
テレビ画面に映る元木大介の姿に、SNSがざわめいた。頬は引き締まり、スーツの肩周りにもかつての厚みはない。人々の間に広がったのは「激ヤセ」「大丈夫なのか」という不安だった。
だが、その裏側には、本人が密かに続けてきた“6年越しの戦い”があった。生活を変え、習慣を変え、ときに恐怖と向き合いながらたどり着いた現在地を、元木は静かに語り出した。
「痩せすぎでは?」ネットが騒いだ理由
12月8日、テレビ東京『主治医が見つかる診療所』に姿を見せた元木大介の身体は、現役時代とはまるで別人のようだった。画面に映る細身のシルエットは、SNSで瞬く間に話題となり、「病気なのでは」「清原さんより細い」「ココリコ遠藤かと思った」と写真のたびに憶測だけが膨らんでいった。
照明の反射がわずかに浮かび上がらせる頬骨。引き締まった顎のライン。その変化は、かつて豪快にバットを振り切っていた姿を記憶するファンほど衝撃が大きかった。
2018年、突然つきつけられた「糖尿病」という現実
元木が体を変えなければならない理由と向き合ったのは2018年。同番組で糖尿病(2型)と診断された。
しかし当時は、体に大きな違和感もなく、通院はしていたものの積極的な治療には至らなかった。
変化が訪れたのは2020年。巨人のコーチとしてグラウンドに立っていた頃、盲腸で入院した病院のベッドで、医師が告げたひと言がすべてを変えた。
「このままでは足が壊死する可能性もあります。目が見えなくなる危険もある」
言葉の重みが全身を貫いた。ベッドサイドの白いカーテンがゆっくり揺れる。遠くでナースコールの電子音が響く。そのなかで、元木は静かに腹を決めた。「変わらなければ」と。
20キロ減量の裏側 “無理をしない”生活改善
そこからの変化は、派手ではない。だが確実だった。
元木はまず、飲み物を無糖の炭酸水へ置き換えた。外出時は必ず手に持ち、空腹が来ればひと口飲んで落ち着かせる。「血糖値スパイク」を起こさないための工夫だ。
運動は特別なものではなく、散歩。「気が向いたときにやればいい」。そのゆるさが長続きにつながった。
外食でも、まず枝豆と炭酸水で胃を整え、そのあとにもずくそば。噛む回数を増やすことで満足感を得る。
飲み会では焼酎の炭酸割りに切り替え、糖質を避けながらも付き合いをなくさない。
医師はこう語る。
「糖尿病は“治る”ことはありません。ただ、元木さんのように生活改善が成功すると、病状が安定する“寛解”に入ることができます」
結果、体重は全盛期から20キロ減。血糖値も1日の95%が正常値で推移するまで改善した。
「毎日体重計に乗るな」元木流・継続の哲学
元木は語る。
「最初は辛いよ。胃を小さくするための時期があるから。でも毎日体重計に乗ると、減ってない日がある。それが嫌になる」
だからこそ、体重計に乗るのは「週1回」。
1週間の積み重ねが、わずかでも数字として現れる。それが継続のエネルギーになる。
この心理のコントロールこそ、元木の減量成功を支えた最も大きなポイントだ。
消えない重病説 それでも元木が語った“今”
激ヤセが報じられるたび、SNSには心配の声が寄せられる。巨人OBや現役選手と並べば、鍛え抜かれた体格との差がより際立ち、憶測が加速する。
だが元木は番組でこう言った。
「これを明日放送してほしいくらい。ネットがすごいんで。ちゃんと健康です」
司会の東野幸治が笑いながら応じる。
「元木大介はめちゃくちゃ健康だ、ってアピールしていきますよ」
そこには、大病説を笑い飛ばしながらも、生活改善でつかんだ現在地への確かな自信があった。
同じ病と向き合う人々が語る“共感”と“希望”
Yahoo!ニュースのコメント欄には、糖尿病患者や減量経験者から多くの声が届いている。
長年HbA1cを維持する高齢者、25キロを数年かけて落とした中年男性、ストレスを溜めない食生活で改善したという人。
彼らの共通点は一つ。「無理は続かない」という実感だ。
あるコメントにはこうある。
「違ったステージに到達すると人生が変わる。無理しているのではなく、健康を楽しめるようになる」
元木の姿は、その境地に至ったひとつの具体的な例として、多くの読者に希望を与えている。



