
32歳で医師を志し、7度の浪人と留年を経て53歳で医師免許を取得した女性(60)のインタビュー記事が1月18日、配信された。21年にも及ぶ苦難の道のりを乗り越え、3人の子育てと両立させながら夢を掴んだ姿は「努力の美談」として報じられた。
しかしその一方で、医療現場の現実を知る現役医師やネット上からは、その到達点や資質を巡り、冷ややかな反応や疑問の声が噴出している。
21年越しの夢と「僻地医療」への志
渦中の人物は、現在60歳となる新開貴子医師だ。記事によれば、彼女は一度は臨床心理士の道を進むも、32歳で医学部再受験を決意した。7浪の末に40歳で私立大学医学部に入学し、その後も留年や国試不合格を経験しながら、53歳でついに医師免許を取得したという。
インタビューでは、長男がハンガリーの医学部に進むなど、母の姿が子供たちに好影響を与えたと語られている。本人は現在、総合診療内科で従事しているとし、「いつか医療の確保が困難な僻地に行って、困っている人を救いたい」と今後の抱負を熱く語った。
「研修に耐えず脱毛医」現場からの告発
しかし、この感動的なストーリーに対し、医療法人さくらライフグループ代表の中田賢一郎医師がSNSで投じた苦言が大きな波紋を呼んでいる。中田氏は、当該記事の女性医師について、研修の厳しさに耐えきれず、結局は臨床を離れて脱毛医になったと指摘したのだ。
中田氏は、高齢になってから医師になることは一般的には美談とされがちだが、実際の医療現場ではほとんど意味を持たないと断じる。体力や記憶力で劣るため臨床力や将来性で勝負できず、最終的に自由診療や金儲けに流れるケースが多いというのが、現場から見た偽らざる現実だという。
税金投入と「適性」への疑問
さらに議論は、医師養成にかかるコストと適性の問題にも及んでいる。医師の育成には多額の税金が投入されているが、活動期間が短く、社会的リターンの乏しい分野に流れるのであれば、公的資金を投じる対象として不適切ではないかという指摘だ。
中田氏は、医師国家試験に年齢制限や受験回数制限を設けるべきだとも提言している。一度や二度の失敗ならまだしも、何度も試験に落ちる人物が、命を預かる臨床医として機能するとは到底思えないとし、これは差別ではなく医療の質と国民の安全の問題だと結論づけた。
資金力への冷ややかな視線
ネット上では、この美談の背景にある強大な資金力にも注目が集まっている。女性が卒業した私立医学部は学費が高額なことで知られ、さらに息子が通うハンガリーの医学部も、日本の医学部受験に失敗した層の留学先として知られる。7浪して私立医大へ通い、子供を海外へ留学させる資金力に対し、一般家庭では不可能な道楽ではないかといった辛辣なコメントも相次いだ。
僻地医療を志すと語りながら、現実は自由診療の現場に身を置くというギャップ。一人の女性の「夢の実現」は、個人の自由の範疇を超え、医療制度の在り方や医師の資質そのものに重い問いを投げかけている。



