
JOCの対策体制と確認された数字の衝撃
JOCは今大会で、選手を守るための特別チームを強化。
ミラノ現地と日本国内の2拠点で24時間体制の監視を実施し、AIを活用して不適切な投稿を検知している。12日までの総確認数は6万2333件に達し、削除申請数は1055件、実際に削除が確認されたのは198件にとどまる。削除率は約0.3パーセントと低く、対応の難しさを物語る。
過去のパリ五輪(8500件超)比で約7倍超のペースで増加しており、開幕からわずか1週間での数字にJOC内部でも驚きの声が上がっている。伊東団長は「想像以上のオンライン上でのハラスメントがある」と率直に認め、毎日大量の対応に追われる現状を語った。
選手の尊厳を傷つける言葉の深刻な影響
誹謗中傷対策担当者は会見で、「誹謗中傷や心ない言葉は選手の尊厳を傷つけ、不安や恐怖を与える。本来発揮できるパフォーマンスも発揮できなくなる」と強調した。名誉毀損、侮辱、脅迫などの行き過ぎた投稿については、関係機関と調整の上、警察への相談や法的措置も視野に入れる方針を明確にした。温かい応援が大多数を占める一方で、一部の悪質な声が選手のメンタルに深刻なダメージを与える事例が続出。JOCは「大舞台で活躍する選手を温かく見守っていただければ」と呼びかけ、健全な応援文化の醸成を訴えた。
近藤心音選手の棄権が引き金となった一例
この問題を象徴するケースとして、フリースタイルスキー女子の近藤心音(22)が挙げられる。
公式練習中の転倒で左膝前十字靱帯損傷などを負い、スロープスタイル予選を棄権。北京五輪に続く2大会連続の無念な結果となった。
棄権発表後、インスタグラムに「もし選ばれても次は辞退してくださいね」といった心ないコメントが届き、近藤はストーリーズで公開。
「それは今この状況にある私に対して言う言葉でしょうか。辞退するもしないも枠を掴み取った私が決めることです」と反論した。さらに「何年間も途方にくれるような努力をし続け、強くなった」「私の心は折れない」と強い意志を表明した。
一方、X上ではさらに過激な揶揄が散見され、「競技しないでオリンピック旅行やりきったんですよね」「強化費で海外旅行2回いけたし」「イタリア旅行いきたかったんやろ」「強化費で、お土産沢山買って」など、怪我を無視して税金の無駄使いや旅行目的の出場をほのめかす投稿が複数確認された。中には「引退して」「ドタキャンのスキルはありますよね」と引退を促すような内容もあった。
これらは少数ながら、棄権の悔しさを踏みにじるもので、報道でも取り上げられるほど注目を集めた。伊東団長は「現在はだいぶ収まってきた」と説明しているが、こうした声が選手の精神に与える負担は深刻だ。
大会全体の背景と過去大会との比較
ミラノ五輪は日本選手団が好調で、金2を含む10個のメダルを獲得し、北京五輪の最多記録(18個)更新ペースを維持している。しかし、SNSの普及と注目度の急上昇が、負の側面を増幅。JOCは開幕前にLINEヤフーやMetaとの連携を強化し、モニタリング体制を構築したが、想定を上回る件数に苦慮。北京やパリ五輪でも同様の問題はあったが、今大会の規模は過去最多級。伊東団長は選手の活躍を称えつつ、「選手に嫌な思いをさせたくない」と対策の重要性を繰り返した。
アスリートを支える温かい応援の重要性
JOCの取り組みは、選手が安心して挑戦できる環境を守ることを目的としている。誹謗中傷は個人の尊厳を踏みにじるだけでなく、競技全体のイメージを損なう。
担当者は「避けていただきたい」と改めて要請し、法的措置の強化を示唆。多くのアスリートが壮絶な努力を重ねて五輪の舞台に立つ中、心ない言葉が彼らの力を削ぐことはあってはならない。応援の声が大多数を占める今こそ、ポジティブな文化が広がることを願う。大会後半戦に向け、JOCは監視を継続し、必要に応じて厳正な対応を進める方針だ。



