
事件の発端となった30周年記念フェスと会場限定短編アニメ
2026年2月21日から23日まで横浜アリーナで開催された「EVANGELION:30+; 30th ANNIVERSARY OF EVANGELION」は、エヴァンゲリオン放送開始から30年を祝う大規模イベントだ。
目玉コンテンツの一つが、庵野秀明が企画・脚本・総監修を務め、浅野直之が監督した新作短編アニメーション『エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行』である。この作品は約13分から15分の尺で、会場限定上映として世界初公開された。撮影・録音・公開は厳禁と事前に告知され、来場者には注意喚起が繰り返されていた。
作品の内容はファンサービス満載で、箱根湯本の宴会場を舞台にしたメタ的な構成が特徴だ。惣流・アスカ・ラングレーと式波・アスカ・ラングレーが共演し、楽屋トークや漫才風の掛け合いから始まる軽快なコメディ調の前半が、後半で感動的なシリアス展開に転じる。惣流アスカの過去のトラウマや母との和解が描かれ、『新世紀エヴァンゲリオン』TV版と『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の要素を織り交ぜたifストーリー的な救済が、多くの観客から「号泣した」「アスカが報われた」と絶賛された。
ラストは主要キャラクターが集まり楽器を演奏する大団円で、ハッピーエンド寄りの温かい締めくくりとなっている。しかし一部の来場者が撮影禁止を無視してスクリーンやステージを盗撮し、XをはじめとするSNSに違法アップロードした。これが事件の起点となった。
盗撮映像の拡散とカラー社の削除申請ミス
フェス初日の2月21日夜から、カラー社は違法投稿に対してXへ削除申請を開始した。
著作権侵害の証拠として公式映像のアクセス情報を記述したところ、Xの仕様によりその情報が盗撮投稿者側に開示されてしまった。本来社外に公開する予定のなかった高品質な公式データが一時的に外部からアクセス可能になり、3月7日早朝にデータをダウンロードした人物により、Xや他のプラットフォームへ公式映像が再拡散される事態に発展した。
カラー社は公式サイトで経緯を詳細に説明し、「担当者の作業工程における人的ミスであり、X上での削除申請仕様への理解不足や誤認が原因」と認めた。事態発覚後すぐにデータ削除を実施し、対応に努めていることを強調。関係者とファンに多大な心配と迷惑をかけたとして、深く謝罪した。このような削除申請時の情報漏えいは、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく通報プロセスで稀に発生する問題として、ネット上でも指摘されている。
権利者が証拠を提出する際に、プラットフォーム側が申請内容を相手方に通知する仕組みが、逆に流出を招くケースだ。
SNS上のファン反応と盗撮行為への強い批判
事件が報じられると、Xでは盗撮者に対する非難が殺到した。「会場でチケットを買ったファンを裏切る行為」「何度警告されても撮るのか」「犯罪レベル」との声が相次ぎ、拡散した人物にも「盗撮版じゃなく公式を待てなかったのか」「責任を問うべき」と怒りが向けられた。
一方で、カラー社のミスについては「人的ミスは仕方ない」「運営も大変だった」と同情的な意見も見られた。ファンコミュニティ全体では「盗撮さえなければ限定の特別感が保たれたのに」という悔しさが共通している。特定や晒し行為は大規模には起きていないが、フェス開催時に公式が「座席番号から精査して法的措置を取る」と警告していたため、今後の動きを期待する投稿も散見される。
公式YouTube無料公開決定と今後の著作権保護の課題
トラブルを受け、カラー社は短編アニメを公式YouTubeチャンネルで無料公開することを発表した。
3月8日午前0時(日本時間)から配信開始され、盗撮版や低画質の流出版ではなく、正規の高品質映像で誰でも視聴可能になった。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』公開からちょうど5年目のタイミングということもあり、ファンにとってはサプライズの朗報となった。
カラー社は「盗撮映像および流出映像のSNS拡散防止に苦慮している」として、公式チャンネルでの視聴を強く呼びかけている。この対応により、結果的に多くの人が早期に作品を楽しめるようになったが、根本的な問題である盗撮・マナー違反への対策は引き続き課題だ。エヴァンゲリオンシリーズは長年ファンに支えられてきただけに、こうした事件が再発しないよう、業界全体での啓発と技術的な防衛策が求められる。



