
VTuberグループ「ぶいすぽっ!」を運営する株式会社バーチャルエンターテイメントが4月10日、所属タレントの花芽なずなに対する誹謗中傷案件で勝訴し、判決で認められた損害金を遅延損害金を含めて全額回収したと公表した。直接の名指しを避けた「当て字」や「伏せ字」でも、文脈から対象者や内容が合理的に推認できるなら責任は免れないという姿勢を鮮明にした。
花芽なずなを巡る中傷案件で交渉決裂、東京地裁で勝訴
ぶいすぽっ!公式サイトは4月10日付で、所属タレントに対する誹謗中傷行為などへの対応状況を掲載。
問題となった投稿はSNS上で花芽なずなを名指しし、社会的評価を不当に下げ、人格的尊厳を侵害する内容だったとされる。
発信者情報の開示請求で相手を特定した後、交渉を進めたものの、十分な謝罪や示談条件の提示は得られず、東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起。
結果として勝訴判決を得て、認定された損害金も全額回収したという。
当て字・伏せ字でも逃げられない
今回の発表で注目を集めたのは、中傷投稿が露骨な表現を避け、「当て字」を使っていた点である。
会社側の説明では、「A氏」や「〇す」といった伏せ方をしていても、文脈や前後の投稿、ハッシュタグなどを含めて対象者や内容が合理的に推認できる場合、責任を逃れることはできないと明記した。
つまり、表記をずらせば法的責任を回避できるという発想自体に、明確な線を引いた形である。
2月の性的イラスト案件に続く強硬対応
ぶいすぽっ!を巡っては、2月にも所属タレントの性的イラストを作成し収益化していた人物を特定し、示談が成立した案件が表面化している。
その際はイラストの全削除や今後の権利侵害行為をおこなわないことに加え、少なくとも1000万円の支払い義務を負う内容が示され、条件付きで400万円支払いにより残部を免除する枠組みが公表された。
今回はそれに続くかたちで、運営側が中傷と権利侵害の双方に継続して法的対応を進めていることを示した。
2021年から対策委員会を設置、法的対応を継続してきた
ぶいすぽっ!は2021年10月に誹謗中傷やストーカー行為などから所属タレントや従業員を守るための「誹謗中傷対策委員会」を設置している。
今回の花芽なずな案件は、その継続的な対応が「示談に応じなければ訴訟も辞さず、判決後は回収までやり切る」段階に入ったことを示した。
匿名の投稿文化が残るVTuber界隈では、当て字や伏せ字を使えば逃げ切れるという認識がなお残るが、今回の公表はその発想自体が通用しないことを改めて突き付ける内容。
運営会社がどこまで踏み込んで対処するかを示す一つの目安になりそうだ。
VTuber界隈の書き込み文化にも影響
今回の件は、単なる勝訴報告にとどまらない。
名前をぼかし、隠語化し、周辺文脈だけで共有される投稿文化に対し、それでも対象者が特定できるなら責任を問うという現実を突き付けたからだ。
誹謗中傷の投稿者側には「直接書いていない」という逃げ道が通用しないことを示し、配信者や事務所側には、証拠保全と法的手続きの積み上げが結果につながることを示した。
VTuber業界のタレント保護が次の段階に入ったことを印象づける発表になった。



