
来年3月に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をめぐり、日本戦チケットの争奪戦が早くも激化している。ローソンチケットが1次先行抽選を1日午前10時に開始すると、開始15分で2万2000人超が待機し、待ち時間は「1時間以上」の表示に達した。
ドジャース・大谷翔平投手(31)が2大会連続出場の意向を示したことで期待値は跳ね上がり、ネット上では“開幕前の開幕”とも言える盛り上がりを見せている。
大谷翔平の参戦表明がもたらした熱量の急上昇
11月25日、大谷翔平が来春のWBCに再び参戦する意向を表明したと複数の報道が伝えた。日本代表にとってメジャーリーガーの内定第1号となり、交渉が難航していた状況を打ち破る朗報となった。
大谷は前回の2023年大会でMVPの活躍を見せ、侍ジャパンを14年ぶりの王座に導いた。
その象徴的存在である彼が再び“侍”のユニホームを着る可能性が高まったことで、国内の期待は大会の全貌が固まる前から頂点へ向かいつつある。
ネット上では「大谷効果半端ない」「まだ3か月先なのに争奪戦」「合流時期も未定なのにこれだけ盛り上がるとは」といった驚きの声が相次ぎ、ファンの熱狂はチケット販売開始前から膨張していた。
抽選販売で“待機2万人超” 前例なき事態に広がる驚き
1日午前10時、ローソンチケットによる1次先行抽選がスタートした。
ところが、開始から15分で約2万2000人が待機し、目安の待ち時間は「1時間以上」。
抽選方式にもかかわらず、アクセス集中で待機列が膨張する事態は異例と言える。複数メディアによると、アクセス開始直後から画面が読み込まれにくい状態が続き、SNSでは「抽選なのに並ぶのか」「申し込む前にまず“抽選に参加するための戦い”」「先着じゃないのにこんなことある?」と戸惑いの声が広がった。
実際、WBCの日本戦は過去5大会の中でも人気が高く、2023年大会では一次ラウンドの全試合が完売。だが今回は、前回を上回るペースでの盛り上がりが見られ、主催側も想定を超える反応を受けているとみられる。
市場はすでに“プレミア相場”へ 高額転売の連鎖が発生
チケットのプレミア化は必至とみられていたが、今回も例外ではなかった。
チケット売買サイトでは、11月30日時点で日本戦の一塁側内野指定が1枚50万円で出品されていると報じられている。定価が6500円の内野指定席C(2階席)でさえ14万円と、約22倍の価格設定となっている。
スポーツ報道各社によると、こうした“数十倍の出品”は複数確認され、すでに市場は事実上、投機的な相場を形成している状況だ。
侍ジャパンの人気が上昇し、大谷翔平の参加が濃厚となれば、需要が供給を大きく上回るのは当然の流れではある。それでも、今回の高騰ぶりには専門家から「すでに通常のスポーツイベントの枠を超えている」との指摘も出ている。
MLB主催者は転売を禁止 過去には無効処分や逮捕者も
WBCではMLBなど主催者の許可を得ない転売行為を禁じている。
今年3月に東京ドームで行われたドジャース対カブスの開幕戦でも、複数の転売が発覚し、主催者判断で4席が無効となった。また、不正転売に関与した者が逮捕される事例も確認されていると、警察発表をもとに各社が伝えている。
今回のWBC日本戦についても、同様の措置が取られる可能性は高い。主催者や球界関係者からは、「転売購入は自己責任では済まない」「無効化のリスクを理解すべきだ」と注意喚起する声が上がる。
人気が高まれば高まるほど、ファンの“現地で応援したい”という純粋な思いをかき乱す転売市場の存在が際立ってしまう。WBCのような国際大会では、本来であれば野球そのものが主役であるべきだが、チケットの争奪と転売の高騰が大会前の主題となってしまい、ファンの落胆は大きい。
前回優勝国の熱狂が示すもの “大会前から本番並み”の異常熱
2023年大会の優勝から間もない来春のWBCは、侍ジャパンが“連覇”という歴史的ミッションに挑む舞台でもある。大谷翔平を筆頭に、日本の野球ファンが代表チームに寄せる熱量は年々高まっている。
抽選のタイミングで待機2万人超が生まれ、市場では数十万円の転売が横行し、SNSでは歓喜と悲鳴が入り混じる。
大会開幕まで3カ月以上を残した段階でこの状況を迎えるのは、スポーツイベントとしても極めて異例だ。
それは同時に、侍ジャパンというブランドが国内で圧倒的な位置を占めている証でもある。大谷翔平の影響力、前回大会の成功、国際大会の希少性。これらが重なり、来春のWBCは“大会前の熱狂”そのものがニュースになるほどの盛り上がりを見せている。
日本が連覇に挑む大舞台は、すでに静かに火蓋が切られている。ファンが最後に望むのは、チケット相場の異常でも、転売との追いかけっこでもなく、あの瞬間の再現だ。
歓声が渦を巻き、世界最高峰の打者がマウンドに立ち、侍ジャパンが再び世界一へ突き進む――その光景を見届けるため、ファンの戦いはすでに始まっている。



