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イラン・ホルムズ海峡危機で日本は終わるのか トランプ「5日間延期」でも消えない原油高騰リスク

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トランプ大統領は3月23日、イランの発電所などへの追加攻撃を5日間延期すると表明し、「建設的な対話が進んだ」と主張。これに対しイラン側は、米国との「建設的な対話」や交渉の存在を否定している。ロイターによると、この発言で原油はいったん下げたものの、24日には再び上昇し、ブレント原油は一時102ドル台を回復した。危機は去ったのではなく、次の局面が先送りされたにすぎない。

 

5日間の猶予は「停戦」ではない

ポイントは、ホルムズ海峡をめぐる不安がまったく消えていないことである。

ロイターによると、延期は主としてエネルギー施設攻撃にかかるもので、軍事目標への圧力まで外れたわけではない。イラン側は交渉の存在自体を「フェイクニュース」と切り捨てており、事態は依然として流動的である。

報道も錯綜

ホルムズ海峡をめぐっては、個別船舶の動静をめぐる情報も錯綜した。

ブルームバーグは3月23日付で「イラク産原油200万バレルを積んだ超大型タンカーがホルムズ海峡を通過した」と報道。商船三井が技術管理を担う船だと受け取れる形で広まった。

しかし、商船三井は3月24日付の公式文書「一部報道について」で、「一部報道において、当社運航船がホルムズ海峡を通過したとの内容が報じられておりますが、そのような事実はありません」と表明。「安全運航支援センターにて24時間体制で監視を強化し、状況注視しながら情報を収集している」としている。

危機局面では、こうした断片的な情報ひとつで市場心理が揺れやすく、原油価格や輸送リスクへの警戒が過熱しやすい。

 

ホルムズ海峡が揺らぐと、なぜ原油は跳ねるのか

ホルムズ海峡は、世界の石油とLNGの大動脈である。米エネルギー情報局 EIA によると、2024年に同海峡を通過した石油は日量2000万バレルで、世界の石油消費の約2割に相当した。LNGも世界取引の約2割が同海峡を通っており、しかもその大半はアジア向けである。

だからこそ、完全封鎖が現実にならなくても、「通れないかもしれない」「保険がつかないかもしれない」という懸念だけで相場は跳ねる。ロイターは24日、イラン側の否定と供給不安の再燃を受け、原油価格が再上昇したと伝えた。

実際に海峡を通った船がどれだけあるか以上に、安定的に通れるかどうかが市場に問われている。

日本は「遠くの戦争」で済まない

日本にとってこの問題が重いのは、中東依存の高さがなお大きいからである。

野村総合研究所 NRI は3月13日付の分析で、日本は2025年時点で原油輸入の約94%を中東に依存し、その輸送タンカーの約8割がホルムズ海峡を通るとしている。ホルムズ海峡の混乱は、日本にとって単なる国際ニュースではなく、生活コストと産業コストを直撃する問題である。

備えがないわけではない。資源エネルギー庁によると、2026年1月末時点の日本の石油備蓄は国家備蓄146日分、民間備蓄96日分、産油国共同備蓄6日分の計248日分ある。

ただし、これは危機の長期化に余裕があるという意味ではない。すでに日本政府は備蓄放出に踏み切っており、ロイターによれば日本はIEA協調放出の中で8000万バレルを供給する見通しとされる。

 

ガソリン高は家計だけの問題ではない

NRIの木内登英氏は、混乱長期化を想定したベースシナリオで、日本の実質GDPを1年間で0.18%押し下げ、物価を0.31%押し上げると試算している。二人以上世帯の負担は年1万1690円増え、全国平均のレギュラーガソリン価格は1リットル200円を超える計算だという。

さらに悲観シナリオではGDPマイナス0.65%、物価プラス1.14%となり、景気悪化と物価高が同時進行するスタグフレーション色が強まる。

影響は家計だけで終わらない。ロイターは、日本企業の間で原料高や供給不安を受けてエチレン減産の動きが出ていると報じている。石油価格の上昇は、ガソリン代だけでなく、化学、物流、包装、製造コストへと広く波及する。

目に見えるのは給油価格でも、打撃は産業全体に広がる。

ネットの「日本ヤバい」「日本オワタ」論は大げさなのか

SNS上では「日本経済が危ない」「ガソリン高騰確定」「備蓄しないとまずい」といった不安投稿が急増しているが、その背景には誇張だけでは片づけられない構造問題がある。

ロイターは23日、日本政府関係者がエネルギー安定化策はなお十分ではなく、LNG在庫も約3週間分にとどまると警戒していると伝えた。ホルムズ海峡経由のLNGの多くがアジア向けであることを踏まえれば、日本で不安が強まるのは自然な流れでもある。

極端な「日本終わる」論はさすがに飛躍がある。だが、「まだ大丈夫」と切り捨てるのも危うい。ホルムズ海峡が揺れた瞬間、遠い戦争が日本のガソリン価格、電気代、物流、工場稼働、家計心理まで一気につながる。その現実が、改めて可視化されている。

 

日本経済が孕む構造的なリスク

トランプ氏の5日延期で、即時の全面悪化はひとまず避けられたように見える。だが、イラン側は交渉を否定し、海峡の安定通航は戻っていない。

通航情報すら錯綜する状況では、原油市場の神経質な反応は続きやすい。日本は備蓄放出で時間を稼げても、中東依存とホルムズ依存という弱点そのものは変わらない。

今回の危機が突きつけているのは、エネルギー価格の一時的な乱高下ではなく、日本経済の構造的な脆さである。

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ライター:

東京都出身の音楽家。こちらはライターとしての世を忍ぶ仮のペンネーム。平易な言葉で情緒的な文章を書く。対象の思いを汲み取り、寄り添うことを重視。少年期より難病を持ち、弱者への眼差しが裏テーマ。自分の頭や心を使って、形のない美しさや優しさを世の中にひとつずつ増やしたい。書きもののほか、BGM、テーマソング、賑やかし、癒やしなど、音楽全般も承り〼。

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