ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

マイケル・バーリが断言! NVIDIAとOpenAIの循環取引 AIバブル崩壊、秒読みか?

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー

シリコンバレーで何が起きているのか?

マイケル・バーリ

世界中を熱狂させているAI(人工知能)ブームの心臓部で、今、「致命的な不透明性」が露呈している。火をつけたのは、住宅バブル崩壊を予見し「マネー・ショート」のモデルとなった伝説の空売り投資家、マイケル・バーリだ。

 

AIバブルに警鐘を鳴らす男の「戦績」

バーリが「伝説」と呼ばれるのには理由がある。彼は単なるインフルエンサーではない。

2000年代、多くの専門家が「不動産価格は下落しない」と信じる中、彼はサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)の崩壊を正確に予測し、これに空売りを仕掛けた。そのトレードで、彼が運用するファンドは最終的に約7億ドル(約1050億円)という巨額の利益を叩き出した。この実話は、映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で克明に描かれている。

さらに近年では、2021年のゲームストップ株騒動でも、彼は空売りを仕掛けていたことで注目を集めた。個人投資家の猛烈な買いによって一時的に窮地に立たされたものの、彼の洞察力と大胆不敵な投資スタイルは、常に時代の「バブル」を指摘し、市場に警鐘を鳴らしてきたのだ。

そのバーリが今、AI業界の不透明な金融構造にメスを入れ、AI関連銘柄への大規模な空売りを仕掛けまくっている。その攻撃の矛先が、ついにブームの象徴OpenAIに向けられた。

 

監査人は誰だ? 75兆円企業の“誰にも言えない秘密”

バーリは11月20日、SNSにこう問いかけた。

「OpenAIがここでの要だ。誰か彼らの監査人を挙げられるか?」

この一言が、業界の急所を突いた。

OpenAIは、対話型AI「ChatGPT」を開発し、非上場ながら5000億ドル(約75兆円)という国家予算級の評価額を持つ。さらに、今後数年で1.4兆ドル(約220兆円)という、想像を絶する額のAIインフラ投資を予定している。

世界の未来を握る巨大企業にもかかわらず、その会計の健全性をチェックする監査法人が公にされていなかったのだ。バーリは、この「不透明性」こそが、AIバブルの深刻な脆弱性を象徴していると見た。

水面下の情報戦の末、英フィナンシャル・タイムズ紙の調査で、その「答え」が判明した。OpenAIの会計を監査しているのは、世界四大会計事務所の一つ、デロイト・トウシュ・トーマツだという。

FT紙の記者は「人類の未来はおそらくデロイトの手中にある」と皮肉る。巨額の資金が動くOpenAIのガバナンス(企業統治)が、上場を前にして市場の大きな懸念材料となっている証拠だ。

 

“見せかけの売上”を生む「循環取引」の闇

バーリがAIバブルを「詐欺の図」と断じる根拠は二つある。その一つが、AI業界で横行する「循環取引」だ。

バーリが言う循環取引とは、企業同士が資金やサービスをグルグル回し合い、見せかけの売上を作り出すカラクリを指す。

ご提供の図を見てほしい。NVIDIAとOpenAI、そしてその周りのAIスタートアップ企業が、「投資(Investment)」「サービス(Services)」という名の矢印で複雑に結ばれている。

 

【循環取引の簡単な仕組み】

  1. チップメーカー(例:NVIDIA)や巨大IT企業(例:マイクロソフト、Oracle)が、OpenAIやその顧客であるAIスタートアップに巨額の資金を出資する。→
  2. 資金を得たOpenAIやスタートアップは、今度はその金を使ってNVIDIAやOracleから高額なチップやクラウドサービスを「購入」する。→
  3. この「購入」が、NVIDIAやOracleの「売上」として計上され、業績が上がる。

つまり、最終的な顧客からではなく、「仲間の出資」によって生み出された売上が、ブームの熱狂を支えているのだ。バーリは断言する。

「真の最終需要は馬鹿げたほど小さい。顧客のほぼ全てが彼らのディーラーによって資金提供されている」

これが、AI株の業績を押し上げている“AIマネーマシン”の偽りの実態というわけだ。

 

「古いGPU」を高く見積もる“共倒れ”会計操作

バーリが指摘するもう一つの問題は、AIインフラの心臓部であるGPU(チップ)の減価償却に関する会計処理の「不正」だ。これは、NVIDIAとOpenAI双方が恩恵を受ける「共倒れ会計」の側面を持つ。

AIチップは進化が凄まじく、わずか数年で性能は劇的に向上し、電力効率は桁違いに良くなる。例えば、古いA100チップは、現行のH100チップより2〜3倍も多くの電力を消費するという。

本来、経済的な価値は急速に陳腐化していくはずだ。しかし、多くのAI企業がこれらのチップを「サーバー」として長期(例:5〜7年)にわたり資産計上し、ゆっくりと減価償却しているとバーリは見ている。

資産の価値を高く、長く見積もれば、毎年の費用計上が抑えられ、利益が水増しされる。バーリはこの行為を、「単に物理的に使えていることと、経済的利益を生んでいることを混同している」と批判した。

古くなった航空機を飛ばし続けるのと同じで、収益性は低いのに資産価値だけ高く見積もっている「粉飾まがい」の処理だというのだ。

 

歴史は繰り返す! 警告は1969年の「大暴落」に繋がる

バーリが今回の警告を発する際、彼はある歴史的な文書を引用した。それは、ウォーレン・バフェットが市場の過熱ぶりに嫌気がさし、自身の投資事業を解散した1969年5月29日の手紙だ。

当時の市場も、現在のAIブームのように投機熱に浮かされていた。バフェットが「引退」を宣言した後、わずか1年で米国株価指数S&P500は30%下落。さらに10年後には、インフレを考慮した投資家の実質損失は57%を超えた。

バーリはこの引用で、「現在のAIバブルは、バフェットが逃げ出した1960年代末の過熱相場と酷似している」と示唆している。そして、その崩壊の引き金が、OpenAIの不透明なガバナンスや偽りの決算から引かれる可能性を示唆しているのだ。

“伝説の空売り王”が仕掛けたAIバブルへの警告は、遠いシリコンバレーの話ではない。日本の投資家も、この熱狂の裏に潜む「闇」から目を背けてはならない。

 

Tags

ライター:

ライターアイコン

寒天 かんたろう

> このライターの記事一覧

ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

関連記事

タグ

To Top