ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

斯波正樹フッ素失格はなぜ起きたのか ハヤシワックス声明で判明した“海外製施工”の事実【ミラノ五輪】

コラム&ニュース コラム
リンクをコピー
斯波 正樹
斯波正樹 公式インスタグラムより

白い息が夜の空気に溶ける。
スタート台の静寂を切り裂くように、エッジが雪面を噛んだ。

現地時間2月8日、ミラノ・コルティナオリンピックスノーボード男子パラレル大回転予選。39歳の斯波正樹は44秒68で1本目を滑り終えた。五輪の舞台で、2本目へとつなぐ滑りだった。

だが、歓声の余韻が消えぬうちに事態は一変する。
ボードの検査で、使用禁止のフッ素成分が検出されたという通知。判定はDSQ(失格)。あまりにも唐突な幕切れだった。

 

 

「何が起きたのか分からない」 突然の失格宣告

近年、国際スキー連盟(FIS)は環境負荷の観点からフッ素含有ワックスを全面禁止としている。滑走後には専用機器で即時検査が行われ、陽性反応が出れば理由の如何を問わず失格となる。

斯波は競技後、「何がどうなっているのか分からない」と胸中を明かした。自身のSNSでは、これまでワールドカップで同一の板・同一のワックス構成を使用し、毎試合検査を受けてきたが、陽性が出たことは一度もなかったと説明している。

さらに非公式機器で再検査を行ったところ、フッ素は検出されなかったという。しかし公式判定は覆らなかった。

その夜、雪山の空気はひどく冷たかった。

 

前夜の違和感 “いつもと違う”ワクシング

今回の五輪では、宿泊地とワックスキャビンが離れていた。いつも依頼しているサービスマンも別拠点に滞在していたため、斯波はやむなくチームコーチにワックス作業を依頼した。

エッジは自ら整えた。だが滑走面の仕上げは他者に託された。

レース前夜、コーチから「他国チームのサービスマンと同じ内容を教えてもらって塗っている」と聞かされたという。その瞬間、手渡したワックスとは異なる可能性を認識した。

しかし、すでに深夜。変更を求めるには時間がなかった。

「もっと強く意思表示すべきだった」

後悔は、競技後に静かに言葉となった。

 

ハヤシワックスが明確否定 「弊社製品が原因ではない」

今季ワールドカップなどで斯波が使用してきた日本メーカー、ハヤシワックスは、日本時間11日、公式サイトで声明を発表した。

林真子代表名で掲載された文書は明快だ。

「弊社ハヤシワックス製品からフッ素が検出された事実は一切ない」

声明によれば、今回ワクシングを行ったコーチは同社製品の施工経験がなく、他国チームで使用されていた海外製ワックスを施工したという。つまり、問題の工程は同社製品によるものではない可能性が高いという説明である。

一部報道が、あたかも同社製品が原因であるかのように受け取られかねない表現をしている点にも懸念を示した。

メーカーと選手。両者がそれぞれの立場で、事実関係の整理を急いでいる。

 

韓国でも発生 広がるフッ素ワックス騒動

同大会では、韓国のノルディックスキー女子2選手もフッ素検出で失格となった。韓国紙「朝鮮日報」によると、フッ素を含まないと説明されていた製品の一つから成分が検出されたという。

偶然なのか。管理体制の問題なのか。
複数国で起きた“想定外の陽性”は、競技界全体に波紋を広げている。

 

「意図的に使う理由はない」39歳の矜持

斯波は自身の活動費が年間2000万円以上にのぼることを明かし、毎試合フッ素検査が行われる状況下で、あえて禁止物質を使う合理性はないと強調した。

「私はメダル候補と呼ばれる存在ではありません」

そう語りつつも、競技への姿勢は一貫している。

「これまで通り、競技と正面から向き合ってきた事実は変わらない」

五輪という極限の舞台で、キャリアの晩年を迎えた一人のアスリートが背負う重み。その言葉は静かだが、揺るがない。

 

今後の焦点 検査精度か、施工過程か

原因はどこにあるのか。

・施工時の混入
・他製品との接触
・検査機器の感度
・製品表示の信頼性

ワックスは微量成分で性能が左右される繊細な世界だ。全面禁止後も、現場では混乱や誤認のリスクが指摘されてきた。

斯波は監視カメラ映像の確認を進める意向を示している。前夜から早朝までの約8時間に何があったのか。真相解明は容易ではない。

だが確かなのは、雪面に刻まれた一本の軌跡が、不正か過失かという単純な言葉では語りきれないという事実だ。

 

Tags

ライター:

広告代理店在職中に、経営者や移住者など多様なバックグラウンドを持つ人々を取材。「人の魅力が地域の魅力につながる」ことを実感する。現在、人の“生き様“を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。

関連記事

タグ

To Top