帝国データバンクの調査で、2025年の食品値上げ品目数がすでに3,933品目に達する見込みであることが明らかになった。
物流費や人件費の高騰が主因となり、加工食品から飲料、アルコールまで幅広い分野で値上げが相次ぐ見通しだ。
値上げ品目数は今年を上回るペース
帝国データバンクの調査によると、2024年の食品値上げ品目数は累計で1万2,520品目となり、過去3年間で最も少ない水準に抑えられた。一方で、2025年の値上げ品目数は、調査時点ですでに3,933品目に達しており、2024年を上回るペースで進行している。
特にパンや酒類、飲料、加工食品などの日常的に消費される商品が値上げの中心となっており、来春にかけて値上げラッシュが再燃する見通しである。
2025年1月にはパン製品が1年半ぶりに一斉値上げされる予定で、単月として1千品目を超える可能性が高い。また、2月や4月にもそれぞれ900品目以上の値上げが予定されており、断続的な価格上昇が見込まれている。
値上げの主因は物流費と人件費
2025年の食品値上げを引き起こす背景には、物流費や人件費の高騰が存在する。
帝国データバンクの調査では、トラックドライバーの時間外労働規制を背景とした輸送コストの上昇が価格転嫁されるケースが目立ち、物流費由来の値上げは89.9%と報告されている。
これは原材料高(94.6%)との差が縮まり、重要な要因として浮上していることを示している。
また、人手不足や最低賃金の引き上げが人件費高騰を招き、この影響で値上げに踏み切る企業が続出している。2024年における人件費由来の値上げ割合は26.5%だったが、2025年1~4月分では47.9%に達する見込みであり、賃上げの負担が価格に反映される傾向が強まっている。
ドトールやビール大手3社も値上げを発表
個別の企業動向としては、ドトールコーヒーが2024年12月12日から「ブレンドコーヒー」など50品目の値上げを発表している。
代表的な商品の「ブレンドコーヒー」Sサイズは250円から280円に値上がりする。原材料費や人件費の高騰を受け、2年ぶりの価格改定となった。
また、ビール大手3社も2025年4月から価格を引き上げる方針を明らかにした。アサヒビールは主力商品「スーパードライ」など226品目、キリンビールは「一番搾り」など216品目、サントリーは「ザ・プレミアム・モルツ」など208品目が対象となる。値上げ幅は各社とも5~12%程度であり、物流費や資材価格の上昇が主な要因である。
消費者への影響と今後の見通し
2025年の値上げは、原材料高に加え、物流費や人件費といったサービス価格の上昇が主因となる「粘着質な値上げ」となる可能性が高い。一方で、値上げが続く中で消費者の購買行動にも変化が見られる。例えば、プライベートブランド(PB)など安価な代替商品の需要が拡大し、購入点数を減らす動きが定着しつつある。
企業側もコスト削減や生産性向上に努めているものの、物流費や賃金の上昇といった外部要因が企業努力の範囲を超えつつある。帝国データバンクは、2025年の値上げ品目数が2024年を超える可能性が高いと指摘しており、さらに厳しい経営環境が予想される。
消費者にとっては引き続き家計への負担が増す状況が続くが、今後の経済政策や賃上げの進展がどのように物価動向に影響を与えるのか注目される。