
2025年の大晦日、横浜市の「戸塚駅前鈴木眼科」が突如として看板を下ろしました。1月以降に手術を控えていた患者たちは、高額な前払金を支払ったまま連絡が取れない事態に陥っています。「期間限定値引き」という甘い言葉の裏で何が起きていたのか。
専門家は、年末に合わせた周到な「計画倒産」の可能性と、医師としての倫理を完全に欠いた経営実態を厳しく断罪しました。
「期間限定50万円引き」の罠と閉ざされた扉
神奈川県横浜市戸塚区にある戸塚駅前鈴木眼科が、2025年12月31日付で閉院したという事実は、患者たちにとってあまりにも残酷な形で知らされました。年明けの1月13日に手術予約を入れていたある患者は、多焦点眼内レンズを用いた自由診療の手術費用として、すでに約170万円もの大金をクレジットカードで決済済みでした。しかし、ホームページはダウンし、電話も繋がらない。手元に残ったのは、巨額の請求と「騙されたのではないか」という戦慄だけです。
この患者が契約を急かされた背景には、巧妙なセールストークがありました。病院側は「本人専用のレンズを注文する必要がある」と前払いの正当性を主張し、さらに「期間限定で50万円の値引き」という破格の条件を提示していたのです。高額な医療費に悩む患者の心理を突いたこの手法により、多くの患者が安易な前払い契約へと誘導されてしまった可能性があります。
専門家が読み解く「自転車操業」の末路
この事態に対し、数多の倒産事例を研究してきた専門家は、今回のケースを典型的な「法人ごとの倒産」であると分析しています。その背景にあるのは、高額な医療機器の購入による資金繰りの悪化や、多焦点眼内レンズを商材とした無理なビジネスモデルです。専門家によれば、自由診療を主軸とするチェーン展開のクリニックは、しばしば「自転車操業」の状態に陥っているといいます。
それは、新規の患者から受け取った前金を、そのまま次の店舗の開設資金や運転資金に回すという危うい構造です。資金が回っているうちは表面化しませんが、ひとたび流れが滞れば即座に破綻する。その構図は、社会問題化したエステ脱毛サロンの倒産劇と何ら変わりません。専門家は、何百回と言い続けてきた「前金を取る医療機関はやめたほうがいい」という警告が、最悪の形で現実になったと指摘します。
「撤退戦」すら放棄した医師のモラル崩壊
さらに今回の件で特筆すべきは、閉院が「12月31日」という年末の節目に行われている点です。専門家はこのタイミングについて、突発的な事故ではなく、かなり前から破産準備を進め、年末に合わせて意図的に倒産させた「計画倒産」の可能性が極めて高いと見ています。
本来、経営難に陥ったとしても、医師としての良心があれば「撤退戦」を試みるはずです。外来を先に停止して既存患者を他院へ紹介し、スタッフが無給で働いてでも患者への被害を最小限に抑える「ソフトランディング」を目指すのが、医療現場における最低限の誠意です。
しかし、同院はそれをしませんでした。倒産させる期日がおそらく決まっていたにもかかわらず、その直前まで「期間限定値引き」を謳い、患者から現金をかき集めていたことになります。専門家はこれを「医者としても商売人としても、絶対にやってはいけない禁じ手」であるとし、最後まで信じてついてきた患者を裏切る行為に強い憤りを示しています。
患者は「経営判断」などできない
集められた前金は医師個人の懐に入るわけではなく、破産手続きが始まれば債権者への配当原資として消えていきます。取引業者が焦げ付き被害に遭ったのであれば、危ない相手と取引をしたという「経営判断のミス」として自己責任論も成り立つでしょう。しかし、患者は違います。一般の患者に病院の財務状況を見極める術などあるはずがなく、「医者選びが悪かった」で済まされる話ではありません。
経営者だけが痛みを負うべき局面で、何の罪もない患者に金銭的苦痛を強いた今回の事件。専門家は、現金払いの少額債権回収は絶望的であるとする一方、カード払いの被害者に対しては、直ちにカード会社へ連絡し、支払いの停止を申し出るよう強く推奨しています。医療の仮面を被ったビジネスの暴走に、消費者はかつてないほどの警戒を求められています。



