
仕事で帰宅が遅くなった日の夕食をどうするか。社会人の間で、自炊を前提としない食生活が定着しつつある。背景には、長時間労働や疲労、単身化といった生活構造の変化がある。こうした自炊離れは、個人の選択にとどまらず、スーパーや外食産業、企業の制度設計にも影響を及ぼしている。本記事では、調査データを手がかりに、自炊離れが社会の仕組みをどう変えつつあるのかを検証し、外食や買い食と無理なく付き合う視点を探る。
帰宅が遅い日の夕食、最多は「買って帰る」
仕事で帰りが遅くなった日の夕食をどうするか。社会人の食生活は、自炊を前提としない形へと移行しつつある。
株式会社R&Gが社会人の男女500人を対象に実施したインターネット調査では、帰宅が遅い日の晩ご飯で最も多かった回答は「買って帰る」だった。調査期間は2025年12月8日〜9日で、結果は2026年1月14日に公表された。
「中食」が日常化し、自炊は“その場で作る”から遠のく
「帰りが遅い日の晩ご飯はどうするか」(複数回答)では、「買って帰る」が43.6%と突出し、「作り置きを食べる」(21.2%)、「手軽なものを食べる」(20.6%)、「外食する」(19.4%)が続いた。
出来合いを活用して負担を減らしつつ、作り置きや簡単調理で折り合いをつける姿も見える。自炊は「一から作る」行為から、外部のサービスを組み合わせる形へと変質している。
よく食べるのはインスタント麺と弁当 時短が選択を支配する
「帰りが遅い日の晩ご飯でよく食べるもの」では、「インスタント麺」(19.0%)が最多で、「出来合いの弁当」(17.4%)、「パスタ」(15.0%)が続いた。
短時間で準備でき、後片付けの負担も少ない点が共通している。忙しさがメニューの幅そのものを狭めている。
最大の悩みは「食費」 利便性の裏で家計が揺れる
悩みの最多は「食費が高くなる」(29.0%)で、「自炊する気が起きない」(24.2%)、「栄養が偏る」(17.4%)が続いた。
自由回答には、コンビニ利用で出費が増える声や、仕事の疲労から衝動的に購入してしまうという声も寄せられた。時間を買う代わりに、費用や健康面で調整が求められている。
販売側は「作らない前提」に寄せ、市場は中食へ厚みを増す
自炊離れが進むにつれ、売り場の主役は食材から「即食・簡便」商品へ移っている。
スーパーでは惣菜売り場の比重が高まり、コンビニでは弁当や冷凍食品が主力となった。食を「外部化」する動きが、商品構成そのものに反映されている。
外食産業は「店で食べる」から「家で食べる」へ
飲食店でも、テイクアウトやデリバリーが標準的なサービスとなった。
厨房は接客の場にとどまらず、家庭向けに料理を供給する拠点としての役割も担い始めている。
企業も「健康な食事へのアクセス」を設計し始めた
個人の努力だけでは整えにくい食生活に対し、企業側が環境整備で支える動きも出ている。
社員食堂のメニュー改善や、食事補助制度、社内での健康志向商品の販売など、「自炊を促す」より「健康的な選択肢を増やす」施策が中心となっている。
外食・買い食は悪者ではない 付き合い方が問われる段階へ
外食や買い食の増加は、怠慢や嗜好の問題ではなく、帰宅時間の遅さや疲労と結びついた生活構造の結果である。
重要なのは、外食や中食を排除することではなく、日常の中でどう付き合うかである。
選び方で差がつく栄養のバランス
外食や弁当は塩分や脂質が多くなりやすい。一方で、サラダや野菜のおかずを一品加えるだけでも、食物繊維やビタミンを補える。
揚げ物が続く場合は、次の食事で焼き魚や煮物を選ぶなど、調理法を意識的に変えることで偏りを抑えられる。
「連続させない」という考え方
1食ごとの理想を追うより、数日単位での調整が現実的である。
外食や弁当が続いた翌日は、野菜が多いメニューを選ぶ、主食を一つに絞るなど、小さな修正を積み重ねることが重要となる。
外食・中食は「生活を支えるインフラ」へ
外食や買い食は、もはや例外的な行動ではなく、働く人の生活を支えるインフラに近づいている。
自炊離れは、個人の問題というより、時間と労力をどう社会で分担するかという問いを突きつけている。
自炊離れは社会の設計変更を映す現象
食事は「整えるもの」から「日常を乗り切るための手段」へと役割を変えつつある。
販売側、外食産業、企業の制度はいずれも、この変化に適応する形で再編されている。
自炊離れは、食の問題であると同時に、働き方と生活リズムの再設計を映す社会現象である。



