大学受験シーズン直前の1月4日、東京都新宿区の大学受験予備校「ニチガク」が突如閉鎖された。運営会社の日本学力振興会は債務整理のため、近く東京地裁に破産を申し立てるとの貼り紙を校舎に掲示。入試を目前に控えた受験生や保護者に衝撃が走り、混乱が広がっている。
生徒たちのお金は戻るのか?
生徒の悲痛な声 「お金を返してほしい」「この時期にひどすぎる」
閉鎖を知った高校生の生徒が「衝撃的だ。どうしたらいいんだろう」と困惑を隠せない様子がまいどなニュースなどで報道されている。2024年夏からニチガクに通い始め、年間授業料と冬期講習費を合わせて130万円を既に支払っていたといい、「お金を返してほしい」と訴える。ニチガクは質問や面談がしやすい環境で面倒見が良い予備校だったという。年末まで異変を感じ取ることはなく、突然の閉鎖に驚きを隠せない様子だ。
別の高校1、2年生の女子生徒たちも、「4日に来て、閉鎖を知らせる掲示物を見て初めて知った」「高3生の中には泣き出す人もいた。この時期の閉鎖はひどすぎる」と戸惑いを口にした。
運営会社ニチガクの説明不足、SNSで批判の声も
6日には生徒の私物返却対応が行われたが、受付担当者から詳しい説明はなく、「荷物を取りに来た人は名前を書いてください」と指示されたのみだったという。運営会社の説明不足に対する批判の声も上がっている。
SNS上では、「予備校に行ったら破産してたんだけど…」「通っていた受験生が気の毒過ぎる」といった嘆きの声のほか、「塾経営者として、この時期の閉鎖は大変驚きました。共通テストの直前であるだけでなく、各大学の出願期です。受験生には罪はありません。逆境ではありますが、気を取り直して最後まで頑張って欲しいですね」など、受験生を心配する声が多数寄せられている。
過去の合格実績誇示、授業料返金も明記 突然の閉鎖との落差に疑問の声
ニチガクのホームページには、「合格の鍵は『絶対的な質と量』」「隠れた名門」といった謳い文句とともに、2023年度は合格率93.9%、東大9名、早稲田大28名、慶應大16名など、華々しい合格実績が掲載されていた。塾長インタビューでは、「いずれも年間での申し込みとなりますが、途中で退会される場合は残りの期間分を返金しますので、お金が無駄になることはありません」と授業料の返金についても明記されていた。
ニチガクを運営していた日本学力振興会の代表取締役は江藤行雄氏。ニチガクは予備校として予備校密集地帯である西新宿で40年以上の指導実績を誇っていたが、直近の正社員数は、厚生年金・健康保険の被保険者が10名となっていることからも小規模な事業者ということがわかる。
過去のTwitter(現X)でも、「我々の指導に従ってトレーニングした生徒は、ほぼ合格しています」などと自信に満ちた発信を繰り返していたニチガク。突然の閉鎖との落差に、疑問の声が上がっている。
受験生への影響懸念、今後の対応に注目
大学入学共通テストを目前に控え、受験生への影響は計り知れない。他の予備校への転校支援や授業料の返金問題など、今後の運営会社の対応に注目が集まる。
破産してお金は戻ってくるのか
破産手続きに入ったことで、ニチガクに支払った授業料の返金は極めて困難な状況にあると見られる。一般的に、企業が破産すると資産は破産管財人によって管理され、まずは未払いの従業員給与や税金などの優先債権者に支払われる。その後に残った資産があれば、授業料を支払った生徒や保護者も「一般債権者」として返金を受ける権利があるが、破産した企業に返金原資が残っているケースは少なく、回収率は1割いかずにとどまることも多い。
ニチガクの塾長のインタビューには「(生徒側の)途中退会の場合は残りの期間分を返金する」との記載があったが、破産手続きに入った場合、その契約は履行不可能となる。生徒や保護者が授業料返金を求めるには、破産管財人に対して債権の届け出を行い、配当があれば回収できる可能性もあるが、実際に返金が行われるまでには長期間を要し、回収される金額もわずかなものになると見られる。
一方で、クレジットカード決済による授業料支払いの場合、カード会社に対して「チャージバック」を申請し、救済を受けられる可能性がある。また、消費者契約法に基づく救済措置を行政に訴えることも選択肢の一つだ。
生徒たちが置かれた厳しい状況に対し、消費生活センターや法テラスなどの公的機関を活用し、適切な支援を受けることが望まれる。