
仙台の冬空の下、楽天モバイルパークに静かな緊張感が漂っていた。報道陣のフラッシュが一斉にたかれるなか、ゆっくりと姿を現したのは前田健太投手(37)だ。米大リーグで9シーズンを過ごし、11年ぶりに日本球界へ復帰。その第一声で、右腕は迷いのない言葉を口にした。
「楽天で現役を終える覚悟できています。生半可な気持ちで球団を選んだわけではない」
前田は入団会見で「自分のキャリア最後のチームだと思って、このチームでやりたいと思い、入団させていただいた」と語り、生涯イーグルスを誓ったという。
「最後のチーム」覚悟がにじんだ入団会見
ドジャースをはじめメジャーの舞台で戦い続けてきた前田にとって、日本復帰は決して容易な選択ではなかった。今季は苦しい時期も経験し、5月にはタイガースを離脱。その後もマイナーで調整を続けた。
それでもシーズン終盤、ヤンキース傘下3Aで先発した最終戦では5回無失点と健在ぶりを示した。前田は「悪い時期もあったが、時間をかけて修正し、最後は自信を持ってマウンドに立てていた。その部分を見て評価してもらえたことが大きかった」と振り返っている。
単なる日本復帰ではない。「勝つための一員として声をかけてもらった」。その言葉に、決断の重みがにじんでいた。
背番号18を継承 「成長させてもらった番号」
楽天で背負うことになったのは、田中将大投手がかつて背負った背番号18だ。前田はこの番号について、「日本でもアメリカでもずっと背負ってきた。自分を成長させてもらった番号で、強い愛着がある」と語った。
球団のエースナンバーを託された意味は小さくない。楽天が前田に寄せる期待、そして前田自身が背負う責任。その双方が、18番という数字に凝縮されている。
入団の決め手は石井一久GMの言葉
楽天を選んだ最大の理由として、前田は石井一久GMの存在を挙げた。石井GMから「一緒に頑張ろう。一緒に優勝しよう」と声をかけられたことが、心を動かす決定打になったという。
なかでも評価されたポイントが大きかった。「先発ピッチャーとして評価してもらえたことが一番うれしかった」。自身の立ち位置と、チームの補強ニーズが明確に一致していたことが、決断を後押しした。
「縁の下の力持ち」として、そして勝てる投手として
チーム内での役割について、前田は「先頭に立って引っ張るというより、困った時に相談できる存在でありたい」と語った。一方で、「成績ではチームを引っ張れるような投球をしたい」とも強調する。
目標は明確だ。「目標は日本一。それしかない」。近年4位が続く楽天に対し、「優勝できる力はある」と言い切った言葉には、経験に裏打ちされた自信が感じられた。
マエケン画伯の素顔も健在
会見では前田らしい一幕もあった。約70人の報道陣に、自身が描いたイーグルスのマスコット入りTシャツと直筆メッセージをサプライズで配布。「何もないと面白くないかなと思って。ちょっと得意なので描かせてもらいました」と笑顔を見せ、会場の空気を和ませた。
重い覚悟と、変わらぬユーモア。その両方を携え、前田健太は再び日本のマウンドに立つ。



