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弁当店の倒産が過去最多 米価格は2倍、ラ・ムー198円弁当…町の弁当屋が消える日

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弁当
PhotoACより

昼どきの街角。炊きたてのご飯の香りと揚げ物の油の音。そんな当たり前の風景をつくってきた町の弁当屋が、いま静かに姿を消しつつある。帝国データバンクの調査によると、2025年に発生した弁当店の倒産は55件となり、2年連続で過去最多を更新した。

背景には米や食用油の価格高騰、人手不足、そして激安スーパーとの価格競争がある。さらに、198円弁当で知られる「日本一安いスーパー」とも呼ばれるディスカウント店が首都圏進出を進め、弁当市場の競争は新たな局面を迎えている。

 

 

弁当店の倒産が過去最多 街の昼を支えた店に何が起きているのか

まだ空が白み始める前。
弁当屋の厨房では、すでに一日の仕事が始まっている。

炊飯器の蓋を開けると、湯気とともに米の甘い香りが立ちのぼる。
隣ではフライヤーの油が温度を上げ、鍋では煮物のだしが静かに沸き始める。

昼のピークまでに数十、時には数百の弁当を作るため、仕込みは夜明け前から始まる。
弁当屋の仕事は、朝の数時間が勝負だ。

しかし、その現場を取り巻く経営環境は急速に厳しさを増している。

帝国データバンクによると、2025年に法的整理となった弁当店は55件となり、前年を上回って過去最多となった。個人店の廃業を含めれば、実際にはさらに多くの弁当店が市場から退出しているとみられる。

会議やイベント向けの仕出し弁当の需要減少、テレワークの普及による企業向けランチ弁当の縮小。そこに原材料価格の高騰と人手不足が重なり、町の弁当屋は厳しい経営を迫られている。

 

米は数年で約2倍 油も一斗缶で数千円上昇

弁当店の経営を直撃しているのが、食材価格の高騰だ。

特に大きな影響を与えているのが米である。
数年前まで1キロ350円前後だった米の仕入れ価格は、現在では700円近くにまで上昇している。弁当の主役であるご飯の価格が倍近くになれば、利益構造は大きく変わる。

さらに、揚げ物に欠かせない食用油も値上がりしている。
一斗缶単位では数千円の値上げとなり、唐揚げやコロッケなどを扱う店ほど影響は大きい。

鶏肉、エビ、イカなどの食材も10〜15%以上値上がりしたものが多い。
それに加えて、弁当容器やパックなど包材の価格も上昇した。

電気代やガス代も上がり、人件費も上昇している。
つまり、弁当を作るためのコストはほぼすべて上がっている。

 

「500円弁当」の限界 値上げできない構造

弁当店が苦しいのは、原価が上がったからだけではない。
最大の問題は、価格を上げにくいことである。

弁当は日常的に買われる食事だ。
昼食代を抑えたい消費者にとって、価格は大きな判断材料になる。

値上げすれば客足が遠のく。
しかし値上げしなければ利益が出ない。

この板挟みのなかで、多くの弁当店は長く「ワンコイン弁当」を維持してきた。だが、米や油の価格が大きく上がった現在、その価格を守ることは難しくなっている。

弁当はその日のうちに売り切らなければ廃棄になる。
売れ残りのリスクを抱えながら薄利多売で経営を続ける構造は、物価高の時代には限界に近づいている。

 

ラ・ムー198円弁当の衝撃 「日本一安いスーパー」が首都圏へ

こうした状況のなか、弁当市場に大きな影響を与えているのがディスカウントスーパー「ラ・ムー」だ。

岡山に本社を置く大黒天物産グループが展開するラ・ムーは、西日本を中心に店舗を拡大してきたが、近年は首都圏進出を進めている。
店の看板商品は、198円の弁当である。

焼きサバ弁当や唐揚げ弁当など種類も多く、ご飯150グラム、おかず150グラムとボリュームも十分。税込みでも200円台前半という価格は、一般的な弁当の常識を覆す水準だ。

その安さから、ラ・ムーは「日本一安いスーパー」と呼ばれることもある。

この激安弁当は、単なる値引きではなく、徹底したコスト削減の仕組みで成り立っている。

 

激安スーパーと町の弁当屋 原価構造の違い

ラ・ムーのような激安スーパーと町の弁当屋では、原価構造が大きく異なる。

スーパーは売れ筋商品に絞り、大量仕入れを行うことで食材価格を下げる。
自社工場や店舗内厨房で大量生産することで調理コストも抑える。

物流も自社ネットワークで効率化されている。
容器は種類を絞って大量発注し、段ボールのまま陳列することで作業コストも削減している。

一方、町の弁当屋は少量仕入れが基本だ。
地元の市場や業者から食材を仕入れ、店の厨房で手作りする。

仕込み、調理、盛り付け、販売まで、ほとんどが人の手で行われる。
そのため人件費の割合は高くなる。

つまり、スーパーは「仕組みと規模」で価格を下げ、弁当屋は「手作りと人の仕事」で弁当を作る。
この構造の違いが、そのまま価格差として表れている。

 

生き残る弁当店の共通点

ただし、すべての弁当店が苦境にあるわけではない。

価格ではなく価値で支持を集める店もある。
家庭料理の味を大切にする店、地元食材を使う店、健康志向の弁当を提供する店などだ。

コンビニやスーパーの弁当は便利だが、手作りの温かさや栄養バランスを求める人もいる。

夕食にもう一品欲しいとき。
家庭の味を思い出すような煮物を食べたいとき。

そうした場面では、町の弁当屋が選ばれることも少なくない。

弁当市場はいま、低価格を追求する大量生産型と、価値を重視する手作り型へと二極化し始めている。

 

町の弁当屋は消えるのか

昼休み。
店先に並ぶ弁当をのぞき込みながら、人は値札を見る。

その弁当が並ぶまでには、早朝からの仕込みと調理がある。
炊きたてのご飯を詰め、揚げ物を揚げ、煮物を仕上げる。

198円弁当の時代は、消費者にとって魅力的だ。
しかしその裏で、手作りの弁当を支えてきた店は厳しい選択を迫られている。

町の弁当屋が残るのか、それとも消えていくのか。
それは、安さだけで食事を選ぶのか、それとも価値を選ぶのか。

私たちの選択にもかかっている。

 

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ライター:

広告代理店在職中に、経営者や移住者など多様なバックグラウンドを持つ人々を取材。「人の魅力が地域の魅力につながる」ことを実感する。現在、人の“生き様“を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。

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