
東京都新宿区の認可保育園に勤務していた保育士、木村正章容疑者(40歳)が不同意わいせつ容疑で逮捕された事件は、保育現場への信頼を根底から揺さぶっている。被害相談は20件以上、捜査関係者の間では数十件規模に拡大する可能性も指摘されており、長期間にわたる常習的犯行の疑いも浮上している。過去にも同種事件が繰り返されてきた中で、なぜ今回も防げなかったのか。保育の現場は本当に安全と言えるのかが、改めて問われている。
事件の概要 泊まり保育という密室で起きた犯行
逮捕容疑の中核は2024年1月、長野県立科町の宿泊施設で実施された学童クラブ主催のウィンターキャンプだ。木村容疑者は指導員として参加し、夜間、就寝中の小学生男子児童が眠る部屋に入り、下半身を触るなどのわいせつ行為をした疑いが持たれている。
当時は複数の指導員が配置されていたものの、夜間の見回り体制は限定的で、児童就寝後の行動が把握されにくい状況だったとされる。警視庁は、こうした環境が犯行を容易にした可能性があるとみている。
逮捕は2026年2月4日。木村容疑者は取り調べに対し「やっていません」と容疑を否認しているが、被害児童の供述や周辺証言、押収物をもとに慎重な裏付け捜査が続いている。
被害相談は20件超 氷山の一角とみられる理由
今回の逮捕が「終点」ではないとみられている最大の理由が、被害相談の多さだ。勤務先の保育園および系列学童クラブに通っていた男児を中心に、保護者からの相談は20件以上に上り、一部報道では数十件規模に拡大する可能性も指摘されている。
最初の相談は2025年10月ごろ、ある保護者が「息子が男性保育士に下半身を触られた」と警視庁に通報したことだった。
その後、同様の体験を語る声が相次いだ。
「冗談のように触られた」
「風呂場で体を触られた」
「寝ているときに触られた」
いずれも日常保育や宿泊行事など、外部の目が届きにくい場面に集中している点が共通している。
子どもと家庭に残る深刻な後遺症
被害を受けたとされる子どもたちには、明確な変化が現れている。
ある保護者は「夜になると突然泣き出す」「理由もなく自分を責める言葉を口にするようになった」と語る。別の家庭では「1人で『死ねばいい』と言うようになり、専門的なケアが必要になった」という証言も出ている。
捜査関係者によると、押収されたスマートフォンからは児童ポルノを含むわいせつ画像が約1200点見つかったとの情報もあり、警視庁は木村容疑者が4年から5年ほど前から同様の行為を繰り返していた可能性があるとみて、余罪の捜査を進めている。
24時間認可保育園という前提 信頼が裏切られた現場
木村容疑者が勤務していたのは、新宿区にある24時間体制の認可保育園で、生後43日からの預かりを掲げていた。医療関係者や公務員、飲食店従業員など、夜間や不規則勤務の家庭を支える存在として利用されてきた。
事件発覚後、木村容疑者は謹慎・勤務停止となり、運営法人は「事実関係を確認し厳正に対処する」とコメントしているが、園名は公表されていない。
過去にも繰り返された同類事件 同じ構図の再来
今回の事件は決して例外ではない。
札幌市では、元保育士の川瀬智弘が勤務先で男児14人にわいせつ行為を行い、撮影して児童ポルノを作成。2020年に懲役10年の判決を受けた。
千葉県野田市では、元保育士の水浦雄太が園児約10人にわいせつ行為を行い、「内緒に」「ダンスの練習」と言って口止めしていたことが明らかになり、2021年に懲役6年判決。
元ベビーシッターの橋本晃典事件では、男児20人への性暴力と撮影が長期間にわたって繰り返され、2022年に懲役20年判決が言い渡されている。
いずれも、立場の優位性、密室性、子どもが声を上げにくい環境という共通構造を持つ。木村事件もまた、その延長線上にある。
SNSで噴き上がる怒りと不安
事件発覚後、SNSでは強い反発が広がった。
「優しい先生ほど疑えない構造が怖い」
「また同じタイプの事件が起きた」
「必ずまたやるから一生塀の中にいろ」
一部では偏見拡大を懸念する声もあるが、多くは被害児童への支援と再発防止策の徹底を求めている。
この事件は、異常な個人の問題として切り離すには無理がある。過去に何度も前例がありながら、保育現場の構造は十分に変わってこなかった。
警視庁は余罪を含めた捜査を続ける方針だが、社会に突き付けられているのは「次を生まないために何を変えるのか」という根本的な問いだ。



