日野自動車は、不正なエンジン認証問題を巡り米当局と和解に至り、計約12億ドル(約1870億円)の制裁金を支払う。経営への影響は重大だが、経営統合の進展が期待される。
日野自動車、認証不正問題の発覚と経緯
日野自動車は、北米市場におけるエンジンの排ガス認証試験や性能試験において不正があった問題で、米国当局と和解に至った。
問題が公表されたのは2022年で、同社がエンジンの排ガスおよび燃費性能試験データを改ざんしていたことが明らかになった。
この不正は国外にも波及し、米国やカナダ、オーストラリアなどで集団訴訟を引き起こす結果となった。
同社は2019年に米国当局へこれらの問題を自主的に開示し、その後の調査に全面的に協力してきたとされる。しかし、不正行為の規模や信頼性への影響は大きく、業績にも深刻な打撃を与えることとなった。
米当局との和解内容と制裁金の内訳
今回の和解では、日野自動車は米国当局に対して総額約12億ドル(約1870億円、1ドル=156.30円換算)の制裁金を支払うことで合意した。
制裁金は刑事と民事に分かれており、刑事制裁金として5億2176万ドル(約798億円)が米国司法省(DOJ)へ支払われる。
また、民事では米国環境保護庁(EPA)などの連邦当局へ4億4250万ドル(約677億円)、カリフォルニア州当局へ2億3650万ドル(約362億円)が支払われることとなった。
さらに、日野自動車は対象となるエンジンの市場措置や環境負荷軽減プロジェクトの実施も求められている。
これらは、特定のエンジンモデル(J08EおよびJ05Eエンジン)からの過剰な排出に伴う環境への影響を補償するためであり、同社としては重要な課題となる。
業績と今後の経営統合への影響
今回の認証不正問題に伴う制裁金や和解費用は、日野自動車の業績に大きな影響を与えている。
同社は2024年9月中間連結決算において、和解費用や関連費用を含む約2300億円を特別損失として計上。これにより、同決算では2195億円の純損失を記録し、過去最大の赤字へと転落する結果となった。2025年3月期も2200億円の最終赤字を見込んでおり、長期的な収益回復には課題が残る。
一方で、今回の和解により、不正問題に関する法的責任が米国内で一括解決される見通しとなったことから、経営統合の進展が期待されている。
日野自動車は2023年に三菱ふそうトラック・バス(川崎市)との経営統合で基本合意していたが、不正問題への対応や競争法に基づく認可取得の遅れにより、統合計画は無期限延期となっていた。
小木曽聡社長は「今回の和解は重要なマイルストーンであり、再発防止に取り組む」とコメントしており、2024年内の統合完了に向けた協議再開が注目される。
再発防止と企業改革の取り組み
日野自動車は、今回の不正問題を受けて、再発防止と企業風土の改革に向けた大規模な取り組みを進めている。
同社は外部法律事務所と独立した専門家を招き、問題の根本原因を徹底的に調査。その結果を基に「経営改革」「組織風土改革」「新しいクルマづくりのための改革」という3つの柱を掲げた改善策を導入している。
具体策としては、コンプライアンス体制の強化、エンジン開発機能と認証機能の分離、経営陣の刷新、社内コミュニケーションの活性化などが挙げられる。また、環境負荷軽減プロジェクトや市場措置を通じて、社会的責任を果たす姿勢を徹底する方針だ。
小木曽社長は「和解条件を確実に実施し、再び社会に貢献できる企業として生まれ変わりたい」と述べており、信頼回復への強い決意を示している。
同社が課題を克服し、持続可能な成長へと舵を切れるかどうかが今後の焦点となる。