
女優の波瑠(34)と俳優の高杉真宙(29)が結婚したことを23日にそれぞれのファンクラブ会員へ真っ先に報告が行われた。今月上旬、2人は都内の区役所にそろって婚姻届を提出し、親族など身内のみで結婚式も挙げた。交際期間は約2年。双方の所属事務所も結婚の事実を認めている。
共演が生んだ信頼 静かな交際の始まり
2人の関係は、2023年4月期のフジテレビ系連続ドラマ「わたしのお嫁くん」での共演から始まった。職場を舞台にしたラブコメディーで、波瑠は仕事は完璧だが私生活は不器用な主人公を、高杉は家事能力に優れた後輩社員を演じ、新しい男女の在り方を提示した作品として注目を集めた。撮影は同年2月から約4カ月に及び、共演シーンの多さもあって、自然と互いを理解する時間が積み重なっていった。
現場関係者によると、2人はいずれも人見知りで内向的な性格。撮影の合間に目立った距離の縮まり方を見せることはなかったが、「芝居について静かに話し込む姿が印象的だった」(制作関係者)という。演技への向き合い方や仕事観が似ており、表に出ない部分で信頼関係が育まれていった。
交際に発展したのは、ドラマの放送終了からしばらくたった頃。売れっ子同士のため頻繁に会うことはできなかったが、無理に距離を詰めることはせず、穏やかな関係を保ってきた。熱愛報道が一切出なかった背景には、私生活を慎重に守る2人の姿勢があったとみられる。
その歩みは、結婚発表の言葉にも表れている。2人は結婚後、自身のInstagramに文書画像を投稿し、連名で結婚を報告。
そこでは冒頭で「いつも応援してくださっている皆様へ」と切り出し、日頃の支えへの感謝を述べた上で、「この度、私たちは結婚する運びとなりましたことをご報告させていただきます」と結婚を正式に伝えた。
さらに、「仕事を通じてお互いを知り、時間を重ねる中で、これからの人生を共に歩んでいきたいという思いに至りました」と、共演を起点とした関係の深化に言及。「未熟な二人ではありますが、この結婚を機に、人として、役者としてもより一層成長できるよう、真摯に仕事と向き合っていく所存です」と、今後への決意もつづられていた。最後は「今後とも変わらぬご厚誼を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします」と結ばれ、控えめながらも誠実な文面が印象を残した。
共演によって芽生えた信頼は、静かな交際期間を経て、言葉を尽くし過ぎない報告という形で結実した。華やかさよりも積み重ねを大切にしてきた2人の関係性が、そのまま映し出された発表だったと言えそうだ。
オンラインゲームがつないだ距離
2人を静かに結びつけたのは、共通の趣味であるオンラインゲームだった。どちらも「芸能界きってのゲーム好き」(テレビ局関係者)として知られ、仕事の合間にもゲームを楽しむインドア派。特に波瑠は、女優の本田翼(33)や野呂佳代(42)、山田涼介(32)らとゲームを通じた交友関係を築いてきたことで知られ、その人脈はたびたび話題になってきた。
フジテレビ系「わたしのお嫁くん」の撮影現場でも、高杉との共演シーンが多かったことから自然と距離が縮まっていったという。制作関係者は「2人がそろって時間の空いた時には、仲良くゲームをしながら親交を深め、同時に演技についての議論を交わすようになっていった」と振り返る。単なる息抜きではなく、役作りや作品への向き合い方を共有する時間として、ゲームが機能していた点が印象的だ。
売れっ子同士だけに、撮影終了後はそれぞれ多忙を極め、頻繁に会うことは難しかった。それでもオンライン上で同じ空間を共有することで、生活リズムや価値観への理解を深め、チャット機能を通じて細やかな意思疎通を重ねていったという。「離れていても一緒に過ごしている感覚があり、自然と信頼関係が強まっていった」(ドラマ関係者)との証言もある。
人見知りで恋愛に慎重な2人にとって、オンラインゲームは無理なく距離を縮められる最適な手段だった。現実世界では控えめだった関係性が、仮想空間を介することで確かな絆へと変わっていった点に、このカップルらしい時代性がにじんでいる。
波瑠の歩み 国民的ヒロインから実力派へ
波瑠のキャリアは、一見すると順風満帆に見えるが、その内実は長い下積みと軌道修正の積み重ねに支えられている。1991年6月17日生まれ、東京都出身。十代で芸能界入りし、2006年に女優デビューを果たしたものの、当初は端役や単発出演が続いた。華やかな注目を浴びるまでには、約10年に及ぶ助走期間があった。
