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マイナ保険証の利用率37%の現実 なぜ国民は納得して使わないのか?医療現場と制度の課題を探る

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マイナ保険証の利用率
DALL-Eで作成

マイナ保険証の本格運用が進むなか、利用率は約37%にとどまっている。制度としては定着に向かっているように見える一方で、医療現場ではトラブルや混乱が指摘され、利用者の間でも「本当に必要なのか」「使いこなせるのか」といった戸惑いが消えていない。数字上の普及と、国民が納得して使うこととの間にあるズレはなぜ生じているのか。マイナ保険証を巡る現状と課題を検証する。

制度移行が本格化、対象は約7700万人

従来型の健康保険証は、2025年12月1日で順次有効期限を迎え、翌2日以降はマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」、もしくはマイナカードを持たない人向けの「資格確認書」を用いる仕組みへ移行した。厚生労働省は、薬剤情報や診療情報の共有による重複処方の防止など、医療の質向上を目的としたデジタル化の利点を強調し、制度の本格運用に踏み出している。

報道によると、今回の制度移行で影響を受ける被用者保険や共済などの健康保険証は約7,700万人分にのぼるとされる(共同通信、テレビ朝日によると)。これほど大規模な制度変更である以上、利用者側に不安や戸惑いが生じるのは避けられない。

 

利用率は約37%にとどまる現実

厚生労働省の集計を基にした複数の報道によれば、医療機関や薬局におけるマイナ保険証の利用率は、2025年10月時点で約37.1%にとどまっている。この利用率は、オンライン資格確認の全件数に占めるマイナ保険証利用分の割合を示すもので、「受診者の約4割が常にマイナ保険証を使っている」ことを意味するものではない。

一定の普及が進んでいるように見える一方、制度開始からの経過を踏まえれば、利用が想定ほど広がっていないとの見方もある。政府が掲げる「原則マイナ保険証」という方針と、実際の利用状況との間には、なお隔たりが存在する。

 

医療現場で相次ぐトラブル報告

制度の運用を巡っては、医療現場からトラブルの声も上がっている。全国保険医団体連合会(保団連)が会員医療機関を対象に実施した調査では、回答した医療機関の約69.8%が、2025年8月以降にマイナ保険証の資格確認に関する何らかのトラブルを経験したと報告した。内容は、資格情報の誤登録、認証エラー、システムの反応遅延など多岐にわたる。

もっとも、この調査は保団連の会員医療機関に限定されたものであり、全国すべての医療機関の状況を直接反映するものではない。それでも、一定数の医療現場が制度移行に伴う負担や不安を抱えている実態は否定できない。

トラブル時の相談先が分かりにくい現実

マイナ保険証を巡る混乱を助長している要因の一つが、トラブル発生時の相談窓口が分かりにくい点である。マイナンバーカード、保険資格情報、医療機関のシステムは、それぞれ管理主体が異なり、内容によって問い合わせ先が分かれる。

マイナカード・マイナ保険証のトラブル時の主な相談窓口

トラブルの内容主な相談・対応窓口補足説明
マイナンバーカードの紛失・盗難住民票のある市区町村窓口一時利用停止はマイナンバー総合フリーダイヤルでも可能
暗証番号を忘れた・ロックされた市区町村窓口本人確認のうえ再設定が必要
カードの有効期限切れ・更新市区町村窓口電子証明書の期限切れにも注意が必要
マイナ保険証の資格が表示されない加入している健康保険の保険者協会けんぽ、健保組合、国保、共済など
転職・退職後の資格未反映加入している保険者情報反映まで時間がかかる場合がある
家族(被扶養者)の情報が出ない加入している保険者扶養認定の状況確認が必要
負担割合が誤って表示される加入している保険者医療機関では修正できない
医療機関で読み取りができない医療機関窓口一時的に資格確認書等で対応する場合あり
システム障害・通信エラー医療機関→保険者恒久対応は国や保険者側が担う
制度全般・使い方が分からないマイナンバー総合フリーダイヤル案内・一次相談窓口としての役割

普及率と納得度は必ずしも一致しない

マイナ保険証の評価を考える上で重要なのは、普及を示す「数字」と、利用者の「納得感」が必ずしも一致しない点である。制度の目的や理念は理解できても、「日常的な利便性を実感しにくい」「トラブル時にどこへ連絡すればよいのか分からない」と感じる人が一定数存在する。

医療という生活に密着した分野では、わずかな手続きの煩雑さや不具合が、制度全体への不信感につながりやすい。利用率の上昇だけでは、制度が国民に受け入れられたとは言い切れない。

 

暫定措置と今後の課題

政府は混乱回避のための暫定措置として、期限切れとなった従来の健康保険証であっても、2026年3月末(令和8年3月末)までは、原則として通常の窓口負担で受診できる仕組みを設けた。また、重複処方防止などのメリットについても、引き続き周知を進めている。

しかし、普及の進捗を示す数字を追うだけでは、制度への信頼は高まらない。トラブル時の導線を分かりやすく整理し、現場負担を軽減するとともに、利用者が実際に利便性を実感できる運用改善が求められる。

納得して使われる制度へ向けて

マイナ保険証を巡る課題は、単なるデジタル化の是非にとどまらない。制度を「使える形」で現場に根付かせ、国民一人ひとりが安心して利用できる環境を整えられるかどうかが問われている。

利用率37%という数字の背後にあるのは、制度そのものへの拒否ではなく、納得できないまま利用を迫られている感覚ではないだろうか。普及率と納得度の差をどう埋めるのか。その取り組みの成否が、今後の医療デジタル化の行方を左右する。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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