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イラン女子サッカー代表5人亡命か 国歌を歌わなかった理由と「帰国すれば処罰」の可能性

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イラン女子サッカー
DALLーEで作成

スタジアムに流れる国歌。
観客席は静まり返り、選手たちは胸に手を当てて歌う。

しかし、その列の中で数人の選手は唇を動かさなかった。

わずか数十秒の沈黙だった。だが、その沈黙は、彼女たちの人生を大きく変える決断へとつながった可能性がある。

オーストラリアで開催されている女子サッカーの国際大会「AFC女子アジアカップ」で、イラン代表の選手が国歌を斉唱しなかったことをきっかけに、帰国後の処罰への懸念が広がっている。さらに少なくとも5人の選手がオーストラリアで亡命を申請したと報じられ、問題は国際政治や人権問題へと発展している。

この出来事の背景には、イラン社会の厳しい政治体制と、スポーツと政治が交差する複雑な現実がある。

 

 

国歌を歌わなかった数十秒の沈黙

問題の発端は3月2日、韓国との試合前だった。

試合会場はオーストラリア東部のゴールドコースト。
夜のスタジアムに国歌が流れる。

多くの選手が胸に手を当てて歌うなか、数人の選手は唇を閉じたまま立っていた。

この異例の行動は、すぐに世界中で報じられた。

その背景には、イラン国内の緊張した政治状況があった。

試合の2日前、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が米国とイスラエルによる攻撃で死亡したとされ、国内は強い緊張状態に入っていた。

こうした状況のなかでの国歌斉唱拒否は、体制への抗議の意思表示ではないかと受け止められた。

実際、イラン国内では強い批判が巻き起こった。
国営テレビの司会者は番組の中で選手たちを「裏切り者」と非難し、「厳しい罰を受けるべきだ」と発言したと伝えられている。

 

帰国すれば投獄の可能性

では、選手たちは帰国すれば本当に処罰されるのだろうか。

イランでは政治体制への抗議行動が厳しく取り締まられることがある。

特に国家や宗教指導者に対する反発とみなされた行為は、国家安全保障に関わる問題として扱われることがある。

その場合、以下のような処罰が科される可能性があると指摘されている。

・拘束や取り調べ
・パスポートの没収
・スポーツ活動の禁止
・長期の拘禁刑

こうした処罰は過去にも報告されている。

特にイランでは、政治的な抗議を行ったアスリートが拘束された例が複数ある。

そのため今回の女子代表の行動についても、帰国後の安全を懸念する声が広がっている。

 

本当に処刑される可能性はあるのか

では「処刑される可能性」は現実的なのだろうか。

結論から言えば、国歌を歌わなかっただけで直ちに死刑になる可能性は高いとは言えない。

しかし、イランでは政治体制に対する反抗が「国家への敵対行為」と認定された場合、死刑判決が出ることがある。

実際、過去には反政府デモに関与したとされるスポーツ選手が処刑された例も報告されている。

また、レスリング選手ナビド・アフカリが反政府デモに関与したとして2020年に処刑された事件は、世界中に大きな衝撃を与えた。

こうした前例があるため、海外メディアの間では

「帰国すれば命の危険がある」

という見方が広がったのである。

ただし実際には、選手の社会的影響力や国際世論などが考慮される可能性もあり、処遇は不透明なままだ。

 

大会中に選手がホテルを離脱

事態が大きく動いたのは大会期間中だった。

オーストラリアの公共放送ABCによると、イラン代表の少なくとも7人の選手が宿泊していたホテルを離れたという。

そのうち5人が亡命を申請したと報じられている。

選手たちは現在、警察の保護下に置かれているとみられる。

試合後のスタジアム周辺でも異様な光景が見られた。

約50人のファンが代表チームのバスを取り囲み、叫んだ。

「私たちの少女たちを救え」

この言葉は、選手たちが直面している状況を象徴していた。

 

トランプ大統領も亡命を支持

この問題は国際政治にも波及した。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月9日、自身のSNSでオーストラリア政府に亡命を認めるよう求めた。

「彼女たちをイランに送り返すことは重大な人道的過ちだ」

トランプ氏はそう投稿し、さらに

「送還されれば、おそらく殺害される」

と述べ、選手の安全を強く懸念した。

また、亡命が認められない場合には

「米国が受け入れる」

とも発言した。

その後、トランプ氏はオーストラリアのアルバニージー首相と電話で協議したことを明らかにしている。

 

亡命か帰国か 選手たちの難しい決断

ただし、すべての選手が亡命を希望しているわけではない。

大きな理由の一つが家族の存在だ。

イランに残る家族が政府から圧力を受ける可能性があるため、帰国せざるを得ないと考える選手もいるとされる。

亡命すれば自分の命は守られるかもしれない。
しかし、その代わりに家族が危険にさらされる可能性がある。

選手たちは今

・自分の安全
・家族の安全
・祖国との関係

その間で極めて難しい決断を迫られている。

 

スポーツと政治が交差する現実

スポーツは政治とは無関係だと言われることがある。

しかし実際には、スポーツの舞台は政治的メッセージが表現される場でもある。

イランでは女性の権利をめぐる抗議運動が続いており、女性アスリートの行動は社会的な意味を持つことが多い。

今回の女子代表の沈黙も、単なるスポーツの出来事ではない。

それは、政治体制、女性の権利、そして個人の自由という問題が交差する象徴的な出来事として世界の注目を集めている。

 

今後の焦点は亡命の扱い

今後の焦点は、オーストラリア政府が亡命申請をどう扱うかにある。

亡命が認められれば、選手たちはイランに帰国せず新しい人生を歩むことになる。

一方で帰国する選手がいれば、その処遇が国際社会の注目を集めることになる。

スタジアムでの沈黙は、ほんの数十秒だった。

しかし、その沈黙は今、スポーツ、政治、人権という三つの問題を世界に突きつけている。

 

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ライター:

広告代理店在職中に、経営者や移住者など多様なバックグラウンドを持つ人々を取材。「人の魅力が地域の魅力につながる」ことを実感する。現在、人の“生き様“を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。

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