転機となったのが、2015年放送のNHK連続テレビ小説「あさが来た」でのヒロイン抜擢である。実在の女性実業家をモデルにした役柄を、快活さと芯の強さを併せ持つ人物像として表現し、視聴者から高い支持を得た。この作品を機に「国民的ヒロイン」という肩書きが定着したが、波瑠自身はその後、あえて安定路線に安住することなく、役柄の幅を広げる選択を重ねていく。
ラブストーリー、社会派ドラマ、医療ドラマとジャンルを横断し、TBS系「あなたのことはそれほど」、テレビ朝日系「未解決の女」、フジテレビ系「Night Doctor」などで主演を務めた。いずれの作品でも共通しているのは、感情を過度に誇張せず、現実に生きる女性の揺らぎを丁寧に掬い取る演技姿勢だ。近年のTBS系「フェイクマミー」では、母性や家庭という重いテーマを背負いながらも、説教臭さを排した自然体の芝居で主婦層の共感を集めた。
年齢を重ねるごとに、ヒロイン像は「憧れ」から「共感」へと変化している。国民的女優という看板を背負いながらも、実力派としての評価を地道に積み上げてきた点に、波瑠という俳優の現在地がある。
高杉真宙の現在地 着実に積み重ねたキャリア
高杉真宙は1996年7月4日生まれ、福岡県出身。子役出身ではないが、若年期から映像作品に触れる機会に恵まれ、2009年に俳優デビューを果たした。10代の頃は端正なルックスが先行して語られることも多かったが、本人は一貫して「役者としてどう残るか」を意識し、出演作を選んできた。
2012年の映画「カルテット!」で初主演を務め、以降、映画を中心にキャリアを形成。2017年には映画「散歩する侵略者」での演技が評価され、第72回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞した。この受賞は、若手俳優としての立ち位置を一段引き上げる象徴的な出来事となった。
その後は話題作への出演が相次ぎ、NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」では物語の要所を支える役どころを好演。近年ではTBS日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」で競馬界を舞台にした難役に挑み、静かな闘志を内包した演技で存在感を示した。派手さよりも説得力を重視する姿勢は、映像制作者からの信頼につながっている。
さらに年明け公開の主演映画「架空の犬と嘘をつく猫」では、人間関係の機微を描く繊細な役に挑戦する。30歳を前にして、高杉は「若手」から「中核」へと立場を移しつつある。着実に経験を積み、役柄の引き出しを増やしてきた歩みこそが、現在の安定感を生んでいると言える。
忙しさの先に描く新章
高杉真宙は今月、結婚という人生の大きな節目を迎えた直後、故郷の福岡県に住む最愛の母親を病気で亡くしていた。突然の別れに深い悲しみを抱える中で、精神的な支えとなったのが妻となった波瑠だったという。
2人が多忙なスケジュールの合間を縫い、親族など身内だけで結婚式を挙げた背景には、母親への強い思いがあったとみられている。当日、病床から式場に駆け付けることはかなわなかったものの、「せめて結婚した姿を見せてあげたかった」という高杉の気持ちがあったというのが周囲の見方だ。
高杉には2人の弟がおり、男兄弟3人を育て上げた母親は、仕事をしながら家庭を支えてきた存在だった。関係者によると、高杉にとって母親は精神的な支柱でもあり、「中学時代に上京して以降、仕事がうまくいかず悩んでいた時期も、いつも電話で励ましてくれたのがお母さんだった」という。俳優としての歩みの裏には、母親の言葉と支えが常にあった。
人生の喜びと喪失が重なった今月。高杉にとって結婚は、単なる環境の変化ではなく、これまで支えてくれた家族の思いを背負い、新たな責任を引き受ける決断でもあった。その隣には、悲しみの只中でも寄り添い続けた波瑠の存在がある。
多忙な日々の先に描かれる新章は、決して平坦なものではない。それでも2人は、これまでと同じように、静かに、誠実に歩みを進めていく。支え合うという言葉の重みを、誰よりも実感した上での夫婦のスタートとなった。



