ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

『超かぐや姫!』公式が聖地巡礼について異例の注意喚起 背景にある「オーバーツーリズム」について考える

コラム&ニュース コラム
リンクをコピー
超かぐや姫 公式 スクリーン
超かぐや姫! 公式サイトより

Netflixで世界的大ヒットを記録中のアニメ映画『超かぐや姫!』。その舞台を巡る「聖地巡礼」で私有地への侵入等の迷惑行為が相次ぎ、公式が異例の注意喚起を行った。背景にあるのは、現代特有の「オーバーツーリズム」。

ファンと地域が共存する道を探る。

 

異例の大ヒット『超かぐや姫!』が直面した「聖地巡礼」の光と影

Netflixで2026年1月22日に世界独占配信が開始されるやいなや、瞬く間に世界を席巻したオリジナルアニメーション映画『超かぐや姫!』。本作は、山下清悟監督の初長編作品として、仮想空間「ツクヨミ」でのライブステージと少女たちの絆を圧倒的な映像美で描き出し、国内外で高い評価を得ている。

配信翌日にはNetflix国内「今日の映画TOP10」で1位を獲得。さらに日本週間TOP10で4位、グローバル(非英語映画)でも7位を達成するなど、オリジナル作品としては異例の快進撃を続けている。その反響を受け、2026年2月20日からは1週間限定での劇場公開が始まったが、予約開始と同時に満席が続出。1日10回以上の上映を行う劇場が現れるほどの事態となり、急遽、上映期間の延長と劇場の拡大が決定した。

しかし、この熱狂の裏で深刻な問題が浮上している。作品の舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」において、一部のファンによるマナー違反が相次いでいるようなのだ。

2026年2月24日、映画『超かぐや姫!』公式サイトおよび公式Xアカウント(@Cho_KaguyaHime)は、「『超かぐや姫!』関連場所への訪問についてのお願い」と題した声明を発表した。この異例の注意喚起は日本語のみならず、英語や中国語でも発信されており、事態がグローバルな規模にまで及んでいることを物語っている。

公式が突きつけた「5つの禁止事項」とSNSでの波紋

 

公式サイトの報告によれば、関連場所は地域住民にとっての大切な「生活の場」であることを強調した上で、以下の事項を遵守するよう強く求めている。

【禁止事項および遵守のマナー】

  1. 私有地・学校等への無断立ち入り
  2. 無許可での撮影・配信等プライバシーを侵害する行為
  3. 深夜・早朝の訪問や騒音・迷惑行為
  4. ゴミのポイ捨て・器物破損
  5. その他地域の方々の生活や店舗営業に支障をきたす行為

この注意喚起が行われるきっかけとなったのは、SNS上でのある投稿だ。2026年2月22日ごろ、作品の舞台を訪れたとされるユーザーが、私有地とみられるアパートの写真をハッシュタグ付きで投稿。これが拡散されたことで「住民のプライバシーを侵害している」との批判が殺到し、大きな波紋を広げた。

J-CASTニュースによると、当該投稿は24日時点で削除されているが、公式側が速やかに声明を出す事態に至ったようだ。こうした動きを受け、ネット上では「マナーを守って楽しんでいる他の観光客の気分まで台無しにする」「最悪の場合、聖地巡礼自体が断られる場所も出るかもしれない」といった危惧の声が上がっている。

https://twitter.com/Cho_KaguyaHime/status/2026129962680693028

「聖地」を襲うオーバーツーリズムとは

 

今回『超かぐや姫!』が直面した問題は、単なる一部のファンの暴走にとどまらない。
現代の観光業界が抱える大きな課題「オーバーツーリズム(観光公害)」の縮図といえる。

オーバーツーリズムとは、特定の観光地にキャパシティを超える観光客が押し寄せ、地域住民の生活環境や自然環境、さらには観光客自身の体験価値にまで悪影響を及ぼす現象を指す。かつては京都や富士山、鎌倉といった歴史ある名所に限られた話だと思われていたが、現代では状況が激変している。

なぜ「普通の場所」が突然パニックになるのか

現代においてオーバーツーリズムが「どこでも起こりうる」ようになった背景には、2つの要因がある。

第一に、「SNSによる情報の即時拡散とナビゲーション技術の向上」だ。Wedge ONLINEに掲載された早稲田大学大学院経営管理研究科の池上重輔教授による解説によると、以前はDMO(観光地域づくり法人)やマスメディアが情報源だったが、現在はSNS上の第三者の投稿が最も信頼されるようになっている。一枚の「映える」写真がInstagramやTikTokでバズれば、それまで変哲もなかった「ただの電柱」や「静かな住宅街」が、一夜にして世界中の人が目指す目的地に変わってしまうのだ。

第二に、「観光資源の多様化・細分化」である。かつて観光といえば「名勝地」や「歴史的建造物」を巡るものだったが、現在は「聖地巡礼」に代表されるように、住民にとっては日常の風景である場所が、ファンにとっては唯一無二の価値を持つ場所に変わる。特に『超かぐや姫!』のようなヒット作であれば、世界中のファンが同時に動くため、受け入れ準備が整っていない地域が突如として「オーバーツーリズム」の現場となるリスクを抱えている。

