
福岡県内の中学校で、家庭科の調理実習で作ったピザを食べた生徒が体調不良を訴え、搬送された事案が報じられた。原因として塩の入れすぎが疑われたという。塩は生命維持に不可欠な栄養素である一方、摂取量や摂り方を誤れば、急性・慢性の両面で健康に影響を及ぼし得る。本稿では、塩分過多のリスクと1日の目安量、見落としがちな「隠れ塩分」に加え、塩分以外で過剰摂取になりやすい嗜好品と、過剰摂取を防ぐ実践策までを整理する。
塩は体に必要だが「総量」が健康を左右する
食塩に含まれるナトリウムは、体内の水分バランスの維持や神経・筋肉の働きに関わる。過剰に摂取した分は主に腎臓で調整され、体外に排出される。
ただし、短時間に極端に塩分を摂取した場合や、脱水などで体内の水分が不足した場合には、血液中のナトリウム濃度が上がり、強い口渇や、進行すれば錯乱、けいれん、昏睡などの神経症状を伴う「高ナトリウム血症」に至ることがある。通常の食事で起こることは多くないが、「一度に多い」という条件が重なると体調不良のリスクは上がる。
1日の塩分摂取量は何gが目安か
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病予防の観点から、食塩相当量の目標量を成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満としている。
これを3食で均等に分けると、1食あたりは2g台前半に抑える計算になる。小さじ1杯の食塩は約6gとされるため、日々の感覚より「許容量が小さい」と感じやすい。
慢性的な塩分過多が招く健康リスク
塩分摂取が多い状態が続くと血圧が上がりやすくなり、高血圧が持続すれば血管に負担がかかって動脈硬化の進行要因になり得る。その結果、脳卒中や心筋梗塞など循環器疾患のリスクが高まる。また、ナトリウム排出を担う腎臓への負担も論点となる。
慢性的な影響は自覚症状が乏しく、気づかないうちに積み上がりやすい。
意外と多い「隠れ塩分」食品5選
塩分は、調味料として振りかける量だけで決まらない。製造や加工の段階で含まれている食品も多く、味の印象ほど「少なくない」ことがある。数値は商品差が大きいが、見落としやすい代表例を挙げる。
- 食パン
甘みや香ばしさで塩気を感じにくいが、日常的に重なりやすい。2枚、3枚と食べるほど積み上がる。 - うどん・ラーメンの麺
スープが問題と思われがちだが、麺自体に塩分が含まれる場合がある。スープを残しても「ゼロ」にはならない。 - ハム・ウインナーなどの加工肉
保存性や風味のため塩分が入りやすい。朝食や弁当で出番が多く、他の食品と合算されやすい。 - ドレッシング
サラダが健康的でも、かける量で塩分は増える。商品によって差がある。 - 市販の惣菜・丼もの
味付けが濃くなりやすく、1食の塩分が高くなる傾向がある。外食やコンビニ利用が続くと、目標量を超えやすい。
塩分以外にも注意したい「過剰摂取になりやすい嗜好品」
| 品目 | 主な特徴 | 過剰摂取になりやすい理由 | 主な影響 |
|---|---|---|---|
| 砂糖(甘味飲料・菓子) | 甘味で摂取が進む | 飲料は満腹感が弱く量が増えやすい | 肥満、血糖管理の悪化、虫歯など(WHOは遊離糖類を総エネルギーの10%未満、可能なら5%未満を推奨) |
| アルコール | 習慣化しやすい | 食事とセットになりやすい | 肝障害、膵炎、循環器リスクや依存など(飲み過ぎはリスク因子になり得る) |
| カフェイン(コーヒー・エナジードリンク) | 覚醒作用 | 眠気対策で反復摂取 | 不眠、動悸、不安など |
| 脂質(揚げ物・スナック) | 高カロリー | 間食で手軽に増える | 体重増加、脂質異常のリスク |
| プリン体・飲酒習慣(ビール等) | 尿酸に関与 | 飲酒が継続しやすい | 高尿酸血症、痛風発作(アルコール自体も尿酸に影響し得る) |
過剰摂取を防ぐための具体策
塩分や糖分、脂質を完全に排除する必要はない。重要なのは総量の管理である。
第1に、「1日合計」で考える。朝に加工食品、昼に外食、夜に惣菜が重なると、目標量を超えやすい。単品の善悪ではなく、合算が問題になる。
第2に、食品表示を確認する。味の印象だけでは判断できないため、食塩相当量や糖類などを見て、摂取量の見える化を進める。
第3に、飲料を盲点にしない。甘味飲料やアルコール、カフェイン飲料は満腹感が弱く、短時間で量が増えやすい。
第4に、調味料は「計量」する。目分量は日によってブレる。小さじなどで量を測るだけで、総量管理が現実的になる。
第5に、外食・加工食品は頻度で調整する。続いた日は家庭で薄味にするなど、翌日以降で帳尻を合わせる発想が有効である。
まとめ――「禁止」ではなく「把握」で過剰を防ぐ
塩分も糖分も脂質も、適量であれば体に必要な成分である。問題は過剰であり、特に「無意識の積み重ね」が生活習慣病リスクを押し上げる。
禁止ではなく把握。単品ではなく総量。
日々の小さな確認が、将来の健康を左右する。



