
M-1グランプリの決勝戦が行われ、お笑いコンビ・たくろうが初優勝を果たした。
結成から長い下積みを経てたどり着いた栄冠は、派手なストーリーや強烈なキャラクターではなく、まるで大喜利のような無茶振りに対して「分かっていないのにそれっぽいことを言う」という高度なズレの笑いだった。
「たくろう」が大番狂わせのM-1優勝!漫才界の異色コンビがついに頂点へ
お笑いコンビ・たくろうが結成から約10年、M-1グランプリ2025決勝初出場で優勝を果たした。
優勝候補として名高かった真空ジェシカ、ヤーレンズはなんとファーストラウンド敗退、昨年も決勝進出し今回はファーストラウンド1位通過のエバースをも破っての優勝となり、まさに大番狂わせだった。
ファーストラウンド:ボクシングを知らないアナウンサーのリングアナウンス
ファーストラウンドで披露したのは、ボクシングのリングアナウンスを題材にした漫才。リングアナウンスのような煽り文句を、ボクシングの知識があるきむらバンドとボクシング知識ゼロの赤木が交互に言い合う形となった。
「WBC、世界王者!」に対し「WHO、世界保健機関!」などと、競技知識がまったくないままそれらしい言葉遣いと抑揚だけで実況を成立させていく構成はあたかも3文字大喜利で、観客に「ズレたことを言っているのに、それっぽい」という独特の笑いをもたらした。
最終決戦:アメリカンコメディ吹き替え風口調で、ビバリーヒルズに住む練習
最終決戦では一転して、ビバリーヒルズに住む練習という設定の漫才を披露。
アメリカンコメディの吹き替えを思わせる大げさな語り口で、「ビバリーヒルズっぽいこと」を必死にひねり出していく構成が会場を包み込んだ。
「GoogleでAIを開発しているジェームズ」に対し「Yahoo!で天気予報を見ているジョージ」と自己紹介するなど、スケールが大きいキラキラした世界と対照的な規模が小さいしょうもない返しをしているのが面白く、ワンフレーズごとに爆発的な笑いを生み出していた。
その結果、審査員9人中8人がたくろうに投票するという、ほぼ満場一致での優勝となった。
結成から現在まで10年間、M-1との長い付き合い
たくろうは2016年に結成し、その年から毎年M-1グランプリに挑戦し、今年で10年目。
2018年に準決勝後の敗者復活戦(決勝の手前)まで勝ち上がるも、それ以外の年は3回戦・準々決勝止まりが続き、ブレイクとは無縁の時期を過ごしてきた。
派手な躍進ではなく、じわじわと評価を積み上げてきた末の今回の戴冠だった。
お笑いコンビ「たくろう」プロフィール
たくろうは、2016年3月9日に吉本興業大阪本社で結成された漫才コンビだ。ネタの個性と人間性の魅力で多くのファンを獲得してきた。
・赤木裕(あかぎ・ゆう) — 立ち位置左、ボケ担当。滋賀県出身、1991年10月24日生まれ。
・きむらバンド — 立ち位置右、ツッコミ担当。愛媛県松山市出身、1990年1月28日生まれ。
二人は吉本総合芸能学院(NSC)の大阪校で先輩後輩として出会い、漫才への共通の思いからコンビを結成した。
「たくろう」というコンビ名の由来は、きむらバンドが尊敬する「木村拓哉」と赤木が尊敬する「イチロー」への憧れが由来という説がネット上でも取り上げられている。
このユニークな命名には、二人が「圧倒的なカリスマ性と歴史に残る活躍を目指したい」という意図が込められているとされ、キャッチーな響きと覚えやすさがウケてファンの間でも話題になっている。
「無茶振り大喜利」を武器にした異色の王者
今回の優勝は、「分かりやすさ」や「瞬間的な爆発力」が重視されがちなM-1の歴史の中でも、異色の結果と言える。
たくろうの漫才は、きむらバンドの無茶振りとも言える「フリ」があたかも「大喜利のお題」のようになり、赤木が苦し紛れに変なことを言うところに面白さがある。
新時代の漫才像を示した夜
結成から10年、遠回りの末につかんだM-1王者の称号。
たくろうの優勝は、技巧や情報量ではなく、ズレを恐れない感覚の強さが武器になることを証明した。
この夜を境に、「無茶振り大喜利漫才」が新しい漫才のジャンルとなるのかもしれない。