過去の事例に学ぶ「拒絶」か「共存」かの分かれ道

 

観光客の集中によって、地域住民との摩擦が生じ、対策に追われる事例は枚挙にいとまがない。特にアニメの聖地においては、その「対策」がファンの行動を制限する方向(拒絶)に向かうか、仕組みを作って迎え入れる方向(共存)に向かうかが大きな分かれ道となる。

【深刻化した事例】江ノ電「鎌倉高校前の踏切」

アニメ『SLAM DUNK(スラムダンク)』の聖地として世界的に知られるこの踏切は、オーバーツーリズムの最も顕著な例の一つだ。

2022年の映画公開以降、観光客は急増し、週末には多い時で100人以上の人だかりができ、以下のようなトラブルが常態化した。

  • 車道への飛び出し:良いアングルで写真を撮るために、警備員の制止を振り切って車道へ出る。
  • 私有地への侵入:近隣住民の自宅敷地内に無断で立ち入り、ベランダに人がいて住民が驚くといった事態が発生。
  • ゴミの放置:たばこの吸い殻やゴミのポイ捨て。

これに対し鎌倉市は、交通誘導員を平日にも配置。さらに2025年9月には、路上にあふれる観光客を分散させるため、近くの公園に「公式撮影エリア」を整備し、そこへ誘導する実証実験を開始した。しかし、地域住民からは「さらに観光客が増えるのではないか」という懸念も根強く、完全に解決したとは言い難い。

【共存・成功した事例】『君の名は。』飛騨市図書館

一方で、上手く受け入れている事例もある。映画『君の名は。』のモデルとなった飛騨市図書館では、巡礼者に対し「館内で写真撮影をされる際は、事前にカウンターにて許可申請を行ってください」「他の利用者の顔が識別できる写真はご遠慮ください」といった具体的かつ丁寧な案内を提示した。

このように、ファンを「排除」するのではなく「ルールを守る仲間」として迎え入れることで、地域振興と静穏な環境の維持を両立させたのだ。

「推し」を守るための新しいマナー「サステナブルな巡礼」

 

私たちは今、観光を「消費」するだけの時代から、地域と「共生」する時代へと移行している。観光庁(2023年10月決定「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」)によれば、持続可能な観光地づくりのためには、地域住民と観光客が互いに配慮し合う環境整備が急務とされている。

ファンとして私たちができることは、決して難しくはない。

  1. 「お邪魔します」の精神を忘れない
    その場所はあなたにとっての「夢の世界」でも、誰かにとっては「ゴミ出しをし、仕事へ向かう生活の場」である。

  2. 公式の動線を尊重する
    公式が提供するVRChat上での「ツクヨミ感謝祭」や、劇場での鑑賞体験、指定されたフォトスポットなど、公式が用意した「楽しみの場」を主戦場にする。

  3. 情報の出し方に注意する
    SNSに投稿する際、他人の家や車のナンバープレート、顔などが写り込まないよう加工する。
    また、あまりにも閑静な場所であれば、位置情報の共有を控える配慮も必要だ。

先に挙げた「鎌倉高校前の踏切」の例では、2025年に市が近くの公園に撮影コーナーを設置するなどの実証実験を行っている。これに対し、制作側も後続の映画版では舞台を広大な海岸沿いに移すなど、一極集中を避ける配慮を見せている。

結びにかえて:聖地巡礼で最高の体験を終わらせないために

 

『超かぐや姫!』は、上映延長と劇場拡大という最高の結果を勝ち取った。2026年2月27日からは、BUMP OF CHICKENの楽曲をカバーしたEDテーマ「ray 超かぐや姫!Version」のMVが、本編終了後にスクリーンで上映されるというファン垂涎の施策も始まる。山下監督がディレクションしたこのMVは、物語の続きが描かれた新規アニメーションであり、YouTubeでも500万回再生を超える人気だ。

このような素晴らしい作品体験を、一部の心ない行動で汚してはならない。「マナーを守って楽しい旅を」――これは単なる標語ではなく、作品と、その舞台を愛し続けるための唯一の絶対条件なのだ。

あなたの投稿した一枚の写真が、誰かの生活を壊していないか。あなたの踏み出した一歩が、その「聖地」を消滅させるきっかけになっていないか。映画館を出た後の「現実の世界」でも、私たちが『超かぐや姫!』の物語の続きを輝かせられるかどうかは、一人ひとりの「節度ある行動」にかかっている。

【参照】
超かぐや姫!公式
『超かぐや姫!』関連場所への訪問についてのお願い(公式サイトより)
【スラムダンクの“聖地”で迷惑行為多発】突然の観光地化によるオーバーツーリズム対応、失敗例と成功例(Wedge ONLINE)

【関連記事】

Tags

ライター:

サブカル分野を中心に執筆するフリーライター。アニメを中心とした二次元をこよなく愛し、推しへの愛とリスペクトを忘れず、作品の魅力やキャストの想いを届ける記事を心がけています。レビュー、考察、インタビュー、イベントレポートなど、多方面からアニメ・サブカルの魅力を発信。

関連記事

タグ

To Top