
サイゼリヤの定番メニューとして親しまれる「若鶏のディアボラ風」が店頭から姿を消す。株式会社サイゼリヤは2026年3月24日、「鶏肉原料の供給不足」により「若鶏のディアボラ風」と「柔らかチキンのチーズ焼き」を一時休止すると発表した。店舗によって休止時期は異なるが、外食の看板級メニューが止まるという事実は鶏肉調達の厳しさを物語っている。
サイゼリヤが販売休止に踏み切った重み
今回の発表で注目すべきなのは、単なる一部改廃ではなく、サイゼリヤ側が「早期の販売再開に向け、原材料の安定調達に努めております」と明記している点である。
つまり、需要の見誤りや季節限定の入れ替えではなく、原料そのものの確保が難しくなっているということだ。
FNNによると、サイゼリヤは代替品の調達も含めて再開を検討しているが、世界的な需要増に加え、円安進行も重なり、輸入鶏肉の品薄が指摘されている。
背景にあるのは「足りない」だけではない
鶏肉をめぐる足元の状況は、単純な品薄というより、「在庫が薄いまま高値が続く」という厄介な局面に入っている。
JA全農チキンフーズの3月資料では、1月の輸入鶏肉価格はブラジル産モモ肉が600円から650円/kg、タイ産が630円/kg中心まで上がり、輸入品は国内在庫が低水準で、市中がひっ迫した状態だと整理されている。
さらに3月時点でも、ブラジル産を中心に入荷が少なく、市中の出回りも少ないとされ、輸入品在庫は前年を下回る水準にある。
物価高で「鶏肉に流れる需要」も効いている
もうひとつ見逃せないのは、消費側の変化である。
農林水産省の資料では、令和6年は物価高騰による生活防衛意識の高まりで、牛肉や豚肉の家計消費がやや減る一方、鶏肉はやや増加したとされる。
値ごろ感のあるたんぱく源として鶏肉に需要が流れやすい状況が続いているわけだ。
しかも同省は、鶏肉の消費構成について、家計消費と外食・中食向けがそれぞれ約5割で推移しているとしている。
家庭でも外食でも頼られる食材だからこそ、どちらか一方の不足では済まず、外食チェーンのメニューにすぐ影響が出やすい。
「ディアボラ風休止」が示す外食の新しい不安
今回の販売休止は、一企業の調達トラブルとして片づけられない。
鶏肉は、安さと満足感を両立しやすい外食の主力原料であり、ファミリーレストランの価格戦略そのものを支える存在でもある。
その定番商品が止まるということは、外食産業がこれまで当然視してきた「比較的安定して確保できる肉」の前提が揺らぎ始めたことを意味する。
年間ベースでは鶏肉の供給量は増えてきた局面もあるが、足元では輸入在庫の薄さと価格高騰が重なり、現場では「欲しい量を、欲しい値段で」確保しにくい局面にある。
供給構造のきしみが表面化したサインと見るべきだろう。
早期再開は見通せるのか
サイゼリヤは再開に向けて安定調達に努めるとしているが、輸入鶏肉をめぐる高値と在庫の薄さがすぐに解消するとは言い切れない。
中東情勢や為替がさらに不安定になれば、輸送コストや調達コストがもう一段重くなる可能性もある。
安い外食の象徴だった人気メニューが消えたことは、もはや外食だけの話ではない。
物価高の時代に、最後まで庶民の味方だと思われていた鶏肉にまで供給不安が及び始めた。



