
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのフリースタイルスキー男子モーグル決勝で、堀島行真(28歳、トヨタ自動車)が2大会連続の銅メダルを獲得した。予選で85.42点を記録し首位通過。決勝2回目では今大会最高難度のコーク1440を成功させ暫定トップに立ったが、最終的に0.27点差で金銀に逆転された。減点方式という採点構造の中で、技術革新はどこまで報われるのか。称賛と疑問が渦巻く一戦となった。
85.42点の予選首位と決勝2回目の大勝負
堀島は予選1回目で85.42点を叩き出し、ただ1人の80点台で首位通過を果たした。ターンの流動性、コブへの吸収、スピード維持はいずれも高水準で、減点方式の中で理想的な滑りだった。
決勝1回目は80.35点で5位。表彰台圏内ではあったが、金を狙うには攻めが必要だった。そこで決勝2回目、第1エアにダブルフルツイスト、第2エアにコーク1440を投入する。
オフアクシス4回転という極めて高難度の技を成功させ、フィニッシュ直後にガッツポーズ。中継したNHKの解説者も「完璧に近い」と評した。暫定トップに立った瞬間、会場は総立ちとなった。
コーク1440の意義と北京後の進化
コーク1440はモーグルでは成功例が限られる超高難度技だ。堀島は北京五輪後にノルウェーへ拠点を移し、夏場に100本以上の反復練習を重ね成功率を90%近くまで高めたとされる。
2025年世界選手権優勝の武器を五輪で投入した背景には、「決めれば金、決まらなくても銅」という戦略があった。今大会で最も難度の高いエアを成功させたのは堀島であり、その技術的完成度は大会随一との評価も多い。
減点方式と0.27点差 難度はなぜ伸びないのか
モーグルはターン60%、エア20%、スピード20%の減点方式。難易度の高い技を繰り出しても大幅な加点はなく、いかにミスを減らすかが最優先となる。
堀島のエア点は17.06点で上位3人中最低。着地でわずかに右へ流れたラインのずれが減点につながった。技術水準は今大会No.1との声がある一方、細かな減点が積み重なり金には届かなかった。
金メダルのクーパー・ウッズ、銀メダルのミカエル・キングズベリーは、難度を抑えながらターンの安定性で高得点を確保した。攻めの姿勢は見せつつも構成は堅実で、減点方式では合理的な戦略だった。
原大智氏はNHK中継で「ミスの度合いが最も大きかった」と分析し、制度の中での妥当性を説明した。
SNSで噴出した称賛と不満の声
決勝直後からXには称賛が殺到した。
「コーク1440がかっこよすぎる」「攻めた姿勢に震えた」「歴史を見た」といった声が拡散した。
一方で、「なぜ4回転が2回転に負けるのか」「難度が評価されていない」「採点が意味不明」「AI採点を導入すべきだ」という不満も広がった。
海外からも「Horishima robbed gold」「Unfair judging」といった投稿が見られ、議論は国境を越えた。
中には「欧米の選手が勝てるようルールが設計されているのではないか」との疑念もあった。ただし、現行ルールは国際基準に基づくものであり、特定の地域を利する設計と断定するには根拠が必要である。
それでも、挑戦的な技術が十分に報われないと感じる構造が議論を呼んだことは事実だ。
堀島行真の言葉と競技の未来
レース後、堀島は「右に流れたことが減点要素だった」「メダルは満足だが悔しい」と語った。「実力は示せた」「妻に捧げたメダル」と前向きな姿勢を崩さなかった。
28歳。円熟期にある堀島は、1人で新たな技術の完成を追求してきた。長野五輪金メダリストの里谷多英は「レベルを上げてくれた」と評価する。
減点主義の枠内で届かなかった金。しかし、コーク1440は競技を確実に前へ進めた。今回の銅メダルは単なる3位ではない。難度評価の在り方、採点の透明性、競技の方向性を問い直す象徴的な結果となった。



