売される予定だ。
ただし、マイクロニードル美容液はユーグレナ社だけでなく、他社も競争を繰り広げており、市場の競争激化が予想される。人気が得られるかどうかが鍵となる。
黒字定着の道のりは険しい
ユーグレナは2025年度の営業利益を12億円と見込んでいるが、希望退職に伴う特別損失や事業再編コストを考慮すると、その達成は容易ではない。黒字体質を維持しつつ、新たな成長領域を確立できるかが、今後の経営の鍵となる。大規模なリストラを伴う経営改革が成功するのか、同社の今後の動向に注目が集まる